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快速四号  作者: ヤーツツ・トモミ
快速四号
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第8話ー④ 夜のTV、白い襟元

「じゃあ私、子供寝かしてくるから。あっ、お風呂使ってもいいよ」


 裕恵さんは、空になったビール瓶とコップを片付けて、子供と寝室に戻った。


 昨日も風呂に入っていなかったので、シャワーだけ浴びさせてもらうことにした。

 高橋が風呂から出て、昨日寝た寝室に戻ると、裕恵さんがテレビを見ていた。


「あっ、雄馬くん、もう寝たんですか?」


「うん。昼間、高橋くんに色々遊んでもらって、すっかり疲れたみたい」


 隣に座ると、女性の甘い匂いがする。パジャマの襟元から、白い胸元がちらちらと見えてしまう。


「このテレビも、思い切っていいの買ったんだけどね。ここに引っ越してから、電波が悪いのか映り悪いのよね〜」


 裕恵さんは、ひとしきりチャンネルを変えながら高橋の方を見て、にかっと笑った。確かに電波が悪いのか、画面の映りはあまり良くない。

 しかしそんな事よりも、隣に座っている女性にどうしても意識がいってしまう。


 なまじ酔っているせいか、抱きついて押し倒してしまいたいという強い衝動に駆られ、それを理性で押さえ込むのに苦労する。

 ノイローゼになると性欲が減退するらしいが、だとしたら俺はまだ健全な方かもしれない――と、変なところで納得してしまった。


「あっ、エンタの神様やってるじゃん」


 隣で裕恵さんは、見たこともない新人芸人のコントに大笑いしている。


 こんな時、女性は何を考えているのだろう?

 同い年の若い男が隣に座っていても、自分は既婚者で、ましてや隣の部屋に旦那が寝ている状況では、そういう不埒な事は一切頭によぎらないものなのだろうか? もしくは……。


 恋愛経験の乏しい高橋には、まったく想像がつかなかった。

 ただ、どんな状況でも下心が生まれてしまう男というのは、損な役回りだなと思った。


「このトリオ、最高に面白いよね」


 裕恵さんが高橋の肩を叩き、同意を求めてくる。さっきから画面を見ていても、全然頭に入ってこなかったが、一応「うん、そうだね」と相づちを打つ。


 高橋は、いつの間にか体育座りになっていた。そうでもしないと、下半身が膨張しているのに気づかれそうだったからだ。


 一時間ほどして、


「あっ、もうこんな時間。一樹を起こさなきゃ」


 裕恵さんは立ち上がり、隣の部屋に消えていった。しばらくすると、「あー、眠みー」という木倉の声が聞こえた。

 木倉が玄関を開ける音がしたので、高橋は見送りに部屋を出た。


「木倉さん。明日出ます。昨日、今日とお世話になりました」


「おお、そう。まあ、いつでも遊びに来てくれよ。じゃ、行ってくるわ」


 昨日と同じようにピースサインを頭に作り、木倉は出て行った。


「気をつけて」


 裕恵さんが玄関越しに木倉を見送ると、扉を閉めた。


「じゃあ、私も明日パートがあるから、もう寝るね。朝七時半に出かけるけど大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


 約束は午後二時だったが、まさか昼まで一人で家に居させてくれとは言えない。


「うん、じゃあ、おやすみー」


 裕恵さんは部屋に戻っていった。


 高橋もテレビの部屋に戻る。まだ時間は九時。テレビをつけていてもよかったが、隣の部屋の迷惑になるのではと考え、消した。

 部屋の明かりも消し、布団を敷いてもぐりこんだ。


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