29話 散らばる閃光
闘技場内部の人は俺とヴェルト以外居なくなった。
ヴェルトは俺より体格が良いな。170センチはありそうだ。魔力量は……測れないか。魔力量は俺と同等かそれ以上だな。
ヴェルトが腰に差さった剣を抜いた。
光魔法で相手の思考力を奪い、剣で致命傷を狙うのかな。自動防御魔法のおかげで俺の思考力を超えることは出来ない。
「ジャックといったか、貴様、俺の魔法について知ってるか?」
「知ってるさ。少しだけ他の奴らより速いのだろう」
「フッ、少しだけか。一度見ても同じことが言えるかな」
「それでは二人とも位置についてください」
ジャックとヴェルトの距離は二十メートル程ある。一年生はこの試合に興味を示しているが、他の学年は小声で談笑していた。
審判が大きく息を吸った。
「はじめ」
ストーンキャノン
同時にヴェルトが一瞬光に包まれた。
ピキッ
後、なんでヴェルトが
ピキッ ドォーーン
ヴェルトが最初いた位置に戻っていた。
「少しだけ速い、と言うだけはあるようだな」
何が起きた?急にヴェルトが現れて、いやまずは防御魔法の強度を少し上げるか。よし、これで取りあえずは大丈夫なはずだ。俺は相手が何をしているのかを分析し、それが悟られないように強者感を出して立ってれば良い。
ヴェルトが光に包まれた。
周りの至る所が発光し、光の玉が現れた。
状態を整理しよう。俺が、キンキンキン、魔法を放った直後に、キンドンキン、後ろから防御魔法にヒビが入った、ドドンキンキンドンキン、音がし、その直後にヴェルト、ドンドキンドン、が目の前に現れ、俺に剣を、キンドドドドドドドドンキーン、振った。はっ、光速移、光魔法の取説にそんな事、いや目の前の事実を見ろ。ヴェルトの魔法は光速移動だ。光の速度での物理攻撃は出来なさそうだ。
「今の攻撃を防ぎ切るか。俺はお前を侮っていたようだ。次は本気で行く」
「こちらも本気で行くぞ」
ヴェルトが光に包まれた。
問題は光速で動くヴェルトにどうやって攻撃を当てるかだ。色々な攻撃を試そう。
ドドドドドドドドドキンキン
「硬いな」
攻撃を一点に集めてきたか。相手も攻撃を変えてきたな。こいつ背中側を攻撃した後に毎回正面に攻撃してくるな。その隙を突くか。
ヴェルト見えてる見えてる見えない見えない見えない
キン
サンドアーム
「潰れろ」
ヴェルトが少し離れた位置に現れた。
「惜しかったな。ただ、その攻撃は少し速い俺にとって遅すぎる」
ヴェルトが光に包まれた。
次は広範囲攻撃だな。ヴェルトは上空十五メートルくらいまでで移動している。その範囲を一瞬で攻撃する。
キンドン…キン
攻撃が数テンポ遅かった。どうしてだ?はっ
俺は闘技場の中心まで走った。その後、探知魔法の範囲を広げ、使う魔力を多くした。
ズドーーン
土の塊が落ちてきた。
「チッ」
「お前の本気はこの程度か」
自然な形で中心まで来れた。俺が使うのは雷魔法だ。本来は雷を流す道筋に魔力を流し、空気の電気抵抗を下げるのだが、今回は上空二十メートルまでの電気抵抗を下げる。ここでほとんど相手に気づかれるが、今回は少し濃度の濃い探知魔法で誤魔化せるはずだ。直前の攻撃で俺を倒すつもりだっただろ。だがそれは塩だった。その塩、使わせてもらう。
ドドンキン
今だ。出力最大 無差別放電
ザクッ ボト
左肘が落ちた。
探知魔法の魔力と空気の電気抵抗を下げる魔力は似ており、熟練の魔術師でも見分けるのは難しい。




