34)真夜中の虐殺
辺りはもう真っ暗だ。
ミスティア大平原に出たのは夕方だったから、今頃は夜中だろう。
異様にでかい月が辺りを照らしている。
おかけでその惨劇ははっきりと俺の目に映っていた。
俺が召喚した魔物達に、獣型の魔物が次々と殺されていっている。
一体一体の力の差で言うと、相手の群れの中にもほとんど変わらないぐらいの力を持つものもいるが、ほとんどはこちらの魔物達が圧倒していた。
加えて、恐ろしいぐらい統率されている。
先頭列の盾持ち魔物達が守りつつ戦線を押し上げ、隙ができた瞬間に後ろから別の魔物が攻撃を行う。
人間の兵士もびっくりな戦術だ。
ほとんど相手になっていない。
「こんなに一方的になるなんて、、、モンちゃんが統率してるの?」
側にいたモンちゃんに声をかける。
「いえ、訓練はしたことはありますが、今統率しているのは完全に私ではなく、元配下の例の魔物達です。そろそろ、近いうちにリン様にもお目通り頂けるかと。」
なるほどなぁ、まぁ楽しみにしておこう、どの魔物だったのか全然わかんないし。
「リン、アイリスも魔法でこれぐらいだったら全滅させられる。やっていい?」
なんかちょっと怒った声でアイリスが話しかけてくる。
いやまぁアイリスは魔力無限みたいなもんだし、超強力な魔法とかぶち込んだらいけるんだろうけど。
「アイリスが魔法打つと、その辺にいる冒険者達も全員消し炭になっちゃうだろ。」
「むぅ、冒険者、冒険者、、、」
アイリスがブツブツ言い出したからとりあえずみんなの方に向き直る。
「よし、魔物達も戦ってくれているから、下手に動くよりここを安地に持久戦をしよう。群れはかなりのスピードで移動しているから、抜けるまで持たせられればいいんだけど。」
意思疎通スキルで飛竜の目を借りて空から見てみたが、まだ森から魔物は溢れ出て来ている。
どれぐらい戦えば抜けられるだろうか。
「俺たちもだいぶ落ち着いたから行ってくるぜぇ。」
「数を減らす。」
レンとサヤ達が結界の外へと戦いに出ていった。
確かに確実に群れが通り過ぎるとも限らないから、数は減らしておくに越したことはないか。
気づけばもうこの辺り一面は魔物の死体しかない。
「心紋も手を貸してやってくれ。」
その間に俺は、キューちゃんの状況を確認する。
実は、キューちゃんにはある指令を出していた。
それは、騎士団の様子を確認して来てほしいというものだ。
キューちゃんたちオバケ部隊は姿を消せるから、隠密には最適なのだ。
意思疎通スキルで、キューちゃんの視界を確認すると、すでに騎士団の幹部らしき人々が集まっている様子が見えた。
その後ろには大勢の兵士たちが隊列を組んで直立不動になっている。
戦の直前という感じだ。
そして、なんと騎士団は魔物の群れが見える位置にまで来ていた。
(キューちゃん、前にいる数人に寄ってくれないか?会話が聞きたい。)
(わかったよぉ。)
キューちゃんが寄ると、会話がよく聞こえた。
そこにいたのは3人、体の大きな50代ぐらいの偉そうな男と、40代ぐらいの男が2人だ。
「アーマス団長、動くならそろそろでしょうか。」
「ふむ、それで、冒険者どもはどうなっているのだ?」
50代ぐらいの偉そうな男はアーマスというらしい、団長ということは騎士団長だろう。
「ミスティア大平原に入っていた冒険者どもは、予定通り全て群れに飲み込まれているようです。」
「はんっ、ざまぁないな。冒険者などという卑しい身分の者どもが王都ででかい顔をしておるからだ。少しは魔物を減らしてくれていればいいがなぁ。どうせなら、もう少し数を減らしてくれるまで待とうではないか。それとももう全てくたばっておるか。」
アーマスがそう言うと、夜の平原に男達の汚い笑い声が響く。
くそが。
なんだそれは。
そんなことでナナが怪我をしたのか?
こんなクソみたいな人間達のせいで?
このアーマスという男は絶対に殺そう。
殺されそうになっているんだ、構わないだろう。
冒険者と騎士団の事情なんてどうでもいい。
俺達に危害を加えるなら、殺してやる。
この手で直接だ。
(キューちゃん、ありがとう。もう離脱していいよ。)
その前に目の前の魔物の群れをどうにかしないと。
「モンちゃん、あの鬱陶しい魔物の群れ、今すぐどうにかできないか?」
早くあいつを、今すぐにでも殺しに行きたい。
こんなのに構ってられない。
「仰せのままに。では私が直接手を下してご覧に入れましょう。全て消し去ってみせます。」
「っ、だからそれじゃあ冒険者たちが巻き込まれるって、、、」
、、、まぁもう別にどうでもいいか。
関係ない人間達だし。
「リン、リン、冒険者の位置が全部わかった。アイリスが結界で冒険者をホゴする。どう、すごい?」
アイリスがドヤ顔でそう言ってくる。
あぁ、荒んだ心が少しだけ癒される。
アイリスがいてくれてよかった。
「頼む、アイリス、モンちゃん。」
「必ずご期待に応えてみせます。」
アイリスは魔力を練り始め、モンちゃんは笑みを浮かべながら宙へと浮かび上がっていった。
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