第三十五話 攻略作戦
けが人は出たものの、何とか全員帰還した盛弥達。沙月は蚊人撃破の突破口を探る為、単身クザスへ会いに行く。クザスから聞き出した情報から、盛弥達がとる作戦とは?
また、盛弥達をサポートするため、時空研究所の椎名が新アイテムを提供してくれる。そのアイテムを、オニコに持たせた盛弥の狙いとは?
美月を救ってから数日後。起床した盛弥がテレビをつけると、布団から引きずっていた眠気が吹き飛んだ。理由は、朝のワイドショーで取り上げられていた大量殺人事件のニュースだった。
「今朝6時頃。都営線の府上駅前で、大勢の男女が殺害されているのが発見されました。現場は府上駅前の広場で、通報者の男性によれば『腕に針の生えた怪物が、人々を無差別に殺害していた。』とのことです。」
テレビの画面では、遺体にモザイクがかけられた状態の映像が流され、発見当時の現場の様子を伝えている。盛弥は突然の情報に固まり、手に持っていたテレビのリモコンを落とす。リモコンの落下音でふと我に返り、オニコは目を覚ます。オニコは、眠そうに目をこすりながら盛弥の傍に来る。
「どうしたのセーヤ。」
「……マジかよ……。」
盛弥は、被害の大きさに驚いていた。テレビに映し出された光景には、十数人の老若男女様々な人たちが倒れている。モザイクでわかりにくいが、老若男女様々な人たちが被害にあっているようだ。
「今速報が入りました。被害者は、体内全ての血液が抜かれていることが、捜査関係者への取材で分かりました。」
テレビからは、更なる情報がもたらされている。その情報から、蚊人の仕業であることは確かなようだ。
「しょうがないな。緊急招集だ。オニコ、早く支度しろよ。」
オニコは黙って頷いた。
盛弥は、眞利とオカルト研究会のメンバーに連絡を入れ、メンバーがオカルト研究会の部室に集まった。
「おう高平、来たか。」
「ええ。まずいことになりましたね。」
到着した盛弥とオニコを、常長が出迎えた。他には、奥野と沙月が集まっていた。
「あとは眞利だけね。さっき連絡あったから、もう着くと思うよ。」
少しして眞利が到着すると、緊急作戦会議が始まった。いつもと異なり、常長が進行している。
「今朝のニュースでみんな知っていると思うが、再び蚊人の被害が発生した。早急に本部を叩くべきだと思うが、どうだろう?」
常長の問いに対して奥野が手を挙げる。
「俺も同意見です。被害が更に大きくなる前にやるべきです。それに、リンキが血液を集めきる前にやる方がいいと思います。」
続いて沙月が口を開いた。
「じゃあ私から、リンキ攻略の情報を提供します。」
沙月は、クザスに聞いてきたことを全て話した。集まった一同は、時折驚きながら沙月の話に耳を傾けた。
「さっちゃん、一つ確認。その情報って、信頼できるってことでいいよね?その、さっちゃんを疑ってるとかじゃなくて、一応確認しとこうと思って。」
沙月の話の後に、眞利が尋ねた。沙月は静かに頷いて、親友の問いを肯定する。彼女の表情からも、疑う余地はないようだ。
「そうか。クザスの言うことは一理あるな。炎がマグマってことは、乗っ取られたのがブゲンだから、岩が何かに代わるから……?」
盛弥は、リンキの攻撃について考えてみるが、いまいちしっくりくるものがない。考えにはまっていると、奥野が常長に提案をした。
「怪斗さん。リンキもそうですが、下っ端の蚊人も放っておけないと思いますがどうでしょうか?」
「そうだな。いくらリンキを倒せば消えると言っても、それまでに失われてしまった命は戻しようがないからな。ここは、戦力を分けるしかないか……。」
リンキを相手に、今の盛弥達が戦力を分けるのは、あまり望ましくない。しかし、市街地の警戒も必要だとなると、分けざるを得ないのが現実だった。
