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賢者というのは強いんじゃなかったのか?!  作者: 要
グランデール再び
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グランデール再び(1)

 故郷エールベーラに向かっていた僕たちであったが、街道で出会った商人からエールベーラが軍の視察にあっているという情報を入手したため、急遽、行き先を変更し領主の館のあるザイムの街に来ていた。

「視察って言ってたが、嬢ちゃんを連れ戻しに来たって事だろうな。」

 ザイムの宿屋の食堂で、トゥラデルが気持ちよさそうにビールジョッキを傾けた。

 テーブルには辛味のあるソーセージ、牛肉の串焼き、若鶏のグリル焼きと、肉類に傾きまくったトゥラデル好みの夕食が並んでいる。

「私たちはフローレンス王女を誘拐した罪に問われるかもしれませんね。」

 そう言ったアクアディールがワインを少量口に含む。少し酔っているのか、頬が紅潮している。

 野営中は飲酒をすることがないアクアディールであるが、実は酒好きであるとフローが言っていた事を思い出す。

「ふたりは私が護衛に雇っているだけなので大丈夫です。」

 オレンジの果汁が入ったグラスを両手で包み込むように持ったフローが、トゥラデルとアクアディールに力強く声をかけた。

 フローはそう言うが、王女が無断で王都を出ているのだ。カーネリアン王は罪を問う事に反対するかもしれないが、この失態の責任は誰かが取らなければならないだろう。

 誘拐犯としてふたりをでっち上げるという可能性は十分にあり得る話だ。

「明日は領主の館に行くってことでいいか?」

 トゥラデルが若鶏のグリル焼きを口に頬張り、ビールでそれを流し込む。

「口の物は飲み込んでから話せと、何回も言っているだろう!」

 今回の旅に限らずトゥラデルの行儀についてはアクアディールが口煩く注意しているが、一向に治る気配が見られない。

 むしろトゥラデルはアクアディールの反応を楽しんでいるかのように思えるほどだ。

「トゥラデルは、王族の方と食事をしているという自覚をもっと持つべきだ。」

 そんな話には馬耳東風なトゥラデルが手を伸ばした鶏肉のグリル焼きに、我慢が限界に達したアクアディールがフォークを突き刺した。

 アクアディールの今の行動も王族同席の食事でやってはいけない行為なような気もするが、怖いの指摘するのはやめておこう。

「私は気にしないので、皆さんリラックスして食事を楽しんでください。」

 この様な光景は慣れてしまったのか、はたまた本人の性格なのか、当のフローは笑みを浮かべながら、俯瞰した顔で二人の様子を眺めている。

「そんな事より、明日は早いですよ。2人とも寝坊したら許しませんからね・・・ヒック。」

 酒癖が良いとは言えないトゥラデルと、珍しくワイングラスを傾けているアクアディールに釘を刺すフロー。

 って、ヒック?

「姫様?」

 アクアディールが怪訝な表情をフローに向ける。

 店内の暗めの照明では分かりづらいが、頬が少し赤くなっているようにも見える。

「いいれすか?こんかいのたびは、ろれらいとさんのぬれぎぬを・・・。」

 急に呂律が回らなくなるフロー。

「姫様、ちょっとグラスを失礼します。」

 アクアディールがフローのグラスに鼻を近づけ、僕の方を見た。

「これ、オレンジリキュールみたい。」

 なんと、宿屋の食堂でフローに出された飲み物はリキュール、つまりお酒。しかもそれなりにアルコール度数が高いものだったようだ。

「そんなこと、ないれすよぉ。私、全然酔ってないれすし。」

 フロー、それは酔っ払ったオッサンが良く口にする台詞だ。

「それよりも、大事なのはでしゅね・・・。」

 フローの目が完全に据わってきた。

 今日、何かを決めるというのは無理そうだな。

「ロゼライト、すまないが歩けなくなる前に姫様を部屋まで送ってもらえるか?」

 アクアディールが珍しくフローのお世話を僕に任せてきた。

 いつもであれば護衛の任務を誰かに任せることは無いのであるが、それだけ信頼してくれていたということだろうか。

「私はこの男に礼儀というものを、もう一度叩き込まなければならないのでな。」

 そう言って、持っているグラスを勢いよく傾け、中の液体を胃に流し込むアクアディール。

「店主!おかわりだ!」

 そして、空いたグラスをカウンターの中にいるガタイの良い店員に向けた。

「ふふふ。あくあでーるさん、たのしそうれすね。」

 確かにいつもの堅物なアクアディールと比べて、肩の力が抜けているようにも見える。

 単にもっと飲みただけなのかもしれないな。

「じゃあフロー、部屋に行くよ。」

 フローとアクアディールの部屋は二階の一番奥の部屋。その手前が僕とトゥラデルの部屋だ。

 アクアディールの言う通り、フローが歩けるうちに部屋に移動することとしよう。



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