第三話 血を得る方法
平安時代から吸血鬼として現代に転生してきた少女、オニコを人間に戻す事に協力することにした高平盛弥。彼女である仲野眞利の助力を得られることになり、彼女の親友でオカルト研究会所属の岡沙月に、吸血鬼を人間に戻す方法を聞くことになった。そこで聞いた話の内容は、意外な内容で・・・?
登場人物3
狩野恭平 盛弥の高校からの友達。よく2人で一緒にいるが、盛弥はオニコの事をまだ話していない。明るい性格で、仲のいい友達が多い。
昨夜の寝苦しさは相変わらずだったが、寝る前にオニコに血を抜かれたせいで、ぐっすりだった。朝に目覚ましが鳴って目を開けると、オニコが気持ちよさそうに抱きついて寝ていた。盛弥は、血を抜かれた後の記憶がないので、すぐに寝てしまったのだろうと思ったが、オニコは落ち着いてから盛弥に抱きついて寝たのだろう。そんな寝顔に見えた。オニコを起こさないようにベッドから出ると、朝食とオニコの分の昼食を支度する。支度をしていると、匂いに誘われたのか寝ぼけた顔のオニコが起きて来た。
「おはよ、オニコ。もうちょっとだから、待っててな。」
オニコは頷くと、寝ぼけた顔のまま机についた。朝食を持って行きながら、ポケーとしたままのオニコの目を覚ます。
「おーいオニコ。起きろー!飯だぞー。」
ふえっ!というよく分からない声をあげると、目が覚めたようだ。
「おはよう、セーヤ。」
今更だが、転生というのは至極便利だと思う。転生する際には、転生先の世界の知識や情報が自動的にインプットされるらしい。オニコが平安時代生まれでも、この時代の生活や会話に困らないのは、そういう事なのかもしれない。しかし、スマホを知らなかったような例外もあるようだが。
「オニコ。俺、今日大学に行ってくるから、留守番よろしくな。」
「留守番って、何するの?」
「あー、そうだな。特にないけど、もし知らない人が来ても、出なくていい。勝手に入ってくるやつは、血を吸ってやれ。そんな感じかな?」
「分かった。でも、むやみに血を吸っちゃダメって…。」
「家の中に勝手に入ってくる悪いやつは、吸ってもよし。」
分かったと頷くオニコに留守を任せて、盛弥は大学へ向かった。
様々な連絡事項や、教授からの呼び出しなどが貼ってある学生掲示板の前に着くと、1人の男子学生が盛弥に向かって手を挙げる。彼は、盛弥の高校からの同級生である、狩野恭平。
「おはよ。なんか連絡あったか?」
「いいや、無かった。教室行こうぜ。」
恭平と連れ立って教室へ向かう。教室に入って見回すと、盛弥に気付いて眞利が手を振っている。席は、二つ空いているようなので、恭平とそこへ向かう。ちなみに、彼は盛弥と眞利の関係を知っているので、黙ってついてくる。今日の教科は、日本史。丁度、担当教員の拘りで平安時代をやっている。源平合戦の最初の方だった。盛弥は、隣に座る眞利と目を合わせて頷くと、真剣に授業を受け始めた。いつもは、高校でもやった内容なので、スマホをいじったり周りと話したりしながら受けているのだが、いつもと違う二人の様子に、恭平と眞利の隣に座る沙月は驚いていたが、盛弥と眞利は、目もくれなかった。
授業が終わると、恭平はバイトがあると言って、行ってしまった。
「さて、盛弥は初めてだっけ?この子、私の親友の岡沙月。で、こいつが私の彼氏の高平盛弥。」
眞利が、互いの橋渡し役となって紹介をする。盛弥は、沙月の異様にキラキラした目が気になったが、とりあえず3人でオカルト研究会へ向かった。オカルト研究会の部室は、4年の先輩の研究室が代々使われているらしい。一学年一人程度しかいない為、そんな感じでもいいんだとか。部室?に着くと、早速沙月の相談受付が始まった。
「さて、予約内容によると吸血鬼について知りたいとか?」
沙月は、既にスイッチが入ったようで饒舌に話し始めた。
「そう、吸血鬼。変な事を言うかもしれないけど…吸血鬼を人間に戻す方法とかってあったりする?」
盛弥がそう言うと、それを聞いた沙月の目が一層輝く。
「中々、興味深いね。人間に戻す方法。どうして知りたいの?」
「いや、それはあまり言えないんだけど・・・。」
答えに困って、眞利をチラッと見ると眞利がため息をつきながらも答えてくれた。
「実は、知り合いが吸血鬼を題材にした小説を書こうとしてるんだけど、ネタがないらしくてね。何かないか聞かれたんだけど、私疎いから全然わからなくて。」
眞利は、盛弥よりしゃべりが上手なので、上手く躱してくれたようだ。
「なるほどなるほど。これは、あまり世間に知られていないんだけどね…。人の血を膨大な量吸えば、戻るらしいの。」
盛弥は、は?という心の声が聞こえたような気がした。吸血鬼の特性からして、あまりにも安直過ぎる。
「ちなみに、膨大な量って具体的にどれくらいなの?」
隣で、同じく衝撃を受けている眞利が聞く。
「はっきりとした量は分からないけど、一説によると人間1万人分って話だよ。」
1万!と2人で驚いていると、オカルト研究会の上級生が割り込んできた。
「1万人分っていうのは、結構ハードル高いから実際に戻ったっていう話は少ない。そして、吸血鬼は知性が高めって話だから、人間を襲ううちに罪悪感に苛まれて諦めることも多いと思う。」
その人の言葉を聞いて、そうだよなと思ったのが盛弥の率直な感想だった。
オカルト研究会で、ハードル高めという情報を得て帰路についた盛弥は、眞利と帰りながら話していた。
「どうだった?収穫あった?」
「ああ、ハードル高めかぁ。オニコの覚悟も必要だな。帰って聞いてみるか。」
「そっか。私も協力できることはするから、何でも言ってね。」
「ああ、ありがとう。」
眞利は、意外と協力的らしい。彼女と別れた盛弥は、家に着いた。
「ただいまー。オニコー、晩飯にするぞー。」
玄関を開けると、目の前にあるキッチンで、エプロンをして立っているオニコがいた。
「お帰りセーヤ。ごはんなら作ってる。」
盛弥は、驚いてオニコに駆け寄り鍋の中を見る。そこには、おいしそうな野菜スープがあった。
「これ、どこで知ったんだ?」
「昨日のお昼。セーヤが作っているの見て覚えた。」
確かに、昨日の昼は野菜スープにした。オニコも、生前料理していたと言って、そばで見ていた。しかし、昨日の物とは入っている野菜の種類も違う。一度見ただけで、ここまでアレンジできるものなのか?そう思って、驚いた顔でオニコを見ると可愛い笑顔を返してくる。とりあえず食べてみようと、食卓の準備をして席に着く。いただきますと言って食べ始めると、自分が作ったのとほぼ同じ味がした。自分の味との差は、純粋な味付けだけ。
「オニコ、これすごくうまいな!」
「ほんと!嬉しい!」
彼女の料理の腕に可能性を感じた盛弥は、それから料理をオニコに任せることにした。
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