35:膝枕をしてみたら。
スヨスヨと寝息を立てているレオの頬を撫でる。
ちょっと髭が生えていた。
触ったことのない、チクチクというかザラザラっとした感覚。
顎は結構密集して生えるんだなとか、頬のこんなところまで生えるのかぁ……なんて、撫でながらじっと見つめていた。
パチリと開いたレオの目蓋。煌めく夕日のようなオレンジに近い瞳が真ん丸になっていく。
「………………………………は?」
「おはよう」
たっぷりと置いて出てきた一言に、クスリと笑いながら挨拶した。朝じゃないけど、目が覚めたら『おはよう』な気持ちだから。
「っ、ん」
レオの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
右手の甲で口を押さえて、少し視線を逸らされた。
「どうしたの?」
「…………言ったら……殴られる気がする」
いや待て、レオの中で私はどういう扱いなのよ。
そりゃバカスカとレオの頭を叩いていたのは否定しないけど。
「そんなふうに言われると、余計に気になるんだけど」
「んあ……その…………な?」
ボソボソと言われた内容に、国王といえど男の人なんだなぁとか、わりと考えることが煩悩まみれよねとか、色々と思ってしまった。
膝枕というご褒美状態なのに爆睡してて悔しい。
太股がふわふわで気持ちいい。
なんかいい匂いがする。
下から見たら予想より胸がでかかった。
キスしたい。
レオの思考回路って、煩悩まみれすぎると思う。
「姿勢がきつくないです?」
膝枕している相手にって、角度的に無理ではないけど、ちょっと苦しい体勢にならないかなぁ? と、レオの頭を撫でつつ考えた。
レオが体を少し起こせば出来るんだろうけど、そうすると腹筋がきついだろうし。かといって、しっかり起き上がってしまえば、普通のキスだろうし。
「…………それは、起き上がったのなら、していいと聞こえるんだが?」
なぜかレオの目が据わっている。結果どうなるか、火を見るよりも明らかな気はするけれど、「やぶさかではない」と答えてみた。
目をグワッと見開いたレオが飛び起きて、ソファに座った私に覆いかぶさるように迫ってきた。
ゆっくりと重なり合う唇は、特になにも食べてはいなかったのに、とても甘く感じる。
角度を変えて何度も重ね、少し離れては、また絡ませ合う。
大人のキスは、少しだけ息が苦しい。