42:ぶっちゅぅぅぅぅ。
大広間に入ると、既に関係者たちが集まっていた。
両親と養父母はもちろん、王族の方々、重役の方々。めちゃくちゃ待たせていたっぽくて、皆ものすごく寛いでいた。
入った瞬間、『え、来たの? もう諦めて、楽しくおしゃべりにシフトしてたんですけど?』みたいな空気で見られた。
また後で話しましょうね、とかいいながら面倒そうに席に着かれた。
レオのせいだと言いたい。
レオがグズグズしていたせいなの、って!
「では、婚約式を始めます――――」
宰相閣下の司会のもと、進められていく婚約式。
婚前契約書や婚約証書にサインをし、王族に連なるための禁則事項などの確認を行い、婚約指輪の交換。
これで無事終了の予定だった。
「誓いのキスを、する」
レオの堂々たる宣言。
そして、ぶちゅぅぅぅぅとねちっこいキス。
やるとは思ってたけど、角度を変えての二回目に突入は違うでしょ。
――――それは許すかぁ!
勢い余って、レオの蟀谷をアイアン・クローしてしまった。
「あ……ごめん、つい」
「ブフッ――陛下を制御可能な婚約者殿を迎えられたこと、心より嬉しく思っております」
宰相閣下、いま吹き出したよね? とは流石に聞けなかった。それに、参加してくださった方々のほとんどが笑っていたから、宰相閣下だけを責められない。
――――責めるべきは、レオよね?
婚約式のあとは、晩餐会。
ここでやっと他の王族の方々と顔合わせができた。
国に関わる様々なお話を聞けて、とても有意義な時間を過ごせた。レオはちょっといじけていたけど。
「どうしたんです?」
「リタが楽しそうで嬉しいが、私といるときより楽しそうにしている気がするのがなぁ……」
「んー? そうですね、レオといるときより断然楽しいですけど?」
「ぬぐぁっ……」
なかなかに攻撃力が高かったらしい。レオが心臓を押さえて俯せになっていた。
そして、国王が呻いて倒れたような動きをしたのに、参加者の皆さんも使用人や騎士たちも、誰もがフル無視だった。
レオって、やっぱり雑に扱われてるよね。本人も気にしてなさそうだからこそ成り立っている関係性なんだろうなぁ。
「レオといるときは、楽しいっていうよりは……騒がしい?」
「フォローになってない」
――――たしかに。
「ええっと……あ! 会話がなくても苦じゃないんだよね。落ち着く相手、かな」
「ん、ふふん。まぁ、それなら、まぁ、いいだろう」
レオがむくりと起き上がって、なんだかふんぞり返り気味で、満足そうに頷いていた。
――――チョロい。