26話 実技試験 前
この学校では学年末にテストがある。
テストは筆記と実技の二種類だ。筆記は前世と同じペーパーテストである。実技は個人の固有魔法によって違うらしいが、大枠は変わらず一対一のタイマンである。相手の使う魔法、得意な状況、苦手な状況などを伝えられ、戦略を考えて挑む。点数は相手のダメージ量や見ていた先生の評価で決まる。
大体こんな感じだ。まあ、魔法学校であるここでの筆記テストはおまけみたいなもので、ほとんどは実技テストの評価で決まる。
俺の対戦相手の情報は、魔法火、水、土、風、雷、得意な状況近接、苦手な状況開示なし、武器開示なしである。
この1年で分かったが、俺は強い。最大火力、同時魔法発動数、魔力量、がこの世界で上位レベルだ。身力が無いため身体強度、反射神経では数段劣るが、自動防御魔法がそれを補っている。つまり俺の実力は上位レベルであり、学生はおろか前線を退いた教師も俺より弱い。相手の情報を見るに魔剣士だ。校長ではない。対策を考える必要がないため俺の生活は変わらない。
テスト1週間前になった。
俺はいつも通り図書館に行こうと立ち上がった。
「ジャックくん、今時間空いてますか?」
ミリスが申し訳なさそうに話しかけた。
「空いてるよ」
「テストの事なんですけど、、、助けてください」
「別に喜んで手伝うけど、ミリスの実技テストはあって無いようなものって前に言ってなかった?」
「いや、私ではなくてですね~、、、友達のティアを助けてほしいんです」
「全然手伝うよ。ところでなんでそんなに申し訳なさそうなの」
「ジャックくんは人見知りなので」
「俺は人見知りじゃないよ。ちなみになぜそう思ったの」
「ジャックくんが私以外と話しているところをあまり見ないので私以外に友達が居ないのかなって思ったからです」
「確かに友達はいない。ただ人見知りではないよ」
「良かったです。ではティアを呼んできますね」
俺もミリスが俺とティア以外と話しているところを見たことがない。自分が人見知りだと自覚しているのだろうか。
「どうもティアです。私のような名前も知らない影の薄い存在に手を差し伸べてくれてありがとうございます」
く、暗すぎる。でも俺は知っている、彼女の内なる本能を。
「そんなに自分を卑下しないで。俺も元からティアさんは知ってたから」
俺はクラスメイトという理由で名前を覚えることは無い。じゃあなぜ俺はティアを覚えているのか。理由は簡単だ。彼女は髪で右目を隠しているのだ。要するに彼女も俺と同じ中二病なのだ。
「私のような者を覚えていてくださりありがたいです」
「そんなことより本題に入ろう。相手の情報を教えてくれる」
「はい。魔法土、得意な状況近接、苦手な状況中、遠距離、武器剣、備考魔法の事はあまり知らないと書いてありました」
「次にティアさんの使える魔法を詳細に教えてくれる」
「時間魔法でスロウ弾とクイック弾とそれらを同時に当てると当たった物同士の動きのズレで物が割けるクロウ弾だけです」
「なるほどね。俺はティアが試験に合格できるような作戦を考えれば良いんだよね」
「そこまでしていただければ嬉しいです」
「分かったよ」
推測になるが、この試験は実際の戦闘力より作戦を見る試験だ。理由としては実際の戦闘力を測りたければ、そもそも相手の情報なんて与えない。与えても相手の魔法程度だろう。これだけでは推測としては弱い。決定的なのはティアの備考である。これは実際の戦闘力を測るのに不要である。この備考は遠距離攻撃はできません。対策してくださいと言っているようなものである。
作戦を見る試験と考えると今からガチガチに修行して勝ちにいくより、作戦をしっかり頭に入れ、冷静に遂行する方が合格しやすいだろう。
「今から作戦を教えるね」
ジャックが言った教師に校長は入りません。




