3.5)異世界転移と勇者
リンがアイリスと出会っている頃、同じ森の中。
「ぐぅっ、、はっ、はっ」
ダダダダッ
傷を負い、全力疾走している男。
ガサガサガサッ!
側面の草をかき分け平原へと出る。
左に目線を上げると10メートルほど先にソイツも出てきているのが見えた。
対峙しているのは、腕の長い猿だ。
背丈は2メートルほどあり、腕は1メートルほど、先に凶暴な爪が生えている。
「ふぅーーーー、、、よ、よし、落ち着け。他に頼れるものも無さそうだし、、や、やれるだけはやってやるさ。」
〜
時は数分前に戻る。
この男、斉藤十空は16歳、文武両道を具現化したような人間だ。
成績は常に学年トップ、柔道では5段を所持しており、性格は品行方正、正義感が強く、10人のうち9人が所謂イケメンと言うような容姿をしている。
「うっっっ!」
脇腹に木の枝が突き刺さっている。
「ここはどこだ?」
激しい痛みに耐えながら直近のことを思い返してみる。
今日は学校帰りに塾に寄り、勉強をしていたはずだ。
寝てしまったのか?
それにしても、周りを見渡すと、昼間の森だぞ?
「なんなんだ一体っ、ぐっっ、、痛つ」
どう言う状況だこれは。
血が止まらない、助けを呼びに行かないと。
立ち上がろうとしたその時、後ろに気配を感じ、咄嗟に仰反る。
ザンッ
さっきまで頭のあったところに鋭い何かが通った。
元を辿ると、見たこともない大きなおぞましい生き物がいた。
ダッ
走りだし、横目に振り返ると物凄いスピードで追いかけてきている。
「なんなんだよ本当に!!」
〜
逃げながら観察してわかったが、関節等の動きを見ても生き物ではあるようだ。
なら倒せるはず。
「よし、いくぞ。」
腹をくくった。
ヒュッ、、ダンッ!
短く息を吐き、一気に化物との距離を詰める。
近くで見たその生き物は全身が血塗れで毛が凝固しており、一瞬吐き気がしたが飲み込んだ。
ブンッ
そいつが手を振り上げて顔面に振り下ろそうとしているのがわかる、
ギュンッ
「よっ、、、しっ!」
ドオォォォォン
あたりに地響きがこだまする。
全ては一瞬の出来事だった。
手が振り下ろされた瞬間、十空はそいつの脇腹に体ごと入り込み、腕の振り下ろしをも利用し、2メートルもの巨大を一本背負いで地面に叩きつけたのだ。
十空は少し離れ、その生き物を観察してみた、すると目の前に文字が出たような気がした。
名前:なし
種族:ワイルドモンキー
称号:なし
魔法:風魔法
スキル:筋力増強
耐性:なし
状態:気絶
「これは、、すごいな」
こんなのは見たことがない、素直な感想だ。
「っ、うぅぅ」
忘れていた激痛が走る。
「誰か、探さない、、と、、」
ズサッ
十空はその場に倒れこみ、動かなくなってしまった。
それから数秒後、十空の身体を淡い光が包んだ。
光が消えると、そこにいたはずの十空も含め、何も残っていなかった。
初投稿なので、アドバイスなど頂けると嬉しいです!