4:似てるって言われない?
「で、何でまだいるの」
「……」
レオに朝ご飯を食べさせ、三軒隣のおじさんに要らないズボンをもらって、着替えたら出ていくようにと伝えていた――――。
三軒隣のおじさんは魚屋さんなので朝が早い。そして、私も出勤時間は早い。なので、良く顔を合わせる。
事情を話したら心配された。
「リタちゃん、変なものを拾ったらいかんよ……」
「ですよねぇ。ちょっと後悔してるんですけど、地位のある人っぽいんで、恩を売っておきます」
「なにかあったらすぐ言いなね?」
「うん。ありがとう」
心配しつつも、若い頃の入らなくなったズボンをくれた。
家に戻り、レオにはそれに着替えるように言うと、「ダサい」とか「ボロい」とか文句を言いだしたので、また後頭部をベチコーンと叩いておいた。
「あぁっ! もうこんな時間じゃない!」
気づけば、いますぐ家を出ないと遅刻しそうな程にギリギリの時間だった。走ればまだ間に合う。
ちらりとレオを見ると、まだモグモグと朝ごはんを食べていた。
――――食べるの遅くない!?
いますぐズボンを穿いて出ろ! と言うと、朝早すぎて、嫌だとか、寒いとか、迎えを呼ぶからここで待つとか、色々言ってゴネられてしまった。
仕方ないので合鍵を渡して、家を出た。
合鍵は定食屋のおばさんに渡してくれたらいいからと伝えて、全力疾走した。
で、………………仕事を終えて帰ってきたら、レオが普通にソファに座って本を読んでいた。
「……帰ったか。腹が減った」
「いや、だから、なんでいるの」
「ん? ここが気に入った。ここに住む」
「いやいやいやいや!」
――――ごぎゅるるるる。
「「…………」」
二人同時にお腹が鳴った。
とりあえず、ご飯を作ることにした。諦め半分で。
「ふむ。うまい」
キッシュをモサモサと食べる、ヒゲモサのレオ。
ヒゲにちょいちょいクズが付いたり、スープで濡れたりする度に、ナプキンで口元を拭っている。
「ヒゲ剃れば?」
「ん? 変装するために生やしてたいたが、もういいか」
――――変装だったんかい。
ヒゲ剃りナイフなど持ち合わせていないので、またもや三軒隣のおじさんの家に行って借りてきた。
ジョリジョリと剃られていくモサモサのヒゲ。
あらわになっていく、思ったよりお兄さんな顔。
「……あの、レオさ………………レオンハルトって本名?」
「そうだが?」
「…………あのさ……国王陛下にそっくりとか言われない?」
「言われないな。本人だから」
「……」
――――本人かよ!