表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/44

17:急いで家に帰ったら――――。

 



 なんとか仕事を終わらせて、超特急で家に戻った。

 本気で走った。

 息も絶え絶えで家に飛び込み、内鍵をしっかり閉めてリビングに入ると――――。


「え……なにやってんの?」


 古いソファの足元でサウルが床に這いつくばっていた。東の国の伝統的謝罪スタイル『土下座』で。

 レオはソレを完全無視して、ソファに寝転がり本を読んでいる。


「む、帰ったか! 腹が減った」

「いや、サウルくん――――」

「あ? そんなものはこの世にいない」

「「っ……」」


 抑えられてはいるものの、男性の怒りを帯びた低い声は、少し怖かった。

 それはサウルくんも一緒らしく、床でビクリと震えた。


「レオ……そういう態度とか雰囲気とか出すんなら、出て行って」


 震える手足を抑え込んで、ゆっくりと伝えた。


 レオの仕事が大変なのは、表面的にしか分からないけれど、人肌寂しかったりするのはわかる。

 でもそれとこれとは違う。

 ここは私の家だ。

 仕事を終えて、身も心も休める場所だ。

 それを他人に脅かされたくない。

 人の命を左右できる人が、その権力を使う瞬間を見せられたくない……二度と。


「だから、出て行って」

「………………サウル、少し時間をくれ。明日の朝に返事する」

「っ、はい! 感謝いたします」


 サウルくんが真っ青な顔のまま私にも臣下の礼をして、家から出て行った。

 レオはまだソファに座ったままだ。

 

「リタ、少し話そう」

「……はい」


 レオから出ているのは完全に『国王陛下』のオーラだった。

 向かい側のソファに座り、居住まいを正す。


「色々と迷惑を掛けてすまなかった」

「出て行くんですか?」

「……ん。今回ばかりは戻らざるを得ないしな」


 困ったような寂しそうな顔で、そっちに座ってもいいかと聞かれて、コクリと頷いてしまった。

 隣に座ったレオからじんわりと伝わってくる体温に、鼓動が妙に早くなっていく。

 ゆっくりとこちらに伸びてくるレオの右手。

 

「婚約者様が来られるそうですよ」

「っ! 知っていたのか」


 私の頬に触れる直前にそう伝えると、ビタリと止まった。


「ええ。今日知りました。なので、出て行ってください」


 レオの右手をそっと押し退けようとしたけれど、反対に押し退けられ、頬に触れられてしまった。


「全てを理解して欲しいとは言わない。が、勘違いはされたくない」

「何の話ですか?」

「アイツとの婚約は解消している」


 ――――へ?

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◇◆◇ 書籍化情報 ◇◆◇


「お前を愛することはない」と言われたので「そうなの?私もよ」と言い返しておきました。 〜氷の貴公子様と紡ぐ溺愛結婚生活〜

☆ コミックシーモア様先行(限定SSあり) ☆

❄ 8/26(月) ❄

書籍表紙


美麗すぎてヨダレものの表紙絵を描いてくださったのは、『シラノ』様っ!
脳内妄想だった氷たちが、こんなにも美しく再現されるとか、運使い果たしたかもしれない……

あ! この作品も、もりもりに加筆しています。(笛路比)
おデートとか諸々ね。ラブなストーリーを主に。
ぜひぜひ、お手元に迎えていただけると幸いです。

※コミックシーモア様以外の電子書籍書店様は9/20 (金)になっております。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