39:両親に挨拶を……?
一度目は、言ってた相手か。
二度目は、なんで私の席に?
三度目は、国王陛下じゃね?
的な反応だろうなぁと、対面に座って真っ青になっている父を見つめる。
いやほんとごめんねとしか言いようがない。
「ん、茶がうまい」
いや、茶とかどうでもいいのよ、おっさん。
「リタを妃にしようと思ってな、サインをもらいに来た」
――――ど直球!?
「「へっ!?」」
「いまのナシなし無し!」
慌てて話を遮った。
レオが横でうるさい。ナシなのはどれに対してなんだとかなんとか、とにかくうるさい。
「ちょっと黙って?」
「はい」
「「えぇっ!?」」
父が心配そうな表情で、レオに確認していた。「陛下、娘にどんな弱みを握られているのですか!?」って、失礼じゃない?
弱みは…………まぁ、いっぱい握ってはいるんだろうけどさ。
「あのね、その、お互いに……その、愛し合っててね、結婚しようって約束したの」
「――――ヌグゥ!」
横で変な動きをしているレオは無視してほしいけれど、流石に両親には難しかったらしい。
両手で顔を隠して机に突っ伏して、クネクネクネクネ。気持ち悪い動きしかしてない。
「陛下、本当に何か脅されているのでは?」
「なんでそうなるのよ……」
「いや、国王陛下だぞ? 私たちは平民だぞ?」
元貴族で今は平民である父にとって、その壁の高さは嫌というほどに知っているし、やすやすとは乗り越えられないのもだというのも知っている。
だけど、レオから見たら抜け道など沢山あるものらしい。その道を思いつけるか、使える地位にいるかどうかだけなのだとか。
「あと……大切な娘が妾妃になるのは賛成できん」
「ん? 正妃だ。リタを王妃にする」
「「はぁぁぁ!?」」
うん、その気持ちは分かる。
分かるからこそ、色々と前置きしながら話したかったのに。
レオは結論をズバンと言っちゃうから。
「へ、陛下。平民を王妃にするおつもりですか!? 養子縁組などしてしまえば無理ではありませんが、国民の反応を考えてください。確かに陛下の求心力は高いです。ですがっ――――」
「クヌート、お前は頭が良い。だが、娘の前で娘より世間を優先させるな」
父の名前を呼んだレオが、低い声でピシャリと言った言葉は、人の上に立つ者特有の威圧が込められているように感じた。
「っ! リタ、すまない」
「え? いや私も同意見だったんだけどね?」
「……リタ、カッコつけさせてくれよ」
「え? あ、ごめん?」
「「軽い!」」
なんでか両親までにも怒られた。