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求血記  作者: 香双狐
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第十七話 敵状推察

水の弾丸を操る蚊人(ぶんじん)幹部のブドラと彼女が使役する強化体B。この2人と対峙した盛弥達は、連携によってブドラを追い詰めるが、盛弥が大ダメージを受けた上に逃げられてしまう。盛弥を蘇我に見てもらうことにした眞利とオニコは、眞利の家に盛弥を運び込んで一晩過ごすことにした。そして、一晩を共に過ごして仲良くなった2人は、盛弥達と敵戦力の分析に入るのだった。

 眞利が翌朝目覚めると、美味しそうな香りが漂う中、同時に上機嫌そうな鼻歌が聞こえてきた。隣に寝ているはずのオニコがいない事から、主が彼女だと判断出来た。部屋から出ると、ソファーで横になっている盛弥が気付いて手を振ってきた。

「おはよ、眞利。昨日はありがとうな。」

眞利の目からは、自然と涙が出てきた。昨日は、何とか助けようと必死で涙は一滴も出なかったが、盛弥を失う怖さは常にあった。気付けば足が勝手に盛弥のもとへ向き、彼の首に腕を回して泣きながら唇を重ねていた。盛弥が『ん〜』と呻いていたが、今は知らないふりをする。眞利が夢中で吸いついていると、朝御飯を作り終えたオニコが鍋を持ってやって来た。

「わーぉ。朝から元気だね。」

その声でふと我に帰った眞利は、盛弥から離れると恥ずかしさで真っ赤になった。すると、盛弥が腕を伸ばして頭を撫でてきた。

「心配かけてごめんな、眞利。朝御飯食べよ?」

眞利は頷くと、痛みに耐えながら起き上がる盛弥を介助して食卓に座った。今朝は、オニコ特製の野菜スープのようだ。

 食べ終わると、盛弥に今日の日程を説明した。ひとまず今日は、蘇我医院に行くのが先決なので、準備をして家を出た。盛弥の案内で蘇我医院に着くと、患者は居らずすぐに診察室へ通された。

「やあ、高平君。今日はどうしましたか?」

盛弥が、怪我をした状況を詳しく説明すると、目の色が変わった。

「つまり、蚊人(ぶんじん)に負わされた傷ということかい?」

盛弥が肯定すると、奥の部屋で傷口を確認し適切な処置をしてくれた。その間、協力の為の条件であるオニコの血液検査も行ったようだ。手当てを終えて戻ってくると、涙を流しているオニコを眞利があやしている光景が目に入った。

