第十一話 助っ人と恋バナ
蚊人に捕らわれてしまった沙月の影響で、自身も操られそうになってしまった眞利。親友の事を思いモヤモヤする彼女がったが、盛弥の家で療養生活を始めることになる。盛弥の元には、常長から今田美月も失踪したと連絡が入った。新たな救出対象が増えたことを頭に置きつつ、オニコからパトロールでの投影魔法の使用許可をもらった盛弥はパトロールへ向かう。そんな中、パトロール中に助けたフリーライターの海藤彩子と会う約束をした盛弥。彼女から聞いたオニコに関する情報とは?
オニコと盛弥が出会った時、オニコがしたお願いは2つあった。1つは人間に戻すこと。これは、蚊人を利用すれば時間がかかってもクリアできる。もう1つは、平安時代に帰すこと。今まで方法が見えずにいたが、やっと解決に繋がるかもしれない道が、盛弥の前に現れた。
盛弥が、助けたフリーライターの海藤彩子に連絡をしてから1週間後。盛弥は、駅前のファミレスにやってきた。彩子に指定された場所なのだが、仮にも命の恩人に対してもう少しなかったのかと思う。しばらくすると、電車でやってきた彩子が到着する。
「お待たせ。結構待ったかな?」
「いいえ。さっき来たところですよ。」
最初は天然ドジっ子的な印象だった彩子だが、連絡を取るうちにサバサバした面が出てきてデフォルトになった。ごく稀にドジっ子要素も出るのだが。2人で店内に入ると、案内された席に対面で座る。
「ごめんね。本当はいいところのご飯でも良かったんだけど、何しろお金が少なくてね・・・。とは言え今日は奢りだから、好きなもの食べていいよ。」
非常に頼みにくい前振りをされたが、盛弥には予想通りの展開だった。彼女について調べた時に見つけたコラムは、連載ではなくほぼ全てが単発のものだった。しかし、お言葉に甘える事にした盛弥は、注文した後で彼の本題を切り出した。
「彩子さん、ネットに上がってたコラムいくつか読みましたよ。」
「えっ、本当?…どうだった?」
やはり感想は気になるのかと思いながら、感想を伝える。
「素人意見ですが、読みやすかったです。その本の見どころを言いつつも、実際に読みたいと思わせる様な文でした。」
素直に良かったと伝えると、彩子は少し照れながら「ありがとう」と言った。そこで盛弥は、もう少し踏み込む。
「彩子さんの記事って、歴史物や転生物のジャンルについてが多いですよね?何か拘りがあるんですか?」
彩子は、少し考えると「うーん」と言ってから答え始めた。
「拘りっていうよりは、そういうジャンルが好きだからかな?歴史は過去のことだけど、その人物がどういう考え方をしてるかっていうのを想像してみると、意外と現代と同じだったりするし違ったりもする。そこが面白いと思うんだ。」
彩子は、歴史物に感じる魅力について語った。その熱量に感心した盛弥は、もう片方についても聞いてみた。
「じゃあ、転生物はどうですか?」
「転生物はね、書き手の世界観が如実に出るの。作品の世界観やストーリー構成、登場人物の性格や名前まで作者の自由度が高いから、その人の考えとかが色濃く反映されるの。それをいろいろ想像するのが好きだなぁ。」
ここまで聞いて、彩子なら分かるかもしれないと思った盛弥は、いよいよ一番聞きたいことを聞く事にした。
「彩子さん、転生物の主人公って元の世界に戻ろうとしたり、その世界で生きるって心を決めたりいろいろじゃないですか?仮に、元の世界に戻る事にしたとして、戻れると思いますか?」
彩子は、また少し考えてから答える。
「作品や考えによっても変わるだろうけど、私個人の考えを言うのであれば、転生は戻れないと思う。転生は、転移や召喚と違って一回死んでるから、元の世界からは一回消えてることになると思うなあ。神様の手違いとかそういう設定なら分からないけど。」
彩子の考えは、盛弥にとってもなるほど一理あると思える内容だった。しかし、この話通りだとオニコは帰れないという事になる。オニコが帰れない可能性について考えていると、彩子に質問された。
「でも、何でそんなこと聞くの?小説書こうとしてるとか?」
「あ、いや実はですね…。」
