表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
求血記  作者: 香双狐
14/38

第十四話 新戦力

時空研究所で、彩子の恩師である椎名時駆に、オニコを元の時代に帰す方法を探す協力を取り付けた盛弥。続いて彩子にとある医院の院長の元へ連れて行ってもらうことになる。そこで示される新たな可能性とは?一方、盛弥達のパトロールメンバーには新戦力が加わる。果たしてその実力とは?


登場人物8

蘇我生斗(そがいくと) 住宅街にある、とある医院の院長。大学時代には、卒業研究で人とそれ以外の血液について研究していた。その経験を生かしてオニコを人間に戻すための薬について協力してくれることになった。

 時空研究所を後にした盛弥と彩子は、再びバスに乗って駅まで戻ると、そこから電車で30分くらい移動した。移動中、家にいるオニコから連絡が入った。

「セーヤ、まだ帰ってこない?」

「ああ、悪い。もう少しかかりそうだから、冷蔵庫の中のご飯食べてていいよ。なるべく早めに帰るから、もう少し待ってて。」

「うん。分かった。」

そう言うと電話が切れた。

「オニコちゃん?」

隣から彩子が聞いてくる。

「そうです。たまにかかってくるんですよ。」

「連れてくれば良かったのに。本人にも聞かせてあげた方がいいんじゃない?」

そう言う彩子に、盛弥は静かに反論した。

「いや、世間的には吸血鬼って言うと怪訝な顔をする人たちも少なくないです。今まであいつの周りには、俺や眞利だったり、オカルト研究会のメンバーだったり信じてくれる人達ばかりでした。だから、いたずらに人に会わせて、嫌な思いはさせたくないんです。」

「そっか、オニコちゃんは幸せ者って事か。」

「まあ、未来に転生してる時点で幸せなのかって話にはなりますけどね。」

そんな会話をしていると、目的の駅に到着した。蘇我医院のホームページによると、最寄りの駅から左へ少し行くとあるようだ。左へ進んでいくと、それらしき建物が見えてきた。外観は、住宅街にあるようなちょっとしたかかりつけ病院のようなこじんまりした建物で壁は白い。

「よし、ちょっと待ってて。」

彩子はそう言うとドアを開けて受付に向かう。数分後、ドアから顔を覗かせ手招きする彩子。どうやら、順調なようだ。中に入ると、一人の看護師が待っていて案内してくれるようだ。彩子と2人で後をついていくと、診察室に通される。そこには、医者の服装そのまま白衣姿の男性が座っていた。

「いやあ、すみませんね。こんなところに来ていただいて。院長の蘇我生斗(そがいくと)です。あなたが、フリーライターの?」

男性は、彩子に問いかけた。

「はい、海藤彩子です。よろしくお願いします。こちらの彼は、大学生の高平盛弥君です。バイトで助手をしてもらってます。」

え?と彩子を見るが、彼女は盛弥に目もくれずに前を見ている。つまり、この男性はあまり油断ならないということだろうか?ここはひとまず、彩子に従うことにした。

「今回は、取材を受けていただいてありがとうございます。本日は、あなたの経歴の事でお話を伺いたいのですが、宜しいでしょうか?」

彩子は本気の記者モードだと、促された椅子に座りながら観察する盛弥。彩子がこの男性について何を感じているのか、それを知るためにやり取りを見守ることにした。

「私の経歴ですか?何かおかしなところでも?」

「この病院のホームページを拝見しました。あなたのプロフィールに、大学で血液について研究されたとありますが、具体的な内容などお教えいただきたいと思いまして。」

彩子の言葉を聞いた蘇我は、そうですかというと話し始めた。

「一応聞いておきますが、何か雑誌のコラムのお仕事ですか?」

「ええ。実は、今度週刊誌で健康についての本の批評を頼まれまして、参考知識としてお話を伺いたいと思いまして。」

盛弥は内心ハラハラしていたが、蘇我は『そうですか』と言うと、姿勢を直して話し始めた。

「私は、人間と他の動物の血液の違いについて研究していました。まあ何しろ大学生の卒業研究ですので、大した成果は得られませんでしたが、何が違うのかくらいはごく一部ですが突き止められましたよ。」

蘇我がそこまで話すと、彩子が質問を入れる。

「ちなみにお聞きしますが、研究の動機は何ですか?」

「それは、ずばり色ですね。人間の血液は赤いですが、ヘモグロビンの影響で赤く見えます。しかし、赤くない生き物もいる。彼らの血液は、なぜその色をしているのか気になったからです。」

そこまで聞くと、彩子は盛弥に話を振った。

「高平君は何か質問ある?」

盛弥は、ではと言うと口を開いた。

「血液の違いが分かるというお話ですが、例えばの話で、人間が違う血を入れられたとして元通り人間になることはできると思いますか?」

蘇我は、ふむと言うと少し考えてから答えた。

「できなくはないと思います。そのための薬が作れれば、戻すことは可能だと思いますよ。」

「薬はどうすればできますか!?」

盛弥は、気付くと立ち上がっていた。それを見た蘇我は、フッと笑うと盛弥に問いかけた。

「興味のあるような反応ですが?」

引っ込みのつかなくなった盛弥は、彩子をチラッと見る。彩子は頷いている。オニコの事を話そうと決意した盛弥は、蘇我に事情を話した。事情を聴いた蘇我は、感嘆すると条件を出してきた。

