15話 突然の呼び出し
魔剣士襲撃事件の次の日は事件の影響で学校が休みになった。
昨日の戦いで足りなかった力は弾速、火力、そして身力だ。弾速と火力は魔力出力量が大きく関係してくるため、直ちに改善することはできない。今まで通りに特訓を続けることで次第に上がってくだろう。
問題は身力だ。あれほど速く動く相手に対応するには動体視力と頭の回転速度が必要不可欠だ。
魔剣士の「身力なしでよく反応できたな」と言う発言から身力で頭の回転速度は上がるだろうし、あれほど速く動くためには普通の人以上の動体視力が必要だろう。まあ、身力で動体視力が上がることは定かではないが、俺が今まで見てきた世界では、体の成長と共に動体視力が上がっていた。これからの目標は身力を手に入れることだろう。
トンッ、トン
「ジャックくんいますか」
「校長先生ですか。いますよ」
「探しましたよ。ライムくんから ジャックは外にいるの見たことないっすよ と聞くまで外にいるものとして考えてましたから。、、、なんで部屋にいるんですか」
「なんでってなんでですか」
やめろぉぉーそれ以上何も聞かないでくれぇぇ。前世みたいに 1人でいて楽しいの とか 本物の陰キャっているんだ とかはもう聞きたくないんだ。俺は別に友達を作ろうと思えば作れるんだ。ただ孤高なだけなんだぁぁ。
「部屋には何もやることないので、外で友達と遊ぶとか、図書館に、、、聞かないでおきます」
「要件はなんですか」
「昨日の事件について聞きたいことがあるのでちょっとついてきてもらえますか」
「わかりました」
ここが校長室か。ちょっと緊張するな。
「ここに座ってください」
「はい」
「話なんですが、あの魔剣士について身に覚えがあったりしますか」
「ないです」
「じゃああなたが狙われるような理由はありますか」
「ない、、、です」
言えない。8歳の頃に誘拐犯を捕らえて奴隷にしたなんて言えない。
「そうですか」
「なんでそんなこと聞くんですか」
「まだ魔剣士が襲撃してきた理由がわかってないんです。この学校は世界で一番優れた魔法学校とされています。ですから生徒を人質にとって学校の情報を聞き出そうとしたり、陽動と情報捜索の2チームに分かれて襲撃されることはよくあります。ですが今回は情報が取られてません。ただ今回は魔剣士がジャックくんを狙っているように見えたため、個人的な恨みがある可能性を確認したわけです」
「そうだったんですか」
「話は変わりますが、ジャックくんは戦うのは今回が初めでですが」
「初めてです」
「初めてであそこまで戦えるのはすごいことですよ。魔法のセンスだけでなく、戦闘のセンスもあったんですね。魔剣士が剣を振るタイミングに合わせて爆発を起こしたときは感心しましたね。身力なしであそこまで反射神経が良いと、将来に期待が持てますね」
「ありがとうございます。そういえば校長、距離限界か長いですね」
「距離限界?」
距離限界って俺が勝手に名付けた名前だった。
「魔法でエネルギーや物質を生成する射程の限界のことです」
「あぁ、限界射程のことですか。私は選ばれし者です。私の能力は無限射程で、限界射程を超えて魔法を生成することができるのです」
「選ばれし者って何ですか」
「選ばれし者とは固有魔法がもらえない代わりに特殊能力をもらった人たちのことです」
「そうなんですか。すごい人だったんですね」
「別に選ばれし者がすごいわけではないですが、私は血の果てローゼンと言われているくらいには有名だったんですよ」
「やっぱりすごい人なんですね」
この後は少し雑談したのち解放された。
やっぱり偉い人に気を使いながら話すのは疲れるわ。途中までためになったが、最後の方は自慢話じゃないか。
そう思いながら帰路についた。




