30.リビアの子
春の日のことです。リビアが子供を産みました。
えっ、まさか。と、思えば愛神さんが檻から逃げていたのです。そしてどこにも姿がありません。
私は彼女が消えてしまったのかと考えました。しかしリビアの行動を見ていて、少々強引な予感が生まれました。
エシュにベッタリだったリビア。なのにある日から、リビアは一人の行動が目立ち始めます。
怪我人を放置できず、隙あらば子作りをしてしまう肉食系ゾンビ女子。それも面影がありません。
ひとりで何処へ行くのかしらと見守れば、彼女は猿人の群れに出向いておりました。
そこでひっそり子作りでした。そう。ゾンビと人間が交わったのです。
産まれた子供は人間の姿。ゾンビと同じ肌色にはならず、ニッコリ笑顔も引き継がれません。
エシュは産まれた子供を大事に育てました。Kenもです。彼らゾンビは種族というものを知らないので、額に同じマークを描けば家族になれます。
たちまちエシュらは大家族になり、建設も進みました。
お城の周りには家族の家々が建ち、村となり、街になり、そしてまた国にも発展するのです。
平和かと思われた世界。しかし残酷なのは人間の方です。
もともと文明を持っていたエシュとKenによって、急ピッチで様々なものが整えられていきました。
数字の概念。日付や時間が決められます。
食糧、衣服、勉学。知恵は人間の大好物でした。
人間はエシュとKenを神様のように崇めました。リビアのことも人間の母であると大いに愛しました。
事件が起こるまでは。
人間の知りたい意欲は恐ろしいのです……。
一方、神様領域では。
“愛神さん。そろそろ戻ってきなさい”
私が注意をすると、地上のリビアは気を失って倒れました。数分経てば何事もなかったかのようにエシュのところに帰るんですけど。
それより天に戻ってきた愛神さんの方です。
“勝手なことをしないでください”
“えっへへー”
まったく反省をしていない様子。へらへらしちゃって良くないですね。
(((次話は明日の朝5時に投稿します
Twitter →kusakabe_write
Instagram →kusakabe_natsuho