38:大切な人を連れて行く。
レオと同棲を始めて一カ月。
割とゆっくりと二人きりの生活を楽しんだ。
仕事もちゃんとしたし、休みの日は二人で屋台巡りもした。
タイムリミット目前である今日は、両親の家に挨拶に向かっている。
「もうすぐ着きます」
両親はもともとの領地の近くにいるのは、どちらの精神にも良くないだろうし、王都の近くでは顔見知りたちに会うかもしれないから、ということで山間の閑散とした村に住んでいる。
そこの村で、村長の手伝いをしている内に……なんやかんやあって村長になっていた。
「村人全員から村長に推されたらしいな。どんな掌握術なんだよ……話すのが怖いっ!」
なぜか馬車内でガタブルと震えるレオ。しかも、国王の格好で。
いや、レオは国王でしょうが! と突っ込んだものの、逆ギレされた。
一人の男として、父親に認められなければならないのだとか。
だから、国王の格好で、王族専用馬車に乗って、私の両親の家に向かっているらしい。
――――え、コレ、保身用のだったの!?
早朝の薄暗闇に紛れて、サウルくんと三人で家から王城に行き、レオの着替えを待って、コソコソと馬車に乗り込んで……とかなり大変だったのに、まさかのハリボテ感満載の、国王の扮装扱い。
本物なのに。
ちなみに、父はのほほんとしているタイプだ。
掌握術とかは、まぁ持っているのかもしれないけれど、そこまで色々と画策して生きるタイプではない。
「ただいまー」
「あらあらあら、もう着いたの? おとうさーん」
家に入ると、母が慌てて二階の父を呼んだ。そして、『大切な人を連れて行く』と手紙で連絡していたのを思い出したかのように振り返って、慌ててレオに挨拶しようとして、固まった。
「リ、リタちゃん?」
「なに?」
「見覚えしかない顔なんだけど、その人って、国王陛下とか言わない?」
「ソレで合ってるよ」
私と母の会話に、レオがヒーヒーと笑い出した。反応が一緒すぎる! 親子だ! とかなんか言いながら爆笑している。
「母上、初対面なのに挨拶もなく笑い転げてすまなかった……ブフッ」
いやまだ笑ってるし。失礼なおっさんだなって印象しかないけど大丈夫?
「えぇぇっと、とりあえず、中にどうぞ?」
リビングに案内されると、レオはいつものごとく颯爽と歩いてテーブルに近寄り、なんの迷いもなく上座に座った。
そこ、父の席だよとか、ここにお座りくださいとか、言う暇もなかった。
そのタイミングで父もリビングに来たんだけど、真顔でレオを三度見していた。
基本のほほんとした人だけど、流石に感情とかすっ飛ぶよね……と、ちょっとだけ同情した。
いや、私もレオの共犯者だけども。





