28:少し真面目な話。
「レオって凄いのね」
向かい合って朝ご飯を食べながら、さっきの風景を思い出していた。
スクランブルエッグ用の卵を割ってもらったり、入った大量の卵の殻を取ってもらったり。
色々諦めてレタスを一口大に千切ってもらったりしつつ、一緒に朝ご飯を作った。
慣れない手つきだったけど、何にでも意欲的に取り掛かってくれた。失敗はなかなか盛大だったけど、習得も早かった。
「フッ。国王だからな!」
ドヤ顔で言われて、ドヤれるだけの努力をちゃんとして来たんだろうなと思ったので、素直に頷いた。
ただ、レオは物凄く恥ずかしそうにしていたけれど。
「ツッコミ待ちだったのに、普通に肯定された……」
「あはははは! レオってやっぱり変よ」
ほんと、変。
こんな平民の家で楽しそうにご飯作ったり、それを美味しいと山盛りで食べたり、クタクタのソファを死守したり。
「んふふっ。変な人っ」
クスクスと笑っていると、レオが眩しそうなものを見るような表情になった。
どうしたのかと聞くと、こういったなんでもない会話が尊いのだと言う。
それは私にもなんとなく分かる感覚だった。
他愛もない会話に盛り上がり、笑い合えて、それが楽しいと感じるのって、お互いが通じ合っているからこそなんだと思う。
「リタ、食後に少し真面目な話をしたい」
「え……うん」
「嫌な話ではない、と思いたいというか、と思ってもらいたいという気持ちがやや強めだ」
急に気弱なレオがなんだか可愛かった。
シュンとしたおじさんにときめきを覚えるなんて、人生で起こり得るのね?
食後、お皿を洗ってから、再度ダイニングテーブルに着いた。
向かい合って、二人の前には少し熱めの紅茶。
「話というのはだな」
「うん」
「その……私は本気なんだよ。その手はずも整えた。リタの不安は全て取り除くし、何があっても私はリタの味方であり、絶対に手放さないと約束する」
「うん、何の話?」
「っ! 前置きを山程しておきたいんだよ! 予防線を山程張ってから、本題に入りたいんだよ! ナイーブなおっさんのセルフメンタルケアなんだよ!」
なんでそれでキレられないといけないのよ、と文句を言うと、テーブルに突っ伏して「ガラスのハートが砕けた」とか理由の分からないことをボヤかれた。
すーはーすーはーと深呼吸を繰り返したレオが、ゆっくりと起き上がり、私と視線を合わせた。
「王妃になれ……なってください!」
ゴンとテーブルに頭を打ち付けながら、懇願された。
――――王妃!?