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p.4

 だが、やがて決心したように口を開いた。


「こんなことを言って、怒らないで聞いてくれるかしら。わたし、ずっと考えていたことがあるの。もしも、許されるのならば、わたしはこのままあなたと暮らしたいと思っている。あなたはどう思う?」

「もちろんだよ。ぼくもそのつもりでここに来た」

「でも、そうしたら、あなたはきっと後悔することになると思うわ」


 ぼくの答えを聞いた彼女は、悲しそうに微笑んだ。


「そんなことはないさ」

「いいえ、きっとそうなるわ。だって、あなたはまだ若いもの。この先、どんな素敵な女性に出逢うかもしれない。そして、その人たちと恋に落ちることになるはずよ。その時になって、わたしのせいで傷つくようなことになったら申し訳ないじゃない」

「そんなことにはならないさ。ぼくの心の中には、いつも君がいるんだから。それに、ぼくは今まで一度も恋をしたことがないんだよ。君以外の人に心を奪われたことなど一度としてなかった。だから、心配はいらないよ」

「本当?」


 彼女は上目遣いに訊いてきた。


「ああ、本当だとも」

「そう……。わかったわ。じゃあ、これからどうするか決めましょう。どうせ、このままではお互い前に進めないんですから」


 彼女はようやく笑ってくれた。ぼくは嬉しかった。


「ありがとう。そう言ってくれて」

「いいのよ。でも、わたしのほうこそお礼を言わなくちゃね。あんな想いのこもった手紙をもらったのは初めてだったから、とても驚いたけど、おかげで目が覚めたわ。本当の愛って何なのかを、やっと思い出すことができた気がするの」

「本当の愛?」

「ええ、愛というのは見返りを求めてはいけないものだってことがよくわかったの。あなたがわたしのことをどれだけ想っていてくれても、それだけで充分すぎるくらい幸せなんだっていうことに気がついた。だから、もうわたしは迷わない。たとえ、この先にどんな辛いことがあったとしても、あなたを信じて生きていくことにするわ」

「うん、それでいいんだよ」

「わたしたちの結婚は許されないでしょう。だけど、それでも構わない。世間から後ろ指さされる関係になったとしても、わたしたちはお互いに支え合って生きていきましょうね」

「そうだね」


 ぼくは彼女を引き寄せると、優しくキスをした。


 ぼくは、彼女のためにすべてを捧げようと思った。彼女のためなら、ぼくは何を犠牲にしてもかまわない。そして、これから先の人生を彼女と共に歩んでいくのだ。

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