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求血記  作者: 香双狐
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第二十二話 企みと現実

蚊人(ぶんじん)幹部のブドラと、彼女が使役していた強化体Gを倒した盛弥達。ピンチもあったが、各々が様々な能力を獲得する結果になった。

一方、眞利を操ることに失敗し、撤退を余儀なくされたクザスは、幹部の会議で追及される。現状に不安を怯えた彼女は、自分が生き残るための方法を探る。

そして、盛弥達の元には椎名から連絡が入っていた。オニコを平安時代へ帰すための情報は得られるのだろうか?

 ブドラとクザスという蚊人(ぶんじん)幹部二連戦の数日後。休診日の蘇我医院には、戦いに関係した主なメンバーが集まっていた。盛弥とオニコは、魔力こそカラカラになったが、目立った外傷はなし。眞利も被弾したが、不思議な事に傷はなかった。蘇我曰く、弾の本質が変わっていて、体の内側にしか効果がなかったのではないかとの事だった。そして記録班の彩子と常長は、強化体だけでなく幹部の記録にも成功していた。眞利とオニコを診てもらっている間、奥野が回収した強化体として使われていた人を別室に運んだ。その人は男性で、三十代後半くらいの見た目だった。盛弥達に知り合いはおらず、単なる被害者のようだ。

「なあ、高平。被害者に共通点ってあると思うか?」

気落ちしているところを盛弥が奮起させて以降、前より砕けた態度で接するようになった常長が聞いてきた。

「そうですね・・・。沙月ちゃんに今田さん、それにこの人ってなると・・・正直分からないですね。あと一人がどんな人かも分からないですし。」

この人の身元が分かれば何かわかるかもしれないが、現時点では何とも言えない。男性の体は、蚊人(ぶんじん)に操られた名残か、あちこちに青い線が入っている。所持品は一切無く、それゆえに身元も分からない。盛弥達は、とりあえず戻って記録の分析に入ることにした。

 蚊人(ぶんじん)本部では、コビャが強化体の調整をしていた。すると、彼の部下がやってきてブドラの死を告げた。

「そっか。分かったよ。報告ご苦労。」

部下が下がらせると、強化体の調整を進める手を止め、ボソッと呟いた。

「どうってことないと言ったじゃんか。ブドラの嘘つき。まあいいさ、相手は僕が倒す。」

ふと時計に目をやると、定例会議の時間が近づいていた。

 コビャが会議の場に着くと、トップのリンキと幹部のブゲンとクザスが既に席に着いていた。コビャが席に着くと、リンキが口を開いた。

「では、全員集まったようだな。始めよう。」

その言葉で、場の全員が姿勢を正す。

「皆も知っての通り、ブドラが落命した。これについて、皆に聞いておくことがある。」

リンキは、クザスに視線を移すと彼女に尋問を始めた。

「ブドラが倒された後、その場でそなたの目撃証言がある。これは事実か?」

クザスは、ため息をひとつして答えた。

「ええ。行ったわよ。でも、あの子がいるのは知らなかったわ。」

「ほお。そなたは何をしに行ったのか?」

リンキが突っ込んでくる。クザスは、ため息をもうひとつして答えた。

「作戦変更したのよ。前に強化因子を入れた人間が粘って、言うことを聞かないから、先に2人目を捕獲しに行ったのよ。」

「それで?返り討ちにされたんだ。」

コビャが、ここぞとばかりに煽ってくる。

「クザスが近くにいたなら、ブドラだって助けられたはずでしょ?」

それを聞いたクザスは、カチンときた。しかし、事実だから反論のしようがない。

「知らなかったって言ってるでしょ?計算が狂ったのよ。操れるはずが操れなかった。それだけよ。」

仕方なく言い訳まがいの事を言ってみるが、それで納得する面々ではない。コビャの次は、ブゲンまで口を出して来た。

「その結果、相手が覚醒してしまったと?」

「結果だけ見ればそうよ。想定外なの。」

半分ヤケになって反論していると、リンキが口を開いた。

「クザス。今回は、自身の過失として充分反省する様に。次回の出撃で挽回する事ができれば、帳消しとする。」

「…分かったわ。」

リンキがこう言い出すのは稀である。おそらく幹部でなければ、処刑待ったなしだろう。自分が幹部故の救済措置だと感じたクザスだった。

「それで?何をすればいいのかしら?」

挽回といっても、目標がある方が分かりやすいと思ったクザス。普通であれば、下手に出るところだが、既に拗ねてしまいあくまで上から出てしまう。すると、コビャとブゲンが口々に無理難題を押し付けてくる。リンキは、2人を静めるとこう言った。

