表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
快速四号  作者: ヤーツツ・トモミ
発車前
3/43

第1話ー③ 夜の品出し

バイトなんかこの国には腐る程ある。家の近くにあり深夜で時給が高かったので、大型スーパーの品出しのバイトをする事にした。

地方のスーパーには珍しく24時間営業している。コンビニに対抗するというやつであろうか。

「そう前にコンビニでバイトをした事があるんだ。じゃあ大体分かると思うけど、店に来る商品をダンボールから出して並べてくんだけど…。まっ後はやりながら覚えていってくれたらいいから。」

 面接した店長は仕事が詰まっているらしく、

履歴書を見るのもそこそこに、今から入れる?と言って店のユニホームを押し付けた。

 時給千円は結構おいしいと思ったが、目の前に積まれたダンボールの壁を見てその思いも吹き飛んだ。

 その深夜バイトには高橋も含めて5人いた。

皆入ってあまり経ってないらしく馴れ合った空気はなかった。このスーパー自体が開店して間もないためだ。

 前にコンビニで働いた事があるから作業自体に戸惑いはなかったが、人がなまじ居るのにコンビニに比べ何倍も広い店内で会話が殆どないのは不気味だ。ダンボールをカッターで切り裂く音だけがこだましている。

 こういう時、一番初めに話しかける役は後々自分にはしんどい役だと分かっていた。分かってはいたがあまりの静けさに耐え切れず、質問するふりをして一番近くに居たひょろっとした兄ちゃんに近寄った。よく考えたら皆入ったばかりなのだから質問なんてするのはおかしいのだが、頭が回ってなかった。

「あのー、積んだダンボールってどこにおいとけばいいんですかね?」

 その兄ちゃんは一瞬戸惑った表情をし、俺も入ったばかりだけど…と言いながら店のバックルームに入っていった。

「空いたダンボールはここに放り投げればいいよ…。俺、木倉。あんたは?」

「高橋です。」

「学生?」木倉は煙草に火をつける。

「一応。」

「フー…。そう。俺はプーだけど、他の連中も学生みたいだな。俺もここは入ったばっかだけど大概の事は分かるから何でも聞いてくれよ。」

 仕事時間は夜22時から朝5時まで。これといった休憩はなく、疲れたらバックルームに入って5分なり10分休んだ。しかし自分の分担の仕事量は決まっているから休んでばかりいたら終わらない。終わらなくても時間が来れば帰れるが、次の人に迷惑が掛かる。迷惑が掛かれば店長に注意され、それが続くとクビになる…といった分りきった事が起こる。次のバイトを探すのが面倒だからそうならないために仕事をする。そういう事は考えないようにしないと仕事中は作業能率が落ちるだけだ。逆に作業に集中すればそういった無駄な事を考えずに済んだ。

 休憩していると他のメンバーと話す機会があった。皆どちらかといえば地味な奴が多かった。こういった接客もなく黙々と単純作業をする所には、人と接するのが苦手な人間が来るからだろうと思った。バイトにやりがいや出会いを求める奴は、派手なアパレル産業や居酒屋などに就きたがるだろう。もちろん俺もそれらを否定するわけじゃない。しかし俺は不器用で女にもてるわけじゃないので、期待するだけ悲しくなるだけだ。ここのバイトにも昼間のレジ打ちには幾分かわいい女の子も居るが、深夜帯にはお世辞にも…といった女が一人いるだけだった。

 人を判断する時、その最初は外見だ。その第一印象が後々までその人の行動、言動の評価に影響してくる。仕事の上での付き合いや同性の場合はある程度大人になるにつれ、外見だけでなくその人の内面を見るようになる。

外見に関係なく尊敬できたり親しみを憶えたりする事ができるが、それが恋愛となると話は別だと思う。男女の出会いなんてたかが知れてるし、外見が悪い場合まず最初の一発勝負で勝てない。コンパやお見合いじゃまず無理だ。仕事でずっと共にする場合でもまず最初の段階で恋愛対象に入っていない。要するに恋愛対象になりえる為には、外見で劣る部分を補う位に仕事ができて生活力があり、なおかつ性格が良くなければならない。やっぱり人間内面が大事とか言いながら結局人は冷静に内面と外見をトータルで点数化している。

 他のバイトのメンバーと話す事はあったが、

お互いに表面的な話だけで特に親しくなる事はなかった。というより高橋自身がそれを避けていた。中には同じ大学の奴もいたが、微妙にナアナアになって休み明けに学校で顔を合わせたら気まずいだけだ。それよりかいっそ、会った事もない他人レベルを超えない方がよっぽど気楽だ。こうした考えがとても寂しいものだと分かっている。こうした極力人を避けるようになったのは、やはり中学のいじめで人と接する自信を失ったからであろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