第二十一話 炎の弾丸
蚊人幹部が使役する強化体の調査のため、パトロールに出発した盛弥達。途中で遭遇したブドラと強化体Gを相手に、再び戦闘が始まる。オニコに強化体Gを任せ、ブドラと戦うことにした盛弥と奥野。奥野も魔法が使えるようになり、ピンチを切り抜けた2人は見事にブドラを下す。しかし、次なる相手が彼らの元に迫っていた。更に、狙撃担当の眞利にもピンチが訪れる。
灯りが街灯のみの夜の駅前広場に、黄色い閃光が走る。連続して現れるその線は、オニコが強化体Gに近づくための加速を表している。手を出させないように連続してダメージを与えるものの、相手の耐久力が高くイマイチ決めきれない。
「なんで?こんなに斬ってるのにどうして耐えられるの?」
オニコがどうしたものかと悩んでいると、盛弥の声が聞こえてきた。
「オニコ!俺の魔力、全部持ってけ!」
ふと見ると、どうやら盛弥達は幹部を1人倒したようだ。状況を理解したオニコは、一度強化体Gと距離を置く。
「セーヤの魔力をたくさん使っていいなら、あれが出来るかな?」
オニコは、大太刀を構えて呼吸を整えると、新技の応用に出た。助走をつけて跳び上がると、強化体Bの上空から魔力を放出している剣を振り下ろしながら、重力に任せて落下斬りする。
「稲妻吸血!」
斬っている間は、剣から出し続ける魔力で切れ味を増しながら、相手の魔力を奪う。それを、稲妻のスピードでやるので、回避も出来ない。斬り終わる頃には、相手の魔力は残っておらず、即戦闘不能になる。
オニコに斬られた強化体Gが、崩れ落ちるのを眺めていた盛弥。オニコに大部分の魔力を持っていかれたが、武器の維持分は何とか残っている。
「遊馬。あの人回収できるか?」
「あ、行ってきます。」
奥野に回収に向かわせると、オニコが駆け寄ってきた。
「セーヤ、大丈夫?かなり持ってっちゃったよね?」
盛弥は、オニコの頭に手を置いて答えた。
「大丈夫だけど、次の敵が来たらやばいから、早く帰ろう。」
しかしそう言った時には、既に新たな敵の姿が、視界に入っていた。
左胸のポケットに深紅に輝く鳥の紋章をつけ、不敵な笑みを浮かべながら、盛弥達の方へ歩いていく。
「クザス…!」
高所にある駅舎から、狙撃のタイミングを伺っていた眞利。適宜オニコの援護をしていたが、場所がバレるのも得策ではないので、手数は少なかった。盛弥達の撤収に合わせようと様子を見ていると、親友を奪った憎い相手が出てきた。スリングショットのゴムを引き絞った右手を離さないように堪えながら様子を見ていると、盛弥が離脱しオニコだけが残るのが見えた。すると、スマホが盛弥からの着信を伝えた。ハンズフリーで応答する。
「どうしたの?右手を抑えるのに必死なんだけど?」
「眞利、俺が行くまで絶対に撃つな。オニコが時間を稼いでくれるから、少し待ってくれ。」
眞利としても、場所がバレて操り人形になるのは嫌だ。ここは、我慢して盛弥に従う事にした。
オニコは、盛弥が離脱したのを確認すると、前から歩いてくるクザスを見据えた。盛弥は離脱する前にこう伝えていった。
「オニコ、ここは任せてもいいか?」
「うん。セーヤは魔力カラカラだから、私がなんとかする。」
「そんなに気負わなくていい。俺は、眞利の援護に行く。合図に一発撃つから、そこまでは、1人でなんとか頼む。もし、クザスが眞利に狙いを絞ったら、追っかけて合流だ。沙月ちゃんがいるかもしれないから、気をつけてな。」
オニコは、首を縦に振るとクザスに集中した。盛弥は、強化体の回収を終えた奥野に声をかけて離脱していった。
「フフッ。あなたは、逃げないの?」
クザスが余裕のある態度で尋ねてくる。オニコは、大太刀を構えると瞬時に加速して距離を詰めた。そのまま、無言で斬りつける。
「話ぐらいしたらどうなの?」
しかし、攻撃を交わしたクザスは、話し続ける。
「話なんて、ない!」
盛弥の信頼と、眞利の悔しさを知るオニコは、クザスを拒絶する。
「そう。じゃあ、消し炭にしてあげるわ!」
クザスは、腰に下げた双剣を引き抜くと振り下ろされる大太刀を受ける。クリアな赤でキラリと光る刀身からは、炎が出ている。何かを感じとったオニコは、後ろに飛び退く。
「あら?よく分かる子ね。この剣に触れると、一生消えない炎が身に刻まれるわ。燃えながらその身を蝕み、熱に侵されながら死ぬ事になるわ。」
オニコは、攻撃を避けながら行動を制限された戦いを強いられる事になった。
盛弥が眞利のところに着くと、広場を凝視しながら、悔しそうな表情をしていた。
「ねぇ盛弥。撃っていい?もう我慢出来ない。」
「…分かった。撃ったら即逃げるぞ。」
盛弥の言葉に頷くと、スリングショットに弾をセットしてゴムを引き絞る。クザスが、オニコに集中している隙を狙って、ゴムを押さえている右手を離す。発射された弾は、猛スピードでクザスに迫る。彼女の狙いは百発百中。クザスに吸い込まれるように飛んでいく。しかし当たる寸前でガードされ、炎を付与されて進行方向を真逆に向けられた。
「見つけた。」
クザスはそう呟くと、弾丸を追って近づいてくる。オニコがそれを追い、盛弥は眞利の手を引いて全力で走る。しかし走り出すのが遅れたせいか、炎の弾丸が眞利に当たってしまった。途端に盛弥が繋いでいる手に抵抗がかかり、思わず手を離してしまう。駅舎の外では、オニコがクザスを止めているのが見えた。
「眞利!」
盛弥が近寄ろうとした時、俯いて立ち尽くしていた眞利が、目を赤く光らせて顔を上げた。沙月が操られた時が思い出されて、顔が引き攣る盛弥。
「フフフッ!ハハハハハッ!」
離れたところから聞こえる、してやったりという高笑いに怒りしか込み上げてこないが、眞利がスリングショットに弾をセットした事に気づいた盛弥は、少し身構える。すると、自分を見つめる彼女の瞳が、強く語りかけようとしているのを感じた。それは、「大丈夫。私に任せて。」と言わんばかりの視線だった。盛弥が恐る恐る頷くと、眞利がこちらに向かってスリングショットのゴムを引き絞った。慌てる盛弥に構わず、セットした弾に炎を点す。
「火炎弾。」
即座に回れ右をして放った炎の弾は、クザスとの間にいるオニコを避け、クザスに命中する。眞利は、クザスの弾丸に当たった時に、以前つけられた印もあり確かに操られた。しかし、沙月への想いとクザスへの復讐心が上回り、戻って来れたのだった。
「チッ!どいつもこいつも…」
沙月の代わりに眞利を操ろうとしていたクザスは、またもや計画を阻止されたせいか、高飛車な態度も影を潜め、舌打ちをしてどこかへ行ってしまった。
お読みいただきありがとうございます。
突然ですが、書籍化された作者の方々の作品を読んだり、アニメ化された作品を見たりして、物語の構成や展開の思いつきに感心しているこの頃です。自分もそんな物語が書いてみたいと始めましたが、改めて皆さんのすごさを感じています。
今後もそんな物語を目指して活動していこうと思いますので、応援よろしくお願いします。




