第四話 オニコ覚醒
彼女である眞利の親友で、大学のオカルト研究会所属の沙月に話を聞いた盛弥と眞利。吸血鬼を人間に戻すためには、膨大な量の血が必要だと分かった。盛弥とオニコの約束がある中、帰宅してオニコの覚悟を確認した盛弥はどうするのか?そして方法を探していた矢先、眞利が何者かに襲われる。駆け付けた盛弥とオニコが見たものとは・・・。そして、オニコが目覚めた戦闘能力とは?
吸血鬼とは、学習能力も優れているのだろうか。盛弥は、オニコが作ってくれた野菜スープを食べている。彼女は、一度盛弥が作っているのを見ただけで、ほぼ同じものを作ってしまった。あるいは、彼女自身の能力なのかもしれないが、オニコの笑顔を見ているとどうでもよくなった。野菜スープを食べながら、オカルト研究会で聞いて来た事を聞かせる。吸血鬼が人間に戻るためには、約1万人分の血液が必要だということ。そしてそれには・・・。
「俺たちは、生身の人間の血は吸わない。これは変えるつもりはない。それでいて、俺の血を毎日吸ったとしても、かなりの時間がかかる。他に人間の血を得る必要がある。そして、もう一つ。お前には感情があって、知能もある。多分、血を吸っていく上で罪悪感は常に付きまとう。それを超えていかないといけない。それでもやるか?」
盛弥がオニコに覚悟を問うと、しばらく考えた上で強い視線を盛弥に向けて頷いた。盛弥は、少しだけフッと笑うとこう続けた。
「分かった。お前がそう言うなら俺は全力でサポートする。精神的に辛くなったりしたら、甘えていいし、頼ってくれていい。まあこんな事言っといてあれだけど、血を得る方法は浮かんで無いんだけどな・・・。」
盛弥が苦笑いしていると、オニコがテレビを指さしていることに気付いた。テレビでは、殺人事件の臨時ニュースが流れていた。
「本日午後3時頃、東京都世田谷区三軒茶屋の路上で一人の男性が倒れている、との通報がありました。男性は病院へ運ばれましたが、間もなく死亡したとのことです。尚、男性は腹部を刺されており、体内に血液が一切なかったとのことです。またこの事件について、とある犯行声明がネット上に上げられたとの情報が入っています。」
画面には、犯行声明と思われる写真が映し出されていた。
「我々は、蚊人。人間の血を養分として、この星の征服を目指している。本日、男を一人生贄とした。今後、世界中の人間を襲っていく。せいぜい覚悟しておくがよい。」
盛弥は、気が付くとテレビに釘付けになっていた。
「セーヤ。こいつらなら、襲っても大丈夫?」
オニコが確認を取ってくる。盛弥は、やっとのことでオニコに向き直ると、呼吸を落ち着けて答えた。
「まあ、犯罪者集団だから問題はないと思うけど、今は相手の実体も規模も分からない。もう少し様子を見て行動しよう。」
オニコを人間に戻す方法の道筋は大方ついたが、まだ様子見が必要だろう。今後は、蚊人に関する情報収集をしていくことにして、今夜は寝ることにした。
しかし午前1時過ぎ、オニコと二人で寝ていると、2人の寝息を中断するように盛弥のスマホがけたたましく鳴った。
「誰だよこんな時間に・・・!」
スマホの画面には、眞利からの通話であることが示されていた。
「眞利?どうした?」
「盛弥!助けて!蚊人に追いかけられてる!」
「えっ?大丈夫?どこにいるの?」
「駅前の路地。あっダメっ来るっ!ごめん、逃げなきゃ!お願い、助けて!」
眞利からの電話は、そこで切れてしまった。盛弥は、オニコを起こして駅へ向かった。駅前にある広場では、蚊人に襲われた無数の人々が血を抜かれて倒れていた。その光景に絶句していると、2人の背後から、コツコツと足音が聞こえてきた。恐る恐る振り返ると、黒いスーツに身を包みサングラスをかけた男性が、街灯の明かりに映し出されていた。手には、極太のアイスピックのような針を持っていた。男性はにやりと笑うと、2人をめがけて突っ込んでくる。
「オニコ!逃げるぞ!」
そう言うが早いか、盛弥が走りだそうとすると、敵に近かったオニコが吹き飛ばされて、盛弥の進行方向へ飛んでいく。
「オニコ!!!」