「怪斗さん。俺たちは、何の関係もない人たちが襲われるのは許せません。俺と遊馬でそっちは何とかします。」
盛弥は、思い切ってこう言った。奥野も、盛弥を見て頷いている。
「じゃあ、リンキの方はどうする?あとは女性陣だけだぞ?」
盛弥は、オニコと眞利、それに沙月を見渡した。彼女たちの視線からは、強い意志のようなものが使わってきた。
「オニコも、眞利も、沙月ちゃんも、俺や遊馬よりはるかに強いです。俺は、彼女達にお願いできると思います。」
常長は、盛弥の言葉を受け取ると、改めて女性陣に目を向けた。
「うちの総大将はこう言ってるが、みんな的にはどうかな?」
すると、眞利がそれに答えた。
「盛弥がそう言うなら、私は頑張ります。オニコちゃんとさっちゃんも仲良くなったみたいだし、このメンバーなら連携の心配はなさそうですから。」
沙月とオニコも了承し、大まかな作戦が決定した。そして決行は、それぞれの準備の時間を考えて翌日の夜ということになった。
解散後。スマホのメッセージ通知に気付いた盛弥は、彩子からのメッセージを受け取った。メッセージに従い時空研究所にやってきた盛弥とオニコを、彩子がエントランスで出迎える。
「やあ、2人とも。来てくれてありがとう。大変な時にごめんね。」
メッセージに寄れば、椎名が何やらアイテムを開発したらしい。彩子について研究室に向かうと、椎名が明るく出迎えた。
「おっ、久しぶりだね二人とも。来てくれてありがとう。そこに掛けていてくれ。」
言われた通りにソファーに座っていると、椎名がミサンガのようなものを持ってきた。
「これは、先日完成したブレスレットなんだ。魔力の使用量を最適化することができるんだよ。」
「先生は、様々なアイテムを開発する研究もしているの。あまり公にはしていないけどね。」
彩子の説明で、大体の話の内容がつながった盛弥は、ブレスレットを手に取ってみた。横からは、オニコが興味津々に覗いている。試しに右手首にはめてみると、心なしか右手が軽くなった気がした。オニコに着けるように手渡すと、盛弥が感じている以上に効果があるようだった。
「あ。これすごい。右手が軽くなってる。セーヤ、どっかで戦えないかな?」
それを聞いた椎名は、研究室の向かいにある訓練室に連れて行った。
「ここは、私専用の訓練室だ。少し待っていてくれ。」
椎名はそう言うと、何やら操作パネルの場所へ向かった。訓練室の中央には、大きめの身長で作られた人形があり、何やら木刀のような武器を持っている。椎名が起動ボタンを押すと人形が動き、武器を構えた。
「これでスタートボタンを押せば、模擬戦闘プログラムが走って、戦闘訓練ができる。」
それを聞いた盛弥は、オニコに指示を出した。
「オニコ。そのブレスレットを着けた状態で、稲妻吸血をやってみよう。」
オニコは頷いて人形の前に立ち、大太刀を引き抜く。
「それじゃあいくよ。」
椎名がスタートボタンを押すと、人形がオニコに向かって攻撃を始めた。オニコは、雷の力を貯めながら回避を続ける。力が溜まったところで人形の右上に飛び上がると、オニコは攻撃を繰り出した。
「稲妻吸血!」
振り上げた大太刀から電撃を走らせ、斬撃を繰り出す。着地したオニコが戻ってくると、皆が感想を待っている顔で出迎えた。
「これなら、負担は少ないかも。いつもより体は重くないと思う。」
オニコの感想を聞いた椎名は、しばらく使ってみることを提案してきた。前回の美月救出以降、オニコとの別行動が増えてきたと感じた盛弥は、オニコ自身の魔力消費が効率化されれば、今まで回数が限られていた大技も多く出せるようになるかもしれないと、椎名の提案を受け入れた。
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