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求血記  作者: 香双狐
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第十話 願いの兆し

パトロールで体内に火の玉を吸収してしまった眞利と沙月。盛弥は眞利を連れて帰り、沙月はオカルト研究会の今田美月(いまだみづき)が連れて帰った。翌日土曜補講に出ると、沙月の姿が見当たらない。どうしたのかと気にしていると、教室に入ってきた教授が蚊人(ぶんじん)に豹変して暴れだす。盛弥が追い詰めると、クザスが現れて元教授を消してしまう。盛弥がクザスを追いかけると、クザスは操り人形にした沙月を登場させる。その影響なのか、眞利が操られそうになり、盛弥は急いで眞利を救出。しかし、精神的に負荷をかけられた眞利は、ぐったりしてしまうのだった。


登場人物6

海藤彩子(かいとうあやこ) 文芸誌に、小説の評価や宣伝をコラムとして寄稿しているフリーライター。分野としては、歴史ものや転生ものを多く扱っている。帰宅途中に襲われていたところを、盛弥達に助けられた。

 季節が秋に変わろうとして、ひぐらしが鳴きはじめる。そんな中で、現役女子大生の仲野眞利は、自分史上最も酷な夏を過ごしたかもしれない。夏休みは、彼氏の高平盛弥と出掛けて満喫するつもりだった。しかし、その彼氏が吸血鬼と同棲を始めるという衝撃から始まり、親友は人類に成り代わろうとする謎の集団に操られてしまった。そして、自分も親友と同じ状態になってしまう可能性がある。今となっては、自分が暴走して彼氏に危害を加えないかが只々怖い。

 眞利は今、盛弥の家で横になっている。学校で蚊人(ぶんじん)に操られた沙月と対峙した時、沙月の影響なのか自分も操られそうになった。しかし、それを感じとった盛弥がその場から離脱して助けてくれた。自分たちを逃すために時間を稼いでくれたオニコ曰く、沙月はクザスが連れ去ったようだ。

「私はどうしたらいいの…?」

沙月を助けたいという気持ちと、盛弥に迷惑をかけたくないという気持ちが眞利の心をストレスという形で蝕んでいる。

「ん?起きた?」

眞利が悶々としていると、そう言ってオニコがやって来た。彼女は、眞利の側に座ると熱を診始めた。

「オニコちゃん、盛弥は?」

「バイト。マリの事すっごい心配してた。もうじき帰るよ。ご飯食べる?」

どうやら熱はないようで、こんな質問をしてきた。

「ありがとう。でも、だるいから要らない。」

熱はないようだが、起き上がろうとするととてつもないだるさに襲われる。諦めたところをオニコに咎められた。

「まだダメ。相当弱ってるから、当分寝てて。」

その時、玄関が開いて盛弥が帰ってきた。

「ただいま。眞利は?」

オニコが出迎えて説明する。

「さっき起きたよ。体は弱りきってるから、まだ動いちゃダメ。」

それを聞いた盛弥は、眞利のもとに駆け寄る。

「よかった。とりあえず食べれそうな物買ってきた。ここに置いとくぞ。」

「盛弥、ありがとう。ねぇ、側にいて?」

眞利の訴えかけるような視線を受け止め、袖をつかまれた盛弥は、分かったと言うと眞利にスッと近づいて鼻が当たらないくらいの距離で止まる。

「ふぇ!?せ、盛弥?」

突然の行動に、顔を赤くして慌てる眞利。

「ちょっと待ってろ。晩御飯食べてくる。こないだのお返しな。」

そう言うと、盛弥は軽く唇を重ねて行ってしまった。状況を整理するのに時間を要したが、結果嬉しくなり隠れて悶絶する眞利だった。

 それから数週間後、盛弥の投影魔法はかなり上達していた。眞利を守るという意思の表れか、オニコの大太刀をひとりで投影して合格をもらった。そして、次にオニコから出された課題はハードルが跳ね上がったものだった。

「次の課題は、思ったものを自由に出せるようになる事。いい?」

「それ、ハードル高くね?」

盛弥としては、投影するお題がもう幾つかあるものだと思っていただけに、難易度が跳ね上がったように思えた。しかし、眞利を守ると心に決めた彼の覚悟は甘くはなかった。オニコが次々と武器の絵を出してきて、それを投影していく。最初は投影までに時間がかかったが、回数をこなすにつれて早くなった。絵が文字に変わり、口で言われるだけになりと情報量が減っても、正確に早く出来るようになっていった。盛弥としては、ここまで来ると武器の耐久性が気になってくる。オニコによると、魔力がある限りは持つ上に、出し入れ自由との事だった。そして1週間後、遂にオニコからパトロールでの投影魔法の使用許可が降りたのだった。

