37:ギリギリアウトらしい。
寝室に行き、自分のベットに入ろうとしたら、後ろからレオに抱きつかれた。
「えっ、何?」
「ん? こっちに来い」
誘われたのは、レオのベッド。
ともに寝ようと言うけれど、昨晩と今朝のことを思い出す。
――――無理じゃね?
あれだけ興奮して眠れずにいたくせに何を言うんだと、ちょっと呆れてしまった。
本当にこの人は、もうっ!
「嫌です!」
「チッ」
キッパリ断ると、レオは舌打ちしつつ素直に諦めてくれた。後頭部を押さえているのは、なんでか知らないけど!
朝、出勤したら、王城の内部はかなりの騒ぎになっていた。予想通りではあるけれど……今回はなんだか申し訳無さを感じる。
「おはようございます」
「リタさん、おはようございます」
サウルくんがじっと見つめてくるけれど、特に何も言わないのは、また彼だけは知っているパターンなのかな?
「おや? リタくん出勤してくれたのかい?」
「……はい」
トゥロさんの反応がどっちなのかわからない。柔らかな笑顔なのが余計に謎い。
一昨日の私から導き出された反応なのか、アレが家にいるのを知っているからの反応なのか……。
「んー、仕事はほぼないから、家でお世話しててもいいよ?」
――――あ、知ってるのね。
「嫌です」
「ブフォッ」
トゥロさんが表情を変えずに吹き出した。
いろんな意味で凄いというか、器用というか。
「あれ? ねーねー、相思相愛なのかと思ってたけど違うの?」
「ギリギリアウトラインです」
「えー!? そうなの? それなのに同棲するとか息巻いてたの? やばいねあの人」
「アホなんですよ」
トゥロさんがサウルくんにコソコソと話掛けていたけれど、普通に丸聞こえ。
二人の話をぼーっと聞いたら、ふとレオを拾った時のことを思い出した。
泥まみれの髭モジャ、もさもさ頭で道に倒れていた。空腹で死にかけているように見えたのは、半分は本当だろうと思う。
家に居座ろうと、あれやこれや画策したり、駄々捏ねてみたり。
今思うと、正体を隠す気なんて、更々なかったんだろうなぁ。
かなり堂々としていたし。
「えっと……拾った責任で餌やりはちゃんとしてます」
「「餌やり」」
なぜか声を揃えて復唱された。