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求血記  作者: 香双狐
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第十五話 オニコの過去

時空研究所の椎名時駆、蘇我医院の蘇我生斗の2人がオニコを人間に戻し、平安時代に帰すために協力してくれることになった。そして、パトロールメンバーにもオカルト研究会1年の奥野が加わる。徐々に協力者が増える中、椎名との協力条件であるオニコの事情聴取の日がやってきた。オニコの口から語られる彼女の過去とは?

 盛弥は、オニコを連れて時空研究所の岩壁の前に立っていた。数日前、椎名による事情聴取の日程調整をしてくれていた彩子から、封筒に入った手紙が届いた。

『こんにちは。椎名先生との会議の日程が決まったのでお知らせします。私は、仕事の予定が入って行けそうにないので、研究所に入る時は同封の入館証を入り口と受付で提示してください。この手紙を受け取ったら、メール下さい。海藤彩子』

この文面と、日付が手書きで便箋に書いてあり、時空研究所の入館証が盛弥の名前で同封されていた。受け取りのメールを送信し、オニコを連れてここまで来た盛弥は、前回来た時に彩子がやったように入って行った。オニコは、珍しいものを見るように驚いていた。受付で椎名への取次を頼むと、研究室へ行くように言われた。これもまた、前回と同様に部屋へ向かい、ドアをノックする。『どうぞ』という声が聞こえると、オニコを連れて中へ入る。すると、机に座って待ち構えていた椎名がいらっしゃいと出迎えてくれた。

「よく来たね。そちらがオニコちゃんかな?」

椎名は、伺うような表情を向けて来た。すると、オニコが盛弥の後ろで口を開いた。

「オニコです。よろしくお願いします。」

盛弥が見た彼女の表情は、真剣なものだった。椎名はにこやかに笑うと、前回同様座るように促し、話を始めた。

「それでは、まずは海藤君から聞いているオニコちゃんの情報の確認をしたいんだがいいかね?」

椎名は、盛弥とオニコの了承を確認すると話し始めた。

「まず、オニコちゃんは吸血鬼であってるね?」

オニコが頷く。

「そして、平安時代末期から転生してきたんだね?」

もう一度オニコが頷く。

「よし、分かった。じゃあ、辛いかもしれないけど転生した時の事を教えてくれるかな?」

椎名は、優しい口調でオニコに語りかける。オニコは、息をひとつ吐くと話し始めた。平氏一族の館に仕えていたこと、徳子(とくこ)という名前であったこと、そして屋島の戦いで犠牲になり、海に落ちて傷口からの出血多量で死んでしまった事をゆっくり話していった。椎名は、時折メモをとりながらオニコの話に聞き入っていたが、最後まで聞き終わると盛弥に対して質問した。

「これは、死に方が転生に影響しているという事でいいのかな?」

「俺の中ではそういう結論です。」

椎名は、分かりましたと言うと、もう一度オニコに質問し始めた。

「じゃあ、なぜ平安時代に戻りたいのか聞いてもいいかい?」

「私の両親は、播磨国で反物屋をしています。しかし、父が肩代わりした借金が嵩んできて、私は平氏一族の御屋敷に奉公しながら仕送りを続ける事にしました。一族の方々は、そんな私を気にかけてくださり、一介の侍女にすぎない私に良くしていただきました。その御恩を返したいのです。」

オニコがそこまで話すと、椎名はそうかというように頷き、更にオニコに質問した。

「ところで、仕えていた時の棟梁の名前は覚えているかい?その頃は確か、清盛の子供たちの時代だったと思ったけど?」

「清盛様亡きあとは、宗盛様が率いていらっしゃいました。」

それを聞いた椎名は、必要な情報が揃ったのを確認すると盛弥にこう伝えた。

「オニコちゃんを帰してあげられるかは、もう少し調べてみよう。分かったら連絡するからしばらく待っていてくれないかい?」

盛弥が了承すると、前回同様昼食代をもらった。

 盛弥は、昼食を摂りながらオニコに今日の事を聞いてみた。

「なあオニコ、椎名さんはどうだった?」

オニコは、オムライスを口いっぱいに頬張っていたが、それを飲み込んでから答えた。

「うーん、思ったより優しかった。私の事を調べようっていう人だから、もっとゲスイ人かと思ったけど。」

それを聞いた盛弥は、オニコにも自分と似たような懸念があると分かって安心した。しかし、顔に疲れが出ている事が気になった盛弥は、帰りに寄り道して帰ることにした。

「オニコ、帰りにどっか寄ってく?」

オニコは、顔を上げると笑顔で頷く。その顔を見た盛弥は、ひとまず安心して昼食を食べ終えるのだった。

 時空研究所を後にした盛弥とオニコは、ひとまずバスに乗り込んで駅へ向かった。オニコは、バスに乗っている間、盛弥の腕にしがみついていた。駅に着くころにはリラックスできたようで、すっきりしたような顔をしていた。