「そんなに仲良かったっけ?」

盛弥は、彼女らが同じ布団で過ごした一夜を知らないので、驚きが大きい。オニコの検査結果は、後日連絡してもらえる事になった。  

 蘇我医院を後にした3人は、連絡してきた奥野も含めて、盛弥の家で敵戦力の分析に入った。

「とりあえず、今までに出会った敵をまとめよう。」

盛弥が机の上に大きめの紙を広げ、情報を書き連ねていく。

「まずは、幹部のクザスね。あいつには、さっちゃんを奪われたっていう許しがたい事実があるわ。」

眞利が、怒りのこもった声で言う。相当な怒りを抱えていることを表現した彼女に続いて、奥野も口を開いた。

「先日、高平さん達が遭遇したっていう今田さんを使役してた岩使いも、俺的には許しがたいです。」

「そうだな。昨日会った水の弾丸使いと合わせて、幹部が恐らく3人と沙月ちゃんや今田さんみたいな幹部の使い魔的なのが確実に2人、実質3人ってとこか。」

盛弥が紙に書きだしながら、今まで出会った蚊人(ぶんじん)の中の強敵を挙げた。その場の全員が頷いていたが、眞利がふと気になった疑問を口にした。

「その幹部ってさ、まだ増えたりするの?今まで3人出会ったけど、1人も倒せてないから複数相手もありうるし、その場合ってかなりきつくなるよね?」

確かにと考えこんでしまった盛弥だが、あることに気付く。

「そういえば、幹部の左胸ポケットにあった紋章って何だったっけ?」

「確か、クザスは鳥みたいな感じだったと思う。それから、岩使いが亀だった気がする。」

オニコが記憶を遡って答える。盛弥は情報を紙につけ足していく。

「昨日のは確か…竜だったか?」

そこまで盛弥が並べると、眞利が『あっ!』と声を出した。

「四神だよ!きっと!」

「四神って、方角とかに関係あるやつ?」

「そう!玄武に朱雀、青龍に白虎のあれ!」

眞利が、謎解きが分かったようにテンション高めに話すと、今まで難しい顔をしていたオニコが、自分の記憶と合致したいう顔になった。

「それなら私も聞いたことある。父上が教えてくれた。」

場の全員の理解度が一致したところで、奥野がその先を続けた。

「となると、足りないのは白虎にあたる幹部って事ですか?」

という事は、幹部があと1人追加され、使い魔である強化体ももう1人追加される事になる。盛弥が、更なる追加戦力に唖然としていると、眞利が更なる追い討ちをかけてきた。

「麒麟がいるかも…?」

オニコが『麒麟?』と聞くと、眞利が先を続けた。

「仮に四神になぞらえているとしたら、その4人がボスっていうのはない可能性もあるよ。その上にボスである麒麟がいるかもしれない。」

「四天王に加えてボスかぁ。ありがちなゲームかよ。」

盛弥の頭では、情報の重さに理解の拒否が働いていた。

「悪い、休憩入れよう。対策まで頭回らないな。」

「じゃあ、お昼にしよう。何食べたい?」

オニコがハンバーグというので、お昼はハンバーグという事になった。女性陣がキッチンへ向かうと、奥野が盛弥をつついて小さな声で話してきた。

「俺は居ていいんですか?」

「いいよ。2人とも料理上手だから、期待して待ってな。」

そして、ハンバーグと付け合わせのサラダが出来上がり、みんなで食べた後に再び対策会議が開かれた。

「相手が増えるなら、こっちも戦力を増やすべきかな?」

眞利がそう心配するが、盛弥としては人員的な面の問題はないと思った。

「単純な考えだけど、今の時点で4人いるから、強化体と幹部を順番に倒すとすれば、頭数的には大丈夫だと思う。ただ、個々の成長をどうするかだけど。」

現時点では、個々の実力を伸ばさないと到底太刀打ち出来ない。その時、実力のなさを自覚してか、奥野がおずおずと手を挙げた。

「あのー、実力を伸ばすっていうのは、地道にやっていくとして、その先を聞いてもいいですか?」

「その先?」

「強化体、でしたっけ?使い魔的な感じの人達は、助けるんですよね?」

奥野からしたら、好きな人を奪われている。殺されてはどうにもならない、という心配が急に込み上げてきたのかそう聞いてきた。当然、親友を奪われている眞利も真剣な顔で頷いている。

「もちろん助けるさ。だけど、現時点じゃどうしようも無い。今、医者の先生がオニコの血液を調べてくれてる。そこから薬が作れるかもしれないから、その薬が使えるかどうかだな。」

という事で、とりあえず蘇我院長の検査結果待ちという事になった。結果が出るまでは、各自鍛錬を続けていく事にして、その日は解散になった。

 後日、大学に出てきた盛弥は、狩野と共に教室の席に座っていた。

「なあ盛弥、最近眠そうだよな?ケガも多いみたいだし、大丈夫か?」

夜のパトロールに出ている事もあり、寝る時間はオニコが来る前より確実に遅くなっている。翌日に授業がある日は意識してはいるものの、負傷して手当てする時間も入れると、日付が変わるのは普通になっていた。加えて、数回授業を欠席した事も、恭平は気になるのだろう。

「最近、夜忙しくてな。あんまり寝れないんだよ。」

そう答えてから、まずいと思い恭平の顔を見ると、明らかに勘違いしてる顔だった。

「おまっ!心配してんのに、彼女いますアピールかよ!?」

あまり怒っているようには見えないが、恭平の勢いに驚いた盛弥は、慌てて陳謝する。

「悪い悪い。そういう話じゃねえって。」

すると、少し笑いながら恭平が返してきた。

「分かってるって。お前、そういうタイプじゃねえもんな。」

その時、盛弥の隣に眞利がやってきた。

「おはよ。2人で楽しそうに何の話?」

「おっ、きたきた。こいつ、心配してやってんのに眞利ちゃんの自慢ばっかしてくんの。夜、忙しいんだって?」

「おい!」

恭平が茶化したように言うが、盛弥が声のトーンを下げて怒りを表すと、慌てた恭平が前言撤回した。眞利は、満更でもなさそうな顔で苦笑していた。盛弥は見えていなかったが、見えていた恭平の心中は若干引いていた。

「このカップル、マジかよ…。」

 その日の授業が一通り終わると、眞利がご飯に行こうと言うので、2人で駅前の居酒屋にやって来た。オニコにその旨を伝えると、あまりいい反応ではなく、添い寝を約束させられた。ご飯というより、飲みに来たペースで最初からお酒を飲んでいく眞利。盛弥が一応嗜めるも、あまり聞く耳を持たない。彼女の様子に介抱の覚悟を決めた盛弥は、少量の飲酒に留めた。しばらくすると、大分酔いの回った眞利が人目も憚らずに甘えてきた。

「盛弥ぁ。ギュッてして?」

隣に座る盛弥の胸に頭を預け、甘えた声を出してくる。彼氏としては、この上なく幸せな時間ではあるが、彼女のふらつき具合と突き刺さる周りの視線を考えて、早めに勘定をして店を出た。眞利の家まで肩を貸しながら送る。駅からは遠くないので、歩いて5分程度で着いた。ふらつく眞利の代わりに合鍵で鍵を開け、リビングのソファーに座らせる。その時、眞利が座る勢いのまま盛弥の腕を引く。そのまま流れでソファーに体を投げると、眞利が抱きついてきた。

「今日は、帰さないよぉ〜。」

居酒屋では周りの視線もあり、相手をしてやれなかったので、頭を撫でる。

「それは困るな。オニコが待ってる。」

オニコの名前を出すと、少しムッとした顔で顔を近づけてきた。そのまま、私だけを見てとばかりにキスをされる。お酒が結構入っているせいもあり、なかなか解放してもらえない。仕方なく無理矢理離すと、頭を盛弥の胸あたりに置き、手を背中に回して寝てしまった。

「おいおい、マジかよ。流石に布団で寝ろって。」

起こそうと揺するが、なかなか起きる気配はない。仕方なく抱き抱えると、寝室のベッドに寝かす。布団を掛けてやると、幸せそうに寝息を立て始めた。

「ったく。酒が入ると、本当に甘えん坊になるな。ま、可愛いからいいけどな。」

寝ている彼女を撫でながら静かに言うと、部屋の鍵を閉めて帰宅した。

お読みいただきありがとうございます。

最近は、本作を気に入っていただけた方が増えてきたようで嬉しい限りです。ありがとうございます。引き続き、気に入っていただけた方はブクマや評価等していただけると嬉しいです。

それでは、今後とも鋭意更新していきますのでよろしくお願いします!

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