「では、現在言う事を聞かないという強化体を使い、対象を撃退してくるがよい。」

クザスは、一瞬ドキリとするがやむを得ず承諾した。

 会議が終わり、自室に戻ったクザスは、沙月が繋がれている牢へ向かった。彼女は燃えている鎖で壁に繋がれたまま、相変わらず虚ろな表情をしていた。しかしクザスを見ると、決して屈していない自分の中にある炎を見せるかのようにこちらをみてくる。クザスは、同じ部屋にある椅子に腰掛け、考えを巡らせた。自分を見る度に屈しない意思を伝えてくる彼女に、もはや自分の炎は通じないのではと思えてくる。流石にここまで抵抗されると、追加の処置を行う気すら失せてきた。

「さて、この子をどうするか・・・言う事を聞かないなら捨てる?それとも返す?でもそれじゃあ、私の安全には繋がらない…この子をうまく使って身の安全を確保するには・・・ん?」

このままでは、間違いなく幹部ではいられなくなる。ブゲンやコビャにこき使われるのはゴメンだ。そんな考えからたどり着いた答えに引っ掛かる。沙月の力と自分が持つ力を計算したクザスは、口角を上げると沙月を繋いでいる牢の前で彼女に向き直った。

 その頃、盛弥の元には彩子から連絡が入っていた。どうやら時空研究所の椎名が、オニコが元の時代に戻る方法の結論に達したらしい。オニコと眞利を連れて椎名を訪ねると、彩子も同席して、椎名による解説が始まった。

「よし、全員揃ったね。それじゃあ、オニコちゃんを平安時代に返す方法について説明しよう。と、言いたいところだが・・・。」

椎名はここで詰まると、こちらを窺って申し訳なさそうに続けた。

「すまない。結論から言うと、いい方法が見つからなかった。」

え?という顔で固まるオニコ。方法が見つからないのは、盛弥達も同じ。しかし、専門家が言うのだから、余程の根拠があるのだろうと盛弥は思った。

「この時空研究所では、タイムマシンの研究も行っていてね。その担当者にも聞いてみたんだけど、どうやら実用には程遠いらしいんだ。それと、オニコちゃんはこっちへ来る前に一度死んでいるんだよね?」

椎名がオニコに確認を取ると、小さく頷く。

「ということは、人生が一度終わりを迎えていることになるね。そうなると、死ぬ前に転移するのと違って、戻れないのでは?とも思ったんだ・・・分かるかい?」

椎名は、もう一度オニコに確認する。オニコは、頷いた後で質問した。

「もし、この時代で人間に戻ったら、そのまま生きていける?」

椎名は、少し考えてから答えた。

「それは大丈夫じゃないかな?むしろ、存在を証明しやすくなるから、生きやすいかもしれないね。」

それを聞いたオニコは、少しだけホッとしたようだった。

 時空研究所を後にした盛弥達は、オニコの心情も考えて帰宅する事にした。最寄りの駅まで、眞利がオニコに付き添っていたが、用事があるからと駅で別れた。帰ってからは、平静を装っていたオニコだったが、その日の夕方に夕日に照らされた彼女を見た盛弥は、どこか寂しそうな雰囲気を感じた。しかし、寝る前に要求してきた添い寝を承諾した筈が、夜中に目覚めるとオニコの姿がない。窓の方に目を向けると、満月を見つめている彼女の姿が見えた。震えているところを見ると、泣いているのだろう。

「清盛様・・・一族の皆様・・・どうやら徳子は、皆様への恩返しが叶わぬようです…。この不幸者をお許しください・・・。」

震える声で、月明かりの中、語りかけている姿はとても幻想的だった。盛弥は布団から出ると、オニコの肩をそっと抱いて言い聞かせた。

「誰も不孝者だなんて思わないと思うぞ。死んでも尚、恩返ししたいって思い続けてたんだ。帰れなくても、不孝者にはならないよ。それに、この時代でも生きてるよって、報告するだけでも違うんじゃないか?」

それを聞いたオニコは、盛弥に体を預けると、我慢していたものが溢れ出すように泣き始めた。

お読みいただきありがとうございます。

本作のPVがあと少しで500突破します。お読みいただいた皆さん、情報を拡散していただいた皆様、ありがとうございます。

今後も更新しく予定ですので、宜しければ引き続きお付き合いください。よろしくお願いします。

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