0)斉藤凛という男
俺の前にはパソコンのモニターが4つ展開されている。
2つは、株価やニュース等を把握しつつ売買するためのもの。
今はアメリカの市場と英字新聞が映し出されている。
残り2つは、ある企業から依頼されている商品管理システムの効率化プログラムを制作しているところだ。
1年ほど前に、商品注文をしたら届くのが遅かったので、現状を調べて、匿名でフロー改善の企画書を送りつけたら気に入ってもらえ、お得意様になっている。
「ふぅ、とりあえずはこんなもんか。」
キーボードから手を離し、一息つく。
時計を見てみると朝の7時になっていた。
トントンッ
部屋のドアがノックされた。
「凛、学校行くだろ?俺朝練あるから先行ってるぞ。」
「あぁ、いってらっしゃい。」
足跡が遠のいていく。
「ふぁ〜、、、学校いこ。」
〜
俺が通っているのは、東京の普通の公立の、家から1番近い学校である。
門では強面の体育教師が腕組みをして、遅刻する生徒を待っている。
よく見る光景だ。
教室に入るといつも通りガヤガヤしていた。
「凛!おはよう!」
「あ、凛!聞いてくれよ〜」
「凛君、おはよ!」
何人かが一度に声をかけてくる。
「おはよう!みんな朝から元気だね!」
俺の返事はこれだ。
俺は人前で喋り方とか態度を変えている。
明るく振る舞った方が色々と利点は多いし、別にストレスもないから外向けにはこんな感じだ。
ちなみに一人称は、「僕」にしている。
親しみやすく警戒されにくいからだ。
「なぁ凛、文化祭の出し物なんだけどさ、文化委員が仕切ってても決まらないんだよ。凛が代わりにやってくれよ〜。」
「うん、僕は構わな、い、、よ、?」
あれ、
急に目眩いがしてきた。
「り、凛!?」
「みんな!凛が!」
声が遠くに聞こえるなぁ。
あれ、そういえば、
最後に寝たのっていつだっけ。
〜
目覚めると保健室にいた。
ん、そうか、俺学校に着いた瞬間寝不足すぎて倒れたんだ。
「知らない天井だ。」
一度は言ってみたかった。
辺りを見ると誰もいないようでホッとした。
気絶はしたことがなかったので、家にあるラノベを興味本位で読んだことのある俺は、異世界転移を期待していたが現実は酷である。
「はぁ、、」
本当に異世界にでも行けたらいいのに。
この満たされた現実が退屈でならない。
自分の成長に楽しみを見出していた時期もあったが、どうやら自分は命の危機にしか楽しみを見出せないような人間だったらしい。
だからといって、現代社会で命の危機に自らを投げ打つほど行動力が突出しているわけでもないのだ。
自分は頭のいい方だとは思う。
世界中のありとあらゆる知識も貪り、興味が持てること探した。
だが、核となる目的がない。
こんな世界つらい。
「はぁ、、、」
ふと時計をみると午後8時を回っていたので、立ち上がろうとした時だった。
「あれ、、、また目が、、」
段々と視界が曲がっていく。
そして、急に平衡感覚がなくなり、どっちが上か分からなくなった。
体が傾いていってる気がする。
そのまま床へダイブ。
そろそろ死ぬのかもしれない。
でもまぁ。
もし異世界転移なんてものがあるのなら、命がすり減るような戦いがしたい。
クラスの幼馴染達と一緒に冒険もしてみたい。
そして最強のパーティとクランを作って、大企業並みの組織に育てあげよう。
そしてもっと強いやつと戦おう。
そのためには大勢の手足が必要だな。
———そして本当に異世界転移した俺は、効率的に時に大胆に四苦八苦しながら仲間を集め強くなっていくことになる。
最強のテイマーになるために。
初投稿なので、アドバイスなど頂けると嬉しいです!