23話 火力を追い求めるのは人の性
俺は身長の2倍程度の扉を開けた。
サッカーコート2面程の広い空間にブルージャイアントスライムがいた。遠くに居るため正確な大きさは分からないが前世の生物ではあり得ない大きさをしている事は分かる。
「合図を出すまで見ていてくれ。」
「分かってるよ」
俺はスライムに向かって走った。
まずは情報の確認だ。
やつの物理耐性はどのくらいかな。
「ストーンキャノン」
核には全然届いてないな。7年間の努力が、、、。
あいつ耐性を貫通しやがった、というムーブを少し期待してたのに。今はこんな事を考えるな。
スライムが動き出した。従来のスライムと同じように跳んでこちら側に向かってくる。一回着地する度にドーンと音がする。近くになればなるほどスライムの大きさがはっきりと分かり、体は20メートルくらいあり、核は1メートルある。
怖気付くな。何事も冷静に対処するのが中二病だ。最善手をし続ければいい。
弱点の火魔法がどのくらい効くか確かめる。
「ドラゴンブレス」
3メートルの穴がスライムに出来たが、すぐに塞がった。アローが言う通り核が動き回っている。
最後の確認はファイヤーアローがどこまで刺さるかだ。
意外とスライムが速い。そろそろスライムの射程圏内に入る、離れるか。
「浮遊石」
浮遊石に乗り、スライムから一定の距離を保つように動いた。
スライムが液体を飛ばしてきた。アローが言うには酸らしい。が10メートル離れていれば届かない。
「ファイヤーアロー」
スライムに6メートルほどの細い穴ができた。
いける、俺の作戦で。
俺はアローのいる所へ行った。
「出番だ。アロー」
「今から俺はスライムの裏をとる。俺が合図を出すまでスライムを引きつけてくれ」
「10秒だからな」
俺がスライムの背後に着くと、アローが火魔法でスライムを攻撃し始めた。
浮遊石から降り、自動防御魔法と探知魔法を切った。
火魔法で小さい球を作り始めた。
俺が一番得意な魔法は土魔法だ。速度、操作性、応用力、火力全てが高水準だ。だがこれは魔法の溜めを考えなかった場合である。速度においては水が、火力においては火が一番高い。
今回の火魔法は生成、制御、圧縮、移動に魔力を使う。生成した火を圧縮する。これを続けると圧縮に使う魔力量が最大出力に近づいてくる。移動に使う魔力出力を忘れずに取っておく。
「アロー、戻って来い」
「8秒か、早かったな」
「見ていろ、俺の魔法の神髄を」
白く輝く球をスライムの前に近づけた。
火魔法の圧縮、つまり爆発。圧縮を一部だけ解くことで爆発に方向性を持たせることができる。
技名は、火、爆発、玉、キャノン砲、一点、最大、限界、今回は自動魔法に登録しないから使いにくくてもいいのか。そうだこれにしよう。
「特異点・赤・発」
スライムの体を爆発が核ごと貫いた。
「11年間でどれほどの努力を積めばここまで」
スライムが崩れ、流れ始めた。
「ジャック、あれに流されるとめんどくさいぞ。」
「久しぶりにいいの決められたな。技は80点、名は70点くらいかな。うーん、、、」
とジャックが小声で呟いていた。
「ジャック逃げるぞ」
アローはジャックの手を握った。
「転移」
「助かったよ」
「気を付けろよ。戦いが終わった後が一番危ないからな」
「気を付けるよ」
奥の壁が一部消えた。
「あの奥がダンジョンの休憩地点、オアシスだ」
「え、このダンジョンって10階層で終わりじゃないの」
「何言ってるんだ。このダンジョンはこのし、世界一長いダンジョンだぞ。今では96階層まで見つかっているぞ」
「へーソウナンダ」
「俺はあの空間魔法陣で帰るわ。また会おうな」
「また会おう」
「あと、命を助けてくれてありがとな」
「気にすんな、そんなこと。俺達友達だろ」
「はは、そうだな」
ボス部屋に見覚えのある集団が見えた。