盛弥は、口外しない事を頼んだ上で、オニコが平安時代から転生してきた吸血鬼であると明かした。それを聞いた彩子は、目を丸くして驚いたがオニコの戦っている姿を思い出して納得した。盛弥は、オニコが帰りたがっている事を明かすと、とても乗り気で協力を申し出た。
「帰る手段を探すのは任せて!気になる組織とか団体がいくつかあるから取材してみるよ。」
今後は、引き続き盛弥達の方でもオニコを帰す方法を探すとして、助っ人が期待できるようだ。
その頃、オニコは起き上がれるくらいには回復した眞利とキッチンに立っていた。
「オニコちゃん、この野菜炒めてくれる?」
今日は、盛弥が外出しているので2人で昼食を摂る予定になっている。眞利が盛弥の家で療養生活を始めてからというもの、盛弥がバイトでいない時などにコミュニケーションが増えてきた2人は、お互いを知って理解し始めてきた。
「そういえば、オニコちゃんは好きな食べ物とかあるの?」
「野菜スープ。あんなにおいしいのは初めて食べた。」
「そっか、平安時代から来たんだもんね。平安時代って、全般的に薄味なイメージなんだけど、こっちのご飯は味濃くない?」
「お肉にかけるソースの味が少し濃いけど、あとはセーヤが調節してくれるから大丈夫。」
冷蔵庫には、オニコ用と書かれた調味料のセットが入っていた。聞けば、すべてに近い種類の汎用的な調味料が盛弥によって味を調整されたもののようだ。
「ふーん。想われてるのね。いいなぁ、私も特別扱いされたいよ。ところで、」
眞利は、そこまで言うとオニコの隣に来て鍋を火にかけた。
「盛弥の事、好きでしょ?どこが好き?」
そして、唐突にこんな質問をした。オニコは少し顔を赤らめたが、素直に思ったことを口にした。
「セーヤは優しい。見るからに怪しくて、セーヤに傷も負わせる。そんな私を助けてくれて、お願いも聞いてくれて協力までしてくれる。そんなセーヤが好き。」
それを聞いた眞利は、フフッと微笑んだ。
「オニコちゃん、彼女の私の前で言うじゃん。私はね、常に私の事を守ろうとしてくれる盛弥が好きなんだ。」
オニコは、最初の言葉に少しだけ怯えた様子を見せるも、興味深そうに先を促した。
「そういえば2人の出会いとか聞いたことない。どんな感じだったの?」
「んー?出会い?それはね、去年の事なの。私ね、高校の頃は少女漫画大好きなJKでさ。大学に入ってもそれなりに引きずってたの。で、ある日ね通学中の電車の中で漫画を読んでたんだけど、のめりこみすぎて乗り過ごしちゃったの。それで何駅か過ぎちゃってから気付いて、反対の電車に乗ったんだけど、心配事があると人って不注意になるもんでね、盗撮されてたことに気付かなかったの。そしたら、満員電車の中を移動して、犯人から守るように私との間に入ってくれたの。ちなみに私は、その時全然気付かなくて降りてから盛弥に注意されたんだけど、その人が同じ大学の同級生って知ってからどうしても意識しちゃって好きになっちゃったんだ。」
「ていう事は、眞利から告白したの?」
「それがね、違うのよ。私ももちろん恩義は感じてたけど、それ以上に盛弥が守ってくれた理由が大きくてね。なんて言ったと思う?"入学してから可愛いと思ってたら、盗撮されてたからさりげなく助けた"って。」
さりげなくどころか、電車を降りてから注意喚起のために声をかけなければ気づかれない。声をかけても大抵は不振がられるだろう。そう思ったオニコは、眞利に聞いてみた。
「でも、何でマリは盗撮されてるって気付いたの?」
「電車を降りてから盛弥に言われたの。でも、当然怪しむでしょ?盛弥ったら、必死に訴えてきてね。そこで更に怪しむのも違うと思って信じたの。」
「そこから好きになったの?」
「そうだね。面識が出来たから、盛弥がグイグイ来てね。私が根負けした感じかな?今は大好きだけどね。」
照れたように笑う眞利は、幸せそうな表情だった。その表情をみたオニコは、2人の間に入るのは無粋かなと思い、少し気が引けるのだった。
「よし、出来た!オニコちゃん、食べよっか。」
その頃盛弥は、ファミレスでくしゃみが止まらなかった。
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