31:わりとちゃんと国王。
両親のこととか何か話したっけ? と聞いたら、レオが紅茶をゆっくりと飲んだ後に「ん? 調べた」と普通に答えた。
調べたってどこまで調べたんだろう?
「貴族籍を失った経緯とか、両親や親族の身辺調査と現在地とかだな」
「…………そう、ですか」
「気になるか?」
クッキーをサクサクと食べつつ、両親に思いを馳せる。
今更、どうこうなる問題でもないし、二人とも普通に平民として伸び伸びと楽しそうに暮らしているし、特に何かを言う必要はない気がする。
「んー。別に大丈夫です」
「復権は望まないのか?」
「ガッツリ調べたんですね」
「そりゃあな」
レオって、やっぱりわりとちゃんと国王なんだなって、また感心。
「叔父のせいで一度は領地が荒れ、領民たちに迷惑をかけてしまったらしいですが、今の領主様はとても堅実な方ですし、父母も今更戻りたいとか、取り戻したいとか、思っていない気がします」
「そうか」
父の弟である叔父が領地のお金を使い込み、土地の権利書などを勝手にお金に換え、どうにもならないところで気付き、国に領地を丸ごと返納して爵位を手放すしか、領民たちを守れなかったと聞いています。
父は、手遅れになるまで気付けなかったことをたいへん悔やんでいて、自分は人の上に立つべきではない、と判断しました。
国に事情を話し、救済措置はないかと何度も相談はしていたそうですが、身内に犯人がいる以上、国は救いの手を差し伸べることはない、とキッパリと言われたと聞いています。
「……ん。すまない」
「レオを責めたいんじゃないんです」
だだ、世の中にはどうにもならないことがあるのだと、痛感したのです。
そしてそれに労力も精神も費やすのはもう無理だろうなと。
「だから、大丈夫なんです」
「リタに妙な諦めグセがあるような気がしていたが、それが原因か」
――――諦めグセ?
自分では気付かなかったけれど、レオは何か思い当たる様子だった。
「でも、ひたすら前を向く事もできるんだよな」
「自分では良く分かりません」
「ん」
レオが柔らかな表情で微笑みながら、クッキーをサクッと食べた。
「なぁ」
「はい?」
「昼は屋台のものを食べてみたい」
「いいですよ」
なぜ急に? と思って聞いたら、クッキーを食べていたらなぜか余計にお腹が減ってきたらしい。
ついさっき食べたのに、変なの! と笑っていると、レオも楽しそうに声を上げて笑い出した。
もう少しだけ、ここで二人だけの時間を過ごしたいなと思っている。