第十八話 次の一手
今までに出会った蚊人の幹部と使い魔である強化体から、四神と麒麟に当たる存在がいると仮定した盛弥達。予想するだけでも気が滅入る彼らだったが、対抗策として戦力の追加より個々の戦闘面での成長を選択した。果たして、どのような成長を考えるのか?そして盛弥の元にオニコの血液の分析結果が出たとの連絡が入る。どのような結果になっていたのだろうか?
翌日、盛弥が目覚めると、隣でオニコが幸せそうな寝息を立てていた。
「セーヤ…ダメだよぉ…ムニャァ…」
一体どんな夢を見ているのか分からないが、彼女の可愛さ故に頭を撫でてしまう。オニコを起こさないように布団を出て、眞利に電話をかけてみる。昨夜は、オニコとの約束もあり充分そばにいてやれなかった。寝かせるだけ寝かせたが、その後何事もなかったか気がかりだったので電話をかけてみた。
「もしもし、どうしたの?」
「あ、いや、昨日は大丈夫だったかなと思ってさ。」
もう少しぐったりしているかと思ったが、意外と元気そうな声に安心する。
「体調が元気そうならいいんだけど、どう?」
「あーそれね。さっき起きたんだけど、頭がガンガンするの。寝込む程じゃないんだけど、ちょっと辛くて・・・。」
「分かった。今から行くよ。朝ご飯そっちで食べてもいい?」
眞利から了承の返事をもらうと、電話を切ってオニコを起こすことにした。オニコは、眠そうな顔で起きてきたが、盛弥にくっついて眞利の家に着く頃にはすっかり覚醒していた。部屋に入ると、ベッドに横になった眞利が苦しそうにいらっしゃいと言ってくれた。
「大丈夫か?二日酔い?」
「うん・・・飲みすぎたみたい・・・。昨日はありがとね。」
盛弥が眞利の面倒を見ていると、オニコがご飯を作ってくると言ってキッチンへ向かった。電話では寝込む程では無いと言っていたが、盛弥を心配させない為だと感じた彼は、手を眞利のおでこに手をあてて熱を診ながら『しょうがねぇなぁ』と呟いた。聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で呟いたせいか、眞利には聞こえなかったようで、こちらを伺うように視線を向けている。熱はなさそうなので、少し待つように伝えてオニコの元へ向かった。
オニコと共に、お粥や蜆汁等合いそうなものを作って持っていくと、眞利は美味しそうに食べてくれた。心なしか、気分も良くなった様に思える。朝食を食べ終え、話せる程度には回復した眞利が、こんな事を口にした。
「この前、戦闘面での個々の成長って言ってたけど、具体的にどうすればいいのかな?」
「とりあえずは、今ある技を磨いていく感じだけど、それでカバーできないところは、やっぱり新技かな?」
「新技かぁ…盛弥はどんなのがいい?」
眞利が、自分の理想に想いを馳せながら聞いてくる。
「そうだな。今は近距離中心の戦い方だから、弾丸とかあれば幅も広がると思うな。オニコはどうだ?」
オニコは、話を聞きながら食べていた朝食を飲み込むと、『やっぱり』と切り出した。
「やっぱり、私には奥義が足りないと思う。セーヤがやってるゲームの必殺技的なやつ。動きでついていけても、決めきれなかったらダメだから。」
確かに、オニコが完璧に相手を倒したのは出会った頃の最初の戦闘くらいだ。オニコも人知れず悩んでいたのかと知る盛弥だった。
「私はなんだろう?もっと精度を上げるとか、距離を伸ばすとかじゃないし…。」
眞利が、自分のやりたい事について悩んでいると、盛弥のスマホが着信を知らせた。画面には、蘇我院長と表示されている。
「もしもし高平です。……はい、……分かりました。それでは、後日伺います。ありがとうございます。」
電話を切ると、眞利とオニコがこちらを見ていた。
「蘇我院長。オニコの血液の分析が終わったから説明したいってさ。」
そこで後日、オニコと共に説明を聞きに行く事にした盛弥は、日程を空けるために課題を終わらせようと一度取りに帰り、戻ってくるのだった。