「そうですか。君に協力するのは問題ない。だが、薬は私だけでは作れないし血も足りない。君自身が協力してくれるのであれば、喜んで手を貸そう。」

蘇我は、立ち上がって手を出し握手を求めてきた。その手を盛弥が握ることで、ほかのアプローチでオニコを人間に戻せる可能性ができた。

 帰宅すると、眞利が戻っていた。盛弥が帰ってくるのに気付くと、なにやら作業していた手を止めて、机の上に置いてあるノートを指さして言った。

「今日の内容のノート置いとくね。それで、収穫あった?」

一緒に作業していたオニコも、その言葉に反応してこちらを向く。

「とりあえず、オニコを平安時代に返す方法を探してくれる人物は見つかった。あとは、オニコを人間に戻す別の方法に協力してくれる人も見つかったぞ。」

「別の方法?」

オニコは、よく分からないというように首をかしげている。

「要するに薬だ。まだ薬ができるかどうかわからないけど、やってみる価値はあると思う。この病院の院長先生が協力してくれるよ。」

盛弥はそう言うと、椎名と蘇我から貰った名刺を見せる。

「へえ。この人達って、彩子さんが見つけてくれたの?」

名刺を見た眞利が聞いてくる。盛弥は、椎名と蘇我の素姓について、実際に会った印象を付け加えて聞かせた。一通り聞いた眞利とオニコは、彼らを信用できると思ったようで、帰り際に要求された椎名による聞き込みと蘇我による血液検査に協力すると言ってくれた。その日はそこからパトロールに向かい、後日それぞれに協力可能だと連絡することにした。

 パトロールといっても、最近は専ら眞利の魔法習得訓練が主になっていた。眞利によると、スリングショットに鉄の弾をセットしゴムを引き絞る手に魔力を集中させると、保護用にかけた眼鏡に照準が現れるらしい。その照準を標的に合わせて弾を放つと、標的めがけて一直線に弾が飛んでいく。まだ習得して間もないため、ある程度近くないとコントロールが効かないようだが、オニコによると、使っていくうちに射程も伸びるようだ。最近の訓練は、盛弥のアパートから少し離れた空き地に的を置き、10m程離れた位置から当てている。盛弥は、周辺をうろついている蚊人(ぶんじん)を倒して技を磨く。その日も普段通りの訓練をしていた盛弥は、近づいてくる一人の人間に気付いた。

「高平さーん!」

それは、奥野だった。手を振りながら走ってくる彼は、背中に木刀を2本背負っていた。

「俺、今田さんを助けるって決めたんですけど、これといって戦えるわけでもなくて…なので高平さん!俺に稽古をつけて下さい!」

奥野は、木刀を一本差し出しながら頭を下げた。聞くところによると、今まで格闘技や武道などの経験はなく、どこまで動けるかも分からないとのことだった。

「んーまあ、やってやれんこともないけど、俺も戦闘に関してはほぼ我流だから、完璧に教えるとかは無理だけどそれでもって言うならいいよ。」

盛弥が木刀を受け取ると、奥野は笑みを浮かべてありがとうございますと言った。

「よし、そしたら早速手合わせだ。自分のやり方を探してみろ!」

2人は、木刀を構えると互いに切り掛かった。しかし、1分程やったところで盛弥がストップをかけた。

「そうだな。基本事項を教えとこう。」

そういうと、木刀の持ち方や構え方といった基本的な事を教え始めた。そしてその日から、パトロールに奥野が付いてくるようになった。

 1時間半程外を見回ると家に帰る。パトロールに出た日は、多かれ少なかれ蚊人(ぶんじん)と戦って帰ってくる。オニコは、蚊人(ぶんじん)の血を吸っているが、人間に戻るためにエネルギーが使われるので、魔力をかなり消耗して帰ってくるため、風呂に入って寝る前に血を吸われる。それは、今日も例外ではなかった。

「セーヤ、噛み付いていい?」

風呂から出て来たばかりの盛弥に、先に出て髪を乾かしたオニコが聞いてくる。この状態の彼女は、人間でいう極度の空腹状態と同じで、盛弥が首のあたりを露出していると、涎が出そうなほど噛みつきたいらしい。しかし、人間だった頃の倫理観と理性からグッと我慢しているようだ。とはいえ、盛弥もこのまま噛みつかれると下着でしばらく動けなくなる。眞利も療養生活を終えて、運んでくれる人はいない。理想の場所はベッドの上だ。

「悪い、寝るまでもう少し待ってて。すぐ準備するから。」

オニコをもう少し待たせて、寝巻きに着替える。歯磨きなど身支度を済ませてから、オニコに声をかけてベッドへ向かう。布団に入ると、胸のあたりに頭をくっつけてオニコが抱きついてくる。

「血、いいのか?」

オニコは首を横に振ると、盛弥の上に馬乗りになる。

「じゃあ、噛むね。」

そう言うと、左首の付け根あたりにオニコの尖った歯が刺さる。痛みで意識が遠のいていく。最近は、そのまま朝まで目覚めないことが多い。血を吸ったオニコは、盛弥の意識が落ちているのを確認すると、静かに呟く。

「ありがと。大好き。」

その後に唇を重ねてから、抱きついて寝るのが、眞利がいなくなってからのオニコだけの日課になっていた。

お読みいただきありがとうございます。

本作を気に入っていただけた方は、評価やブクマ等宜しければお願いします。また、完結済の連載小説や、その続編短編小説等も掲載中ですので、宜しければ併せてお楽しみください。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