22話 解放前夜
「ここはダンジョンのどこですか」
「階層を数えずにここまで来たんですか。だめですよ。ダンジョンの階層によって行動を決める。これは冒険者なら普通のことですよ。覚えてくださいね」
「わかりました。気を付けます。でどこですか」
「9階層の中頃です。話は変わりますが、ジャックさんはなぜここにいますか。今あなたのクラスはダンジョン探索中ですよね」
「なんで知ってるんですか」
「そのことは情報屋でなくてもこのダンジョンを探索している人ならみんな知っています。で何でここにいますか」
「は、逸れまして」
「嘘ですね。抜け出してきたんじゃないでしょうか」
言い訳をしなければ。この状況を抜け出せる言い訳は、、、
「言わなくていいです。私もあなたと同じ年齢の時はとある病にかかっていました。突然興奮してきて自分のやりたいこと以外見えなくなり、それを実行してしまう。あなたのやりたいことは何となくですが想像できます。ですが私はそれをお勧めすることはできません。死にますよ」
このままいけばごまかせる。
「あなたに止められても、私は止まりません。中二病ですから」
「そうですか。仕方ないですね。私も手伝います。ダンジョンボス、ブルージャイアントスライムの討伐を」
「ありがとうございます」
俺は何を隠したかったんだ。まあいいや。
この後スケルトンが現れたが、難なく倒すことができた。
「ジャックさんはやはり強いですね」
「アローさん、敬語はやめましょう。あなたの方が年上ですから」
「ではやめましょう。ジャックさ、ジャックも敬語やめろよ。私の命の恩人ですから」
「わかりまし、わかったよ。アロー」
最初は鬱陶しかったが、意外とアローとは話が合った。これが友達なのかな。10年近くいなかったからわからないが多分そうだろう。友達に年齢は関係ない。たとえ自分が11歳で相手が28歳でも。
「ブルージャイアントスライムの特徴を知ってるか」
「知らないよ」
「そうですか。説明していきますね。まず他のスライム系統と同様体液を全て蒸発させるか、核を壊す方法で討伐ができます。ブルースライム系統なので体液の粘度が高く物理攻撃はほぼ効きません。あなたの得意技、ストーンキャノンは最後以外使わない方がいいでしょう」
「最大出力でもか」
「はい。確かにあの火力はすでにA級冒険者以上です。ですがそれでも足りません」
「じゃあどう討伐する」
「一般的には火魔法でスライムを攻撃し、体液を冷まそうと外側に動いた核を壊し討伐します。ですがこれはパーティーで挑んだ時のやり方です。私がお勧めするのは火魔法で相手の体液を全て蒸発させる持久戦です。普通は無理ですが、ジャックには測定できない程の魔力量がある。これが一番現実的なやり方です」
「確かに現実的だ。だが俺にも策がある。アロー5秒囮出来るか」
「それくらいなら余裕だな。10秒くらいなら出来る。なぜなら俺の固有魔法は転移魔法だからな」
「じゃあ最初は俺に任せてくれ」
「わかった」
持久戦、中二病としてかっこよくない。勝負は短期決戦。
「ここの扉を開けたらボスが要るんだな」
「そうだ。心の準備はいいか」
、、、
「申し訳ないけれど、それ俺に言わせて」
アローは察したように笑顔を向けた。
「良いよ」
「心の準備はいいか」
「おう」
「行くぞ」