そして後日。オニコと共に家を出た盛弥は、電車に乗って蘇我医院へ向かった。到着すると、休診日で人気はなかったが入り口は開いていた。
「どこにいるのかな?」
オニコが後ろから聞いてくる。
「大体電気がついてそうだけどな。」
そう言ってあまり広くない院内を奥へ向かうと、処置室に灯がついていた。ノックをして開けると、中では蘇我がよくは分からないが研究っぽい事をしていた。彼は、こちらに気づくと、時計を確認した。
「おや?もうそんな時間かい?よし、診察室へ行こう。」
蘇我について診察室へ行くと、医師と患者の位置関係で椅子を勧められる。座ったところで、蘇我が説明を始めた。
「オニコちゃんの血液なんだけど、非常に複雑だったよ。恐らく、様々な血を吸っているからだろうけど、DNAが特定できなかった。でも、ある程度特徴が分かっている生き物と似た部分を除外していくと、特徴的な部分がざっくり2つあった。」
盛弥は、説明を聞きながら短期間で数十億といわれている遺伝子情報を分析できる人とは?というのが非常に疑問だったが、突っ込むのは野暮だと放置した。
「その2つが、吸血鬼と蚊人の特徴だと僕は思う。ここまでいいかい?」
蘇我がこちらを窺ってくる。彼が非常に分かりやすく説明してくれているので、話している内容は理解できる。オニコと共に肯定すると、続きが始まった。
「実は、僕は独自のルートで蚊人の血液を入手し、研究済みなんだ。ということは、人と蚊人の違いも分かるし、人と吸血鬼の違いも分かるんだ。」
唐突な衝撃スクープとそこからの展開に、理解が少し遅れる。
「えーと、ということは…薬も作れる?」
盛弥が恐る恐る聞くと、ご名答と言わんばかりの笑みが返ってきた。
「理論上はそうなるね。でも、ここからは薬屋の腕次第になるから保証はできない。それでも依頼してみるかい?」
盛弥がオニコの様子を伺うと、やる気でいる様なので、依頼する事にした。
「それと相談なんですけど、僕ら、蚊人に攫われて手駒に使われている人たちを助けたいんです。その薬って、使えたりしますかね?」
盛弥が追加で質問すると、蘇我はふむと言って考え込んだ。
「それはつまり、人間という事でいいのかな?」
「それが分かりません。動きと容姿は、人間ではありません。でも、確かに人としての温かさみたいなものは感じるんですよ。それに、知り合いが被害に遭っているのでその場合はわかります。」
蘇我は少し考えると、結論は出ないがと提案をしてきた。
「話を聞く限りだと、なんとも言えない。せめて、容姿を見せてくれないかい?動きもあるといいね。」
盛弥とオニコは、オニコを人間に戻すための薬は作れる事と、強化体にされている人達に効くかは分からないので、容姿と動きの情報が欲しい事を情報として持ち帰った。
帰宅した2人は、強化体の容姿と行動を記録する手段について考え始めた。
「強化体の容姿と動きか…。なんか記録する方法あるかな?」
盛弥がオニコの様子を伺うと、申し訳なさそうに口を開いた。
「私は正直思い浮かばないよ。この時代のハイテク技術で何とかならないの?」
ハイテク技術ねぇ…と考える盛弥。その時、オニコが閃いた。
「あっ!ねぇセーヤ、あれは?セーヤのスマホの後ろについてるやつ!」
オニコが言っているのは、恐らくカメラだと察した盛弥は、灯台下暗しと納得しスマホを取り出す。
「カメラね。確かにいいな。よし、これで行こう。」
手段は決まった。しかしそうなると、次の問題が見えてくる。
「でも、誰が撮るんだ?俺らは戦わなきゃだし…」
盛弥は、仲間の顔を思い浮かべてみた。その中で、カメラと結び付きそうな人を探す。
「彩子さんか、怪斗さんかな?」
答えとして出てきたのは、フリーライターで取材もこなす彩子や、オカルト研究会のフィールドワークで使っていそうな常長だ。自分の回答に納得した盛弥は、2人に協力を仰ぐべく連絡を入れるのだった。
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