24話 異世界と言う世界
見覚えのある集団がボス部屋から出てきた。
あれは間違いなくクラスメイトと先生たちだ。あっちでは大事になってたのかな。まあ、先生が完全保護した状態でのダンジョン見学で一人が完全に逸れたら心配もするか。
クラスメイト達も気づいたようでミリスとダリス先生がこちらに向かって走ってきた。
走りながらミリスが叫んだ。
「ジャックくーん、本当に、本当に心ぱ」
「おーーい心配かけやがって」
ダリス先生の声でミリスの声がかき消された。
「ジャック、だめじゃないか。途中で抜け出すなんて」
後ろから突然声がした。
「な、何ですかコバルトさん」
いつから後ろにいたんだ。さっきまであそこにいたのに。
「ダンジョンでふざけるのはやめなよ。ダンジョンは君が今日体験したことより遥かに危険だから。」
「なんでわかったんで」
自分の口を抑えた。
「あんなにやってやったって顔してたら誰でもわかるよ。まあ、今回のことは秘密にしといてあげるからもうこんな事やめなよ」
「気を付けます」
身力を鍛えればここまで速くなれるのか。これがA級冒険者か。俺も早く身力を身につけなければな。
「心配したからな」
少し怒りながら俺の肩を掴む。
「先生、ジャックくん少し痛そうです。先生。聞いてます?だいぶ痛そうですよ」
「先生痛いです」
ミリスと目が合う。やばいだいぶ痛い。こいつ俺のこと揺さぶり始めやがった。
「先生はーなーしーて」
ミリスが先生の事を引っ張る。
こいつ早く気付けよ。わざとやってるんじゃないだろうな。
「いやぁー本当に申し訳ない」
「気にしてないですよ」
顔を作り笑顔満載にした。
自動防御魔法を切っていた俺が悪いと言えば悪いですしね。別に怒ってないですよ。
「おーそうかそうか気にしてないか」
先生は笑いながら言った。
「ところでボスは誰が倒したんだ?」
どうするか。アローが倒した事にするか。話を濁すか。、、、これは俺の理想とは全然違うが異世界でこのシュチュエーションが来たならやらなければならないな。隠すことでもないか。
「俺、なんかやっちゃいましたか」
「本当か。一人で倒したのか」
「まあ、一人で倒しましたよ」
「ブルージャイアントスライムは8人以上での討伐難易度はC+だが単独での討伐難易度はA+以上だぞ。凄いなんてもんじゃないぞ。やはりジャックは神童なんだな」
「そうですね?」
なんかちょっと違うんだよなー。このセリフは封印だな。
俺は先生達から叱られた。その後、ダンジョンから帰る時間になった。先生は散らばった生徒たちを集め始めた。
俺は周りを見渡した。
地面は草が生い茂り、所々に木が生えている。壁はダンジョンの他の場所と違い土でできている。天井は一面太陽のように光っている。
ここって地下なんだよな。こういう非現実的なとこが異世界って感じがするな。やっぱりここは異世界なんだ。
目から一筋の涙が出た。
俺、異世界に来れたんだ。今まで魔法を普通に使ってた。新しい親もできた。馬車にも乗ったんだ。なぜ今実感したんだと聞かれても答えることは出来ない。ただ今実感したと言うことはハッキリとわかる。
今まで異世界の魔法しか見ていなかったんだ。ちゃんと見ようこの異世界を、いやこの世界を。
そう思ったことで変わることはなにもない。なにもないけど、大事な事だと俺はこのとき思った。
「ジャックくんも泣くんですね。やっぱり一人でのダンジョンは怖かったんですか」
「泣いてないし、怖くなかったよ」
「そう言うことにしときます」
とミリスが笑いながら言った。