「じゃあオニコ、どこ行く?」

盛弥がそう聞くと、オニコは少し考えてから閃いたように反応した。

「そうだ!アクセサリーが欲しい。」

アクセサリー!?と少し驚くが、オニコの説明が入った。

「前ね、マリが付けてたイヤリングが可愛いと思ったの。でも、どこで売ってるかとか聞けなくて・・・。」

「それって、あれか?丸いやつ?」

オニコが頷く。それは、以前盛弥が眞利にプレゼントしたものだった。眞利ということに引っかけて、鞠の形をしたイヤリングを誕生日祝いにプレゼントしたところ、気に入ったのか日常的に着けるようになったのだった。

「それは、俺があげたやつだけど、このへんでは売ってないかな。」

盛弥がそう言うと、オニコは『えっ』と驚きと少しのこちらを見つめている。その顔を見た盛弥は、しょうがないかと思い、ある提案をした。

「分かった。同じものじゃないけど、オニコ用のを買ってやるよ。」

盛弥は、オニコの手を引いて駅前商店街の小物雑貨屋に入った。眞利に買ったときは、少し値段の張るやつを買ったのだが、生憎貧乏学生にもう一度買うようなお金は残っていなかった。オニコには、少し悪いかと思ったが、彼女は店の雰囲気や商品などを気に入ったらしく、笑顔で店内を見回っていた。改めてオニコの笑顔を見た盛弥は、その可愛さに少し見惚れるのだった。しばらくするとオニコが、黄色い花があしらわれたブレスレットを持ってきた。

「これとか、どう?」

「おお。いいんじゃないか?可愛くて似合ってる。」

本当!?と嬉しそうに笑うオニコは、これにすると言ってそのブレスレットを購入した。

 店から出ると、商店街のメインストリートの奥から悲鳴が聞こえると同時に、数人の人が走って逃げてきた。オニコの様子を伺うと、周囲に意識を集中させていた。

「セーヤ、蚊人(ぶんじん)がいる。行こう。」

オニコはそう言うと、商店街の奥に向かって歩き始めた。盛弥が後を追っていくと、まだ暗く成りきらない時間にもかかわらず蚊人(ぶんじん)が行き交う人々を襲っていた。オニコは、飛び上がってから腰のクナイを引き抜くと、3体いる蚊人(ぶんじん)のうち1体めがけて8本全てのクナイを投げつける。8本が相手に刺さり、1体が苦しんでいる間に背中の大太刀を抜いて、他の1体を着地と同時に攻撃する。盛弥は右手に片手剣を投影すると、オニコがマークしていない残りの1体に斬りかかる。オニコは、攻撃した1体を造作なく倒すと、動きを封じていたもう1体に標的を変更する。その間に盛弥は、相手から繰り出される針の攻撃をいなしながら、オニコがやってくるまでの時間を稼ぐ。しかし、まだまだ未熟な戦い方のため、次第に押され始める。徐々に回避が間に合わなくなった時、オニコが敵2体の延長線上に位置取る。盛弥がピンチだと分かると、再びどこからともなく稲妻を浴びて力を貯める。

「雷迅剣!!!」

オニコが地面を蹴ると、稲妻の勢いで目の前の敵を切り裂き、そのままの勢いで盛弥に迫るもう1体も切り裂いて倒す。

 オニコが倒した蚊人(ぶんじん)の吸血をする間、盛弥は周りを見渡す。しかし、そこそこの数いた人たちは、全員逃げてしまったのか見当たらない。盛弥は、負傷した人たちの安否が気になったが、その場にいないということは逃げられたのだろうと推測した。眞利と奥野に連絡を入れて、急遽商店街周辺のパトロールをすることを伝える。2人ともすぐに駆け付けるとのことだ。ちょうど吸血の終わったオニコに伝えて、休憩しながら待つことにした。待っている間、オニコがブレスレットを着けたいと言い出したので渡すと、左手につけてお守りのように大事そうに手を当てていた。やがて眞利と奥野がやってくると、通常通りのパトロールに出発し、周辺に潜んでいる蚊人(ぶんじん)を掃討したのだった。

お読みいただきありがとうございます。

先日、本作のPVが300を突破しました。今までに読んでいただいた方、ありがとうございます。今後とも随時更新予定ですので、宜しければお付き合いください。

また、評価やブクマ等も引き続き募集中ですので、宜しければご意見等お聞かせ下さい。

今後ともよろしくお願いします。

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