31.ホモサピエンスと神人
知識があり人々に慕われるゾンビたち。
「選ばれた力」「神の使い」
人離れした数々の偉業が、彼らにあらゆる呼び名を付けました。そして行き着いたのが「神人」多くはそのように呼ぶようになります。
人類が生命ピラミッドの頂点に君臨し、火を使って肉を焼く時代でした。
私が生んだゾンビさんたち……つまり神人。
自然の中から進化で生まれたホモサピエンス……つまりヒト。
彼らの容姿は似ています。二本足で立ったり、腕を使って物をどうにかしたり。しかし思考はまるで違う。
リビアは育った麦を集めてパンを焼きました。とっても美味しそうなパンです。それを一日中焼いたら皆に配りました。
受け取ったパンが美味しかったエシュは、リビアにもっとくれと言います。
それでリビアは喜んでパンを焼いたのですが、ヒトの方はこう言いました。
「作り方を教えてほしい」と。
人生経験のある創造神わたしは“あらまー”と思うのです。なんだか嫌な予感がぷんぷん香ってきますよ。
パンの工場が完成すると、リビアのパンは人気が減るじゃないですか。まだこの時代では、元祖とか老舗とかいう概念もありませんし。
これと同じような現象が、他にもエシュやKenのところでも広がるのです。
それにヒトの探求心は神人よりも鋭い。より良質なものを。より多くの数を。そして、より自分が神に近付くよう努力は尽きませんでした。
永遠に。きっと彼らが絶滅するまで。
「神人など居ない!! 奴らは我々を支配している!!」
「我々こそがこの星の王家なのだ!!」
なかなか物騒な時代になってきましたね。ひとりの英雄と呼ばれる大男の拳に、たくさんのサポーターが付いているみたい。
エシュの工事はたちまち休止です。悪い気配を感じ取って、エシュは体調を悪くしました。リビアも付き添い人です。私はいよいよエシュが死んでしまうのではないかと不安でした。
そこへKenが戻ってきます。
Kenは一部のヒトと上手にお付き合いが出来ていて、彼らとチームを作っていました。そしてエシュに告げました。
「ボクラ、タタカウ」
戦い。その行動が、ついにこの星で起きようとしています。Kenはいつも通りのニコニコ笑顔ですが、おそらく相当の決心があったかと思います。
後ろに控えるヒトたちはKenの思いに力強く頷きました。
もう、平和な時代ではいられないのです。
(((次話は今日17時に投稿します
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