 その頃、蚊人(ぶんじん)の本部では幹部による会合が開かれていた。

「まずは、クザス。進捗状況を報告せよ。」

「そうね。今のところは、相手を内側から崩す策を実行中よ。」

リンキは、詳細の説明を求めた。

「まず、彼らの仲間を私が操れるようにするわ。そして、操った状態で目の前に現れさせ、戦意を削いでいく作戦よ。戦意を無くせば、あとはいかようにも調理可能になるわ。」

「ふむ。それで、今はどの辺りだ?」

「操る対象の確保は出来たわ。私の部屋に幽閉済よ。こいつを餌にもう1人操る予定でいるわ。」

リンキは、報告を受けて納得するとブゲンに話を振った。

「ブゲン、強化体の開発状況はどうだ?」

「はっ、只今開発済みの個体からデータの採集をしております。新開発個体のボディは、完成しておりますので、あとはデータを打ち込むだけです。」

「ふむ。引き続き開発速度を落とさぬようにせよ。コビャとブドラはどうだ?」

報告を促された2人が、答える。

「はい。この国の人間は、やや危機意識が薄れているのか、突発的に襲うのであれば造作もございませんでした。」

「それより、一部の頭の回る者どもが厄介ね。勘がいいというのか、鼻が利くというのか、何か対策が必要よ。」

そこまで聞くと、リンキが全員に問う。

「ところで、各々(しもべ)とする者は確保済みだとは思うが、まだの者は?」

その場の4人は互いを見渡し、いないことを確認する。場の状況を把握したリンキは、一呼吸おいて続ける。

(しもべ)は、多いほど使える場面が増える。増やせるだけ増やしておくがよい。では、これで解散とする。」

会合を後にしたクザスは、自室に戻ると奥の部屋に行き、鏡になっている場所を開き戸のように開ける。そこには、彼女の炎によって作られた拘束具で壁に固定された沙月がぐったりしている。クザスは、沙月に近寄るとサディスティックな笑みを浮かべて囁いた。

「もうじきお友達を連れてきてあげるわ。楽しみねぇ。フフフフフ。」

沙月は意識があるのかないのか、ぐったりしたまま動かない。そんな様子を見て、ンフッと怪しげに微笑んだクザスは部屋を後にした。ドアが閉まると、うつろに目を開けた沙月がボソッと呟く。

「眞利、ごめん・・・。高平君お願い、眞利を支えてあげて・・・。」

 盛弥の元に、常長から連絡が入った。

「やあ高平君、しばらく連絡を取れなくて済まない。こちらもバタバタしていてね。ところで、君の彼女の様子はどうだい?」

「どうもこうもないですよ。岸田教授が蚊人(ぶんじん)だった件で、沙月ちゃんが操られてることを知ってショック死しそうになってから弱りっぱなしなんですから。」

「まあ、あれは無理もないだろうね。オカルト研究会としても痛手なんだが・・・。」

そこで言葉に詰まる常長。盛弥が様子を伺うと、暗くなった声が返ってきた。

「いや、すまない。気持ちを落ち着かせて聞いてほしい。岡さんに続いて、彼女の様子を見てくれていた今田さんも失踪してしまった・・・。」

状況から見るに、沙月が関係していることは確かだ。盛弥は、オカルト研究会の1年生である奥野の無事を確認すると、今後は自分とオニコのみでパトロールに出ることを伝えた。常長も、部員に行方不明者が2人も出てしまっては、パトロールどころではなくなってしまったため、やむなく了承した。しかし、バックアップの協力は惜しまない事を約束した。

 その夜、盛弥とオニコは市街地のパトロールに向かった。家を出る前に、眞利が寝たのを確認すると、起こさないように静かに出てきた。最近は、眞利が寝てから出発する事にしている。彼女が一緒に来るのは、何かとリスクがある。それよりは、家にいてくれたほうが安心する。しかし、彼女には内緒にしてある。いつか話さなければならないが、気恥ずかしさのようなものから、なかなか言い出せない盛弥だった。今日は、例の公園ではなく駅前にやってきた。蚊人(ぶんじん)の出没確率が高いとして、オカルト研究会からの情報提供が理由だ。駅前の広場までやってくると、オニコのセンサーが早速反応する。

「セーヤ、駅の反対側に一体いるよ。」

その情報を元に、反対側の出口へ向かう。すると、右腕から極太針を露出させた男が帰宅途中と思われる女性を襲っていた。女性は、何とか逃げているが捕まるのは時間の問題だ。それを見たオニコは、大太刀を引き抜くと男の後ろに回り、凄まじいスピードで迫る。男を斬りつけるタイミングで、盛弥が女性の安全を確保する。

「大丈夫ですか?」

「え、ええ。ありがとうございます…。あの、あなた達は?」

オニコは、後ろで蚊人(ぶんじん)とやり合っている。盛弥は、女性をその場から離すと質問に答えた。

「俺たちは、蚊人(ぶんじん)の企みを阻止するために戦ってるんです。」

それを聞いた女性は、思わぬ反応をした。

「そうだったんですね!助けて頂いてありがとうございます!もうダメかと思っていたので、ホッとしました。あっ、私こういう者です。」

女性は、鞄の中から名刺入れを出すと1枚盛弥に渡した。名刺には、フリーライター 海藤彩子と記されていた。

「俺は大学生の高平盛弥です。それでこいつが相棒のオニコです。」

自己紹介とともに、ちょうど血を吸い終わってやってきたオニコを紹介する。彩子は、今度お礼がしたいから名刺の番号に連絡して欲しいと言って、去っていった。

 盛弥とオニコは、その日のパトロールを切り上げて帰宅すると、海藤彩子について調べ始めた。ネットには、彼女が文芸誌で執筆したコラムが載っていた。過去のアーカイブを遡ると、歴史物や転生物等の幅広いジャンルの小説の評論や解説について執筆しているようだった。

「なあオニコ、この人ならお前が元の時代に戻る方法に繋がりそうだと思わないか?」

盛弥は、そう感じてオニコに聞いてみる。オニコは少し考えると、盛弥を信頼して答えた。

「セーヤに任せる。セーヤが会って、信頼できると思ったら聞いてみて。」

盛弥は、オニコの信頼に応えるべく彩子に連絡を入れた。

お読みいただきありがとうございます。

感想欄と作者名のTwitterで感想や評価等募集中ですので、宜しければご意見をお聞かせください。

それでは、今後ともお付き合いよろしくお願いします。

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