43:レオが悪い。
晩餐会はある程度、滞りなく終わり、屋敷に帰った。
レオは一泊して行けとグズったけれど、ミランダ夫人が全力で却下をしていた。
「じゃ、またね」
「軽いっ!」
レオと一緒に寝ると鼻息が煩いし、変な唸り声も出すから嫌だと言うと、なぜかご機嫌になられた。
「ほぉぉぉぉん? ということは、リタは私と一緒のベッドで眠るつもりだっんだな?」
――――あぁ。
なるほど、確かに。
レオのニヤニヤ具合からするに、全力で煽ることにしたらしいけど、照れがほしいのかな?
「え、当たり前でしょ? レオは違うの?」
「っ――――!?」
「どうしたの? 顔が真っ赤よ?」
とりあえず、煽り返して馬車に乗り込んだ。またね、と手を振って。
「貴女……末恐ろしいわ…………」
なぜかミランダ夫人にドン引きされてしまった。
レオの扱いなんて、あれくらいが丁度いいと思うのよね。
婚約式から結婚式までは半年の期間が設けられている。
それまでに妃教育を履修しなければいけないし、結婚式の準備も。
トゥロさんやミランダ夫人に色々と手伝ってもらいつつ、式に参加される方々の顔と名前と経歴を覚えたりと、やることが本当に多い。
時々は王城でレオと打ち合わせもあったので、寂しさとかは全く感じずに過ごすことができた。
「もう明日だな」
「んー…………ですね」
「ちょ、リタさん? 寝るな! 結婚式前夜だぞ!? もうちょっと語り合ったりとか、あるだろ?」
「うるさいです…………寝ます」
結婚式の二日前から王城に住まいを移動させた。
王妃の私室に荷物を移したりと、色々と大変だった。そして、前日の今日はリハーサルや最終チェックなど、本当にやることがいっぱいだった。
だから、本気で眠い。しかも明日は早朝から準備が始まるのに。
国王と王妃の部屋の間には主寝室がある。でも、王妃の私室にもベッドがある。
夫婦の営みはまだしないし、レオと一緒に寝ると煩い。だから、私室で静かに寝たかったのに、レオが乱入してきた。
「端に詰めろ」
「んっ、無理に入って来ないで…………」
「っぐぅ…………表現がエロい!」
なぜかレオが床に崩れ落ちて固まった。面倒な人だなぁ、うるさいなぁ、もうそこで寝てなよ。私は一人で寝たいの! と夢現で言ったのは、覚えている。
まさか、朝起きたらレオが床で丸まって寝ているとか、思わないよね。
しかも侍女たちに発見されて、『陛下が殺されてるっ!』的な扱いを受けるとか……思わないよね?
床で微動だにせずに爆睡してるレオが悪いよね? ねっ?