第二話「彼こそは・・・」
これくらいの文章量ですがお楽しみください。
ーー魔族領ハイリン大陸北東部最前線ーー
ピカッ
『ドウッゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ』
戦場の闇夜突如として光が瞬き先程までかんたんな塹壕があった場所が更地になった。空に登っていくのは大きなボウルを何枚も重ねたような巨大な雲。
ハイリン最終防衛ラインの最高指揮官であるレーヴェル中将は怒りを顕にしながら退避を始める。先程攻撃されたのは偵察指揮所。次に攻撃されるのはここ、戦闘指揮所であることは明白である。
「クソッ!!また神代魔法かよ!!」
「閣下。そうは言いましてもあれを避ける方法は機動的な陣地変更以外にありません。帝国内部での民族的分裂によって旧式兵器でさえも入ってこないのです。」
「これだからとっとと首相を立てろと参謀本部に嫌ってほど言ってあるのによ!!」
国民からは慕われているレーヴェルだがその能力は高く、電撃的な突破→戦線構築→敵の包囲→危険なら即時離脱。のセットを繰り返すことによって4倍近い兵力を持った部隊と対等に渡り合っている。
そのはタレ目で少し気弱そうな見た目とは違い、兵站の重要性とその場に合わせ軍隊を再編成することの有用性をひどく過激に主張したことでも知られる。
『バウッ』
音と同時に敵陣地より一斉に投げられる魔芯物。
魔法とは、魔芯物に込められた魔法陣を対応する詠唱によって魔力を充填させ起動することの総称を指す。しかし、人族はこの技術が卓越じているのに関わらず魔族は身体的な問題があるので対抗することができない。
「敵陣地より魔芯物飛来!!爆裂術式です!!」
「全員身体強化!!余裕のあるやつは手持ちの魔磁銀盾を構えながら対空戦闘!!」
「着弾まで残り13秒!!」
流石というべきか、レーヴェル中将率いる陸軍師団は9割が盾を構え小脇に抱えるエーヴァン8式機関銃を連射し、応戦している。(エーヴァン8式機関銃は見た目と性能がグロスフスMG42機関銃に酷似している)
またその頃になると敵が塹壕から出てきた旨を受け空軍爆撃機による攻撃が始まった。しかしその威力は低い、なぜなら人族は魔族との技術的なギャップが500年ほどあるが(彼らは銃や飛行機を生産していないというかできない)魔法による障壁防御や連射魔法、飛行魔法による魔導飛行隊等によって対応しいくら優秀な兵器といえどもその本領を発揮できていないからだ。
『バシュッ!!ドゥガガ!!』
総量130000発を超える爆裂魔法がレーヴェル率いるハイリン防衛隊に襲いかかる。これでも優秀な部下のおかげで200000発は撃ち落としているのだから恐れ入るほかない。
「損害報告!!」
「損害軽微、52名が死傷で戦線離脱。」
レーヴェル率いるハイリン防衛団の大きさは方面軍程度、約9万人によって構成されている。
確かに優勢ではあるのだが・・・
「2度神代魔法食らえば崩壊するしかないか・・・」
「はっ新兵器さえあれば一方的のされずに済むのですが本国では魔磁銀の産出が安定しないらしく前線までの輸送や実践的な配備は不可能ということです。」
「一旦てった」
これ以上の戦闘は必要ないと考えたレーヴェルは前線を引き下げようと画策するが・・・・
「っ!!敵塹壕付近に魔芯物投射用大型カタパルト確認。打ちました!!」
索敵班が確認したのは投石機のようなもの。もちろん乗っかっているのは石ではなく凶悪かつ残忍な術式が刻み込まれた大型の魔芯物であるためぶつかったら全滅を免れない。
撃ち落とそうにも残念なことに先の戦闘で部隊は混乱し統率された対空射撃は不可能だ。
「終わった。」とレーヴェルは考えた。が、
『ガァァァァァァン!!!・・・・・キンッ!!ドーン!!』
あれはここから500メートルほどの上空だろうか?爆炎を上げて飛来してくるのは魔芯物、ああなってしまっては刻み込まれている神代魔法は作動しないだろう。
撃ち落としたのは雷鳴を思わせるスナイパーライフル。あれは偵察指揮所にて誰も使えないので放置されていた旧式兵器「ウェルダン20」に違いない。だがあのような旧式兵器での狙撃ができる兵はこの部隊にはいないはずだとレーヴェルは思考する、では一体誰が・・・・
「馬鹿め、狙撃して術式を破壊しても基礎術式の爆裂式は来る。全員!!身体強化及び盾構えろ。衝撃による砂煙が立っている間に伏せながら統制射撃!!」
響くのは耳に心地よい低音だが聞き取りやすい命令。この場では最高指揮官であるレーヴェルも考えることなく従った。盾に隠れながらちらりと目を向ける先には薄茶のコートに腕にはハーケンクロイツの入った赤い腕章、胸には大鉄十字章を下げ、そのちょび髭が印象的な知らない兵士がいる。
いや・・・兵士ではない。彼は、彼は指導者なのだ!!
そう思わせる風格が彼にはあった。
『バシュ!ドガガ!!』
爆裂術式に比べれば幾分かましな衝撃が体を襲う。命令通りまだ砂煙の立っているところから銃で狙いをつけ・・・
『ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!』
撃った。鳴り響くは轟音の嵐、きっと我々の制圧をしようと塹壕から出ていた人族の兵士たちは全員が死亡しただろう。あとはもう、塹壕を改装して撤退するだけだ。
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漂う、思考の海を抜けた。
きっとこの情報の海の情報は地球が存在する世界とは別の世界のものなのだろう。
地球ではもう、私という概念を望む存在は減った。
しかしこの世界に来てからは違う。私という存在ではなく、私という概念を望む物が多くいることが感じられる。それは私にとっては至福の喜びそのものだ、ついに!!ついに!!私が復活する。
誰かが呼んでいるのがわかる、望まれるのはカリスマ的な指導者・自分たちの能力を活かせる指導者。
ならば!!ならば、私のすべての能力を使ってその能力を叶えよう!!
あの世界では災厄の象徴としての概念でしか生きられなかった私がこの世界の英雄となろう!!
身につけるのはヒトラーとしての私の服装、ゲーリング自慢の鉄十字勲章。
この世界にて誕生するのは相当としての概念上の私、ハイリンヒ・ヴィルヘルム・ハイゲラー
まずは今は亡き兵士たちの願いをかなえよう
来週の金曜日にまたお会いしましょう