33.弔いの霊堂
初めての戦争のおわり。ゾンビさんたちは初めて「死」というものを目の当たりにしました。
ヒトは死ぬということを知り、反対に彼らは死なないということも知ったのです。
エシュはKenを呼び寄せて、このことについてしばらく話し合いました。その席には私も参加させられました。
「カミサマ、ボクタチ、トクベツ?」
エシュが聞きます。
“ええ。特別ですよ。私の子ですから”
「ボクタチ、シアワセ、ナレル?」
“幸せになりたいんですか?”
エシュは頷きました。私の言葉は彼としか通じないのでKenには通訳してもらい、Kenもまた頷きました。
私は困りましたよ。幸せって何だろうって、こっちが考えさせられます。生前で答えが出ていないのに、神様になったって分からないものは分からない。
他の神様にも聞いてみたけど分かるはずがない。だって私の化身ですもの。同じような答えしかかえってきません。
なので答えるとしたら、こうでした。
“彼らと一緒に過ごして見つけてみたらどうですか?”
自然より生まれたホモサピエンス。もうすぐ彼らは車に乗るし、飛行機を飛ばすし、そのうちインターネットを作るでしょう。
“あなた達の知らない世界が、確実に待ち受けていますよ”
Kenはエシュの通訳を聞いて興奮しております。この子が嬉しそうだと私も嬉しくなります。
そしてエシュはどうして臆病なんでしょうね。そこも可愛いんですけど、親心としては心配ですよ。
話し合いの結果、ヒトと神人は和解することになりました。
合言葉は「私たちは同じ人間だ」です。なかなか良い風にまとまったんではないでしょうか。
その誓いとして、人間は戦争で失った命を弔うための建物を建設します。
英雄の名前はナヴェール。その亡骸が、最も大きな箱の中に仕舞われました。ナヴェールを支持したヒト達も近くの場所に埋葬されます。
弔いの館に葬られたのはヒトの命です。
大事に、大事に。ゾンビさんたちは自らの手で、しっかりと葬ったのでした。
(((次話は二本立て。
(((最終話を今日17時に投稿します
Twitter →kusakabe_write
Instagram →kusakabe_natsuho