12:平民と貴族の違い。
屋台近くに噴水があるので、そこに座ろうとレオに言うと、レオがハンカチを敷いてくれた。
「わぁ、すごい。貴族って感じ!」
「……ん? もしや、平民はしないのか?」
「しませんねぇ。育ちのいい商家の息子とかなら、まぁ、ワンチャン?」
「ぬ。思ったよりも貴族と平民の所作が違うな」
そう言われればそうかも、なんてあんまり興味はないものの相槌しながら串焼きをもぐもぐ。
豚肉がしっかりと焼かれているので、脂身が甘くてサクッとしている。
「む! うまい!」
「美味しいですねぇ。ポークジンジャーが食べたくなってきました」
豚肉買ってないけど。
食べ終わったので串をゴミ箱にポイッと投げ入れて、ハンカチをたたんで、お礼の言葉と一緒にレオに返した。
家に帰ろうと歩き出したら、レオが「ポークジンジャーとはなんだ?」と言い出した。どうやら知らないらしい。
貴族っていうか王族って、あんまり平民の間で流行っている料理は口にしないのかな?
「豚肉をすりおろしたジンジャーと調味料に漬け込んで焼いたものですよ。ピラフとの相性が良いんですよねぇ」
「食べる!」
「豚肉、買ってません。ジンジャーもそんなにありません」
残念だが、もうすぐ家だ。今からUターンはしないし、一度家に荷物を置いてまた再度買い出しになんて、絶対に嫌だ。
今日は休みなの。ダラダラしていい日なのっ!
「んむ……サウル案件だな」
「もう、サウルくんと住めば――――」
「嫌だ!」
「はぁもぉ。じゃあ次の買い出しまで我慢してくださいよ」
ピシャリと言うと、レオがしょぼんとしつつも頷いた。とりあえず丸め込めたらしい。
そんなことよりも買ったものの片付けをしますよ、と言うと、パァァァッと明るい笑顔に。
どうしたのかと思ったら、従僕や侍女たちがやっている仕事だろう!? とワクワクされてしまった。
国王って、執務や公務以外の時間はなにやってんだろ? 余暇の時間とか、部屋の模様替えしようかなぁとか思うことってないのかな? と疑問に思ってしまった。
「玉ねぎは?」
「そっちの野菜用のカゴに」
「ん!」
置く場所などを指示すると、レオが楽しそうに従っているけど、大丈夫なんだろうか?
というか、当たり前のように二人暮らしする流れになっているけど、疑問を抱いたほうがいいんじゃ?
いや、抱いたところで居座られそうだから諦めたんだけども。
「服はこことここの段を使ってください」
「む! 私の棚だな! ここに入っていたリタの下着はどうしたグォアッ……」
なぜ、そこに下着が入っていたと知っているんだレオよ。人ん家のキャビネットを勝手に開けるな。
何か悩みでもあるのか、なぜか頭を抱えているレオを軽やかに説教した。