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004 アルマ教

物語の本筋が全く進んでいませんが4話までやって来ました。

 俺が食堂に入ると、父さんは何時もの様子で席に座っていた。

 まだ、少し朝食の時間には早いという事で父さん以外には誰もいない。


「おはようございます、父様」

「うむ、おはよう。

 所で昨日お前が買った奴隷どうした?」

「おいで、ククル」

「は、はい! あ、あのククルと申します。

 な、慣れないことばかりでご迷惑をお掛けするかも知れませんがそこは目を瞑って頂けると有難いです」


 俺が合図を出すとククルは可愛らしくぺこりとお辞儀をした。

 まぁ、ボチボチといった所だろうか?

 父さんは身分や外見によって誰かを差別する事は無いし身分相応以上の礼儀作法は求めて来ない。

 ククルの場合は奴隷という立場もあってこの程度が出来れば問題は無いはずだ。


「ふむ………聞いていた話とかなり違う様だな」


 しかし、残念ながら何かが父さんの気に触ったらしい。

 いや、この感じはククルではなく………


「ウルル、ウルルは居るか?」

「はい旦那様、ただいま参ります」


 厨房の方からドダバタと忙しそうな音が聞こえてきた。

 ウルルはメイド長という立場であり、基本的には俺かアルアのどちらかに着いて居ることが多いのだが朝食の準備だけはウルル本人がやっている。


「はい、何の御用でしょう?」

「昨日ルシェが直ぐに死にそうな奴隷を買ってきた、お前はこの儂にそう報告したな?

 随分と聞いていた話と違うようだか?」


 そう言うと、父さんはククルの方へと視線を向けた。

 いや、確かにククルは死にそうだったんだ。

 流石の父さんも俺みたいな子供が大怪我をしている人を治癒出来る訳が無いと思っているのだろう。

 まぁ、確かに10歳のガキが賢者クラスの人物が何日も掛けて儀式を行わ無いと施す事が困難な完全回復術を使えるなんて誰も思いはしないだろう。


「父様、報告がまだでしたがククルは僕が治癒しました」

「何? ルシェが?

 だが、話では放っておこうものなら数分で息絶えそうな程の大怪我と聞いていたのだぞ?」

「はい、その通りです、確かにあのままでは遅からず死んでしまっていた事でしょう。

 運が良かったのかそれとも神が味方して下さったのかは知りませんが奇跡的に治癒に成功しました」

「なるほどな………ウルル、朝食の準備に戻るが良い」

「かしこまりました、

 何かありましたらまたお呼び下さいませ」


 ウルルはそう言うと厨房へと引っ込んで行った。

 なんというか、ウルルは真面目な奴だ。

 主の為なら自分の身を全て捧げる様なそんな感じがする。

 何をするのも全身全霊を込めて行うタイプで小さなミス1つ犯す事ないその優雅な立ち振る舞いはまさにメイド長に相応しいと言うべきだろう。


「それにしても、良く治癒出来たな?

 部位の欠損を治すには様々な工程を踏んだ儀式魔術が必要になるはずだが良くも一日でこれ程までに仕上げたものだ」

「儀式魔術ではなく、錬金術を使用しました。

 もしもの為に古代クルファト文明のアーティファクトの複製を試みようと実験を使用と準備していたのが幸いでしたね」


 さすがに、俺の使った術を教える訳にはいかない。

 こんな時にはアーティファクトでゴリ押していれば良いのだ。

 魔術の分野でもアーティファクトはその構造や仕組みが謎とされるものが多い、この辺りだとクルファトと言う超古代文明のアーティファクトは良く出てくるし不思議がられる事も無いだろう。


「ふむ、クルファトのアーティファクトか………」

「それとは全く関係無い話かも知れませんが、

 ククルにメイドとしての礼儀作法や護身術を教えてあげたいのですがよろしいでしょうか?」

「そうだな……ではこちらで手配しておこう。

 それと、ルシェよ、お前の錬金術師としての腕前がどの程度なのかを一度知っておきたい。

 今日の午後からの予定はあるか?」

「今日の午後からですか?

 特に予定は有りませんよ、強いて言えばククルに家を案内するくらいですね」


 まぁ、欲を言えば図書館に篭っていたいがそんな何時でも出来ることを予定として上げるのはダメだろう。


「では、予定を開けておくように。

 それと、実力しだいだがもしかするとグリューテ公国の国立大学で学べることになるかもしれんぞ?」

「確か、あそこは15歳からでしたよね?」

「そうだ、世界最大の錬金術国家だ。

 仮に行くことになったらお前にも充分有意義な時間が過ごせると思うぞ?」

「おはようございます、父さん」


 俺と父さんが会話をしていると何時も最後にやってくる兄さんが食堂へと入ってきた。

 これで公爵家のメンバー全員が揃った事になる。


「うむ、それでは朝食にするか。

 皆の者、席に座るが良い」

「あ、えと……何処に座れば?」

「ここ、従者は基本的に主の隣の席って決まってるんだ」


 俺がそう言うと、ククルはちょこんと俺の右側の席に座った。

 その後、各員の前に朝食が並べられた。


「偉大なるアルマの恵みに感謝を!」

「「「偉大なるアルマの恵みに感謝を!」」」


 これはなんというか食前の挨拶の様なものだ。

 日本で言うところの「頂きます」って奴に近い。

 全世界共通の文化で、人類どころか獣人族や魔族さえも朝食の前にはアルマに祈りを捧げるのだ。



 この世界で宗教と言えば1つしか存在しない。

 アルマ教なんて俺が勝手に呼んでいる宗教だけだ。

 アルマ教にはめんどくさい戒律なんてものは存在しない。

 そもそも、教典なんてものが存在するかどうかさえ怪しいく、神の教えて的な感じのものもたった2つだけしか存在しない。

「ドラゴンと敵対するな」といういかにもなものともう1つだけルールが存在する。

「神の恵みに感謝せよ」これだけである。

 教会なんてものも殆ど見かけない。



 こんなものを宗教と呼べるのかどうかは俺には分からないが一応、国教として定められている上に間違った事は何一つ言ってないので意図して宗教に歯向かおうとするものも居なければ新興宗教なんて話も一切聞かない。

 宗教や信仰という考え方そのものが地球とは大きく違うのだ。

 宗教戦争や信仰の違いによる争いが無い分こちらの世界の宗教の方がよっぽど優秀と言えるかもしれなかった。



 神代……つまり今から1万9000年前くらいの時代にはアルマ教以外の宗教が存在したという記録が存在する。

 しかし、そんな古い時代の記録なんて信憑性の欠片も無い。

 人類がこの星の全土に広がる前に誰かが考え出したアルマ教という考え方が染み付いているという俺の説は恐らくだが正しいと思われる。

 なんせ教えがたったの2つしか存在しないのだ。

 時代が進んでも変わったりするような事では無いし、恐らくだがそのまま2万年近く伝えられて来たのだろう。

 俺は食堂の窓から姿を覗かせる空とアルマに目を向けた。

 いつもの様にアルマが登る綺麗な晴天だった。

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ノベルバにも連載中で、こちらの方が更新が早くなる予定です。 こちらから飛べますのでもし良ければよろしくお願いします。
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