盛弥が駆け寄ると、目を開けたオニコがフラフラと立ち上がる。
「オニコ?大丈夫か?」
盛弥の呼びかけが聞こえているのかいないのか、無反応なオニコが男性を見据えると彼女の体からオーラが立ち上る。盛弥が何が起こったのか把握できずにいると、オニコの背中が光りだし、鞘に入った一振りの大太刀が現れる。オニコはそれを抜いて構えると、盛弥にこう言った。
「セーヤ、私に任せて。マリを探してあげて。」
オニコの真剣な声音と口調を聞いた盛弥は、スマホを取り出してこう答えた。
「分かった、任せる。死ぬなよ。」
オニコが頷くのを確認すると、眞利のスマホの位置情報を呼び出して駆け出した。
眞利のスマホの位置情報は、盛弥の位置から東に300m程の位置を示していた。地図上だと、どうやら路地に潜んでいるようだ。しかし実際に近づいてみると、その路地の入口は見えているものの、先程の男性と同じ格好の男女が数人うろついていて迂闊に近づけない。
「くそっ何か武器があれば違うんだけどな・・・。」
あたりを見渡すと、程よい長さの鉄パイプが転がっていた。剣道経験のある盛弥は、鉄パイプを拾うと己の体が動く事を信じて走り出した。
「うおおおおー!」
丁度路地の入口の前に立っている女性めがけて鉄パイプを振り下ろすと、たまたま脳天を直撃したのか絶倒する。そのまま、向かってくる男性めがけて鉄パイプを振るう。鉄パイプで、男性が付きだした針を払うと、そのまま男性の脳天めがけて振り下ろす。男性が絶倒するのを確認すると、路地に引っ込んで眞利を見つける。
「眞利!大丈夫か?」
「盛弥!うっ、ぐっ、怖かったあああー。」
盛弥を見つけて安心したのか、号泣し始める眞利。
「ちょっ!眞利!場所がばれるから泣くなって。」
泣き止まない眞利の声を、必死に抑えながらこれからどうするか考えを巡らす盛弥だった。
盛弥が去ったのを確認したオニコは、背中に現れた大太刀を構えて、先ほど自分にダメージを与えた男性をしっかりと見据える。
「御屋形様。お力、お借りいたします!」
オニコはそう呟くと、大太刀の柄を握りしめて男性へ向かっていった。近づくと同時に振りかぶり、男性目掛けて振り下ろす。男性は、左手の針で受け止めると、右手で拳を作りオニコの腹部へ打ち込もうとする。オニコはそれを察知すると、相手の針に触れている大太刀に力を込めて踏み台にし、ジャンプして回避する。着地すると振り向いて、追ってくる男性の攻撃をいなす。しかし、勢いを殺しきれなかったがために飛ばされる。東の方角へ飛ばされたオニコは、地面を転がってあちこちをすりむきながら、勢いが弱まって止まる。フラフラと立ち上がると、追いついた男性に再度吹っ飛ばされる。腹部に強烈な打撃を食らったオニコは、血を吐きながら飛ばされると丁度盛弥が潜んでいる路地の前に打ち付けられる。
「オニコ!!!」
盛弥の声が聞こえたオニコは、力を振り絞って立ち上がると目を見開いて、向かってくる男性を捉える。視界の端に、盛弥がいるであろう路地が入るが、入り口に集まってきた数人の蚊人によって盛弥は出て来るのを止められる。オニコが男性の打倒を決意したその時、星空のどこからか雷が発生しオニコに降り注ぐ。雷に力を得たオニコは、稲妻の速さで男性に近寄り大太刀を振るう。
「雷迅剣!」
男性の体を一閃すると、オニコは力尽きてその場に頽れる。
盛弥は、自分の行先を封じた蚊人を何とか制圧すると、何が起きたのか稲妻が走ったと思われる方向に、崩れ落ちるオニコを見た。
「オニコ!!!!!」
オニコに駆け寄ると、力を出し切って気絶しているようだった。正気に戻り後から追ってきた眞利と共に、オニコを抱えてその場を離脱する。
「オニコちゃん大丈夫?すごく衰弱してるみたいだけど・・・。」
確かに抱えているオニコはとても弱っていて、あまり生気が感じられなかった。ひとまず帰宅を急ぐことにした盛弥は、自分の血液を大量に吸われることを覚悟するのだった。
お読みいただきありがとうございます!
今回は、初戦闘回でした。うまく書けているか分かりませんが、楽しんでいただければ嬉しいです。
さて、今後ともお付き合い、よろしくお願いします!




