34:寝不足で。
ご飯を食べながら色々とすり合わせした。
やはりというか、平民たちの距離の近さに勘違いをしているみたいだった。
顔見知りのおじさんなんかでも、ルークさんみたいに肩をパーンと叩いてきたりもする。ちょっ、力加減よ……と思うこともままあるけども。
頭もよく撫でられる。
「ふぬぁぅぅ」
「どういう声ですか」
「気にするな」
よくわからない反応は無視して、話を続けた。
簡単に言うと、『近所の子は何歳になっても近所の子』そんな感じなのだ。
だれそれが結婚したと言えば、大喜びし。だれそれが振られたと言えば、あんにゃろめがこんないい子を! と怒ってくれるような人たちなのだ。
「温かい場所だな」
「はい――――」
お昼を食べたあとは、市場で軽く買い物もしつつ家に戻った。
昨日は一人分の食材しか買っていなかったから。
夕食の準備を軽く終わらせた。あとは時間になったら炒めれば終わりなので、ちょっと休憩。
紅茶と本を持って、新しいソファに座ったら、向かい側でゴロゴロしていたレオが私の横に移動してきた。
隙間ゼロで、ピッタリとくっついている。
「なんです?」
「くっつかれるのは嫌か?」
「いえ……まぁ、嬉しいですけど?」
本は読みづらいけれど、とは流石に言わなかった。
レオは特になにを話すでもなく、私の肩に頭を乗せてモゾモゾしていたけれど、しばらくすると静かになった。
すぅすぅと聞こえる寝息に、そういえば昨日の夜は諸事情でちゃんと寝れていなかったんだと思い出した。
朝一番で目がギラギラしてたし。
少しだけお尻をずらして、うつらうつらとしたままのレオの頭を支え、膝の上へと誘導した。
眠さが限界だったらしく、特になんの反応もなく、素直に頭を乗せてきた。器用に足だけで靴を脱いで、縮こまるようにしてソファで寝始めた。
焦げ茶色のふわふわの髪を右手で梳きながら、左手で本を読む。
のんびりとした時間を過ごすのって、好きだなぁと思う。脚が痺れてきたけども。
レオがもぞりと動いて、上を向いた。
わざと髪をモサモサにして顔を隠していたのは正解だな、と思う。だって、こんなに整った顔立ちは目立つから。
それに、物凄く国王の顔なんだよね。
そんなに多くはない、というか結構に稀だけど、肖像画の複製みたいなものは市場にも飾られているし、年に数回だけは顔見せで、王城のバルコニーから広場に向けて演説みたいなこともやっている。
「バレる……わよね」
レオはしばらくここにいるつもりのようだけど、本当に大丈夫なんだろうか?





