003 生まれ変わった気分はどうだ?
5話目です。
予定ではストックがチラホラ溜まっている筈なのでこれからは更新が安定しそうです。
「久しぶり、それとも初めましてかな?」
「………」
「まだ、ぼーっとしてるみたいだね」
「………」
意識はある筈だが一向に反応が無い。
もしかしてだが失敗したのだろうか?
……ま、まさかな?
外見だけは完璧だ。
いや、完璧なんて言葉で表せ無いくらいにパーフェクト。
俺の記憶にあるままの、白くて可愛らしい彼女の姿。
そこには文句の1つさえ付けようがないほどだ。
しかし、動かない。
痛みで精神が崩壊した、なんて事も無さそうだ。
「はぁ、何が悪かったのやら…………」
今の時刻は25時、もう夕飯も食べ終わりする事も無いのでこうして布団の上でごろごろと転がりながら彼女を眺めていた。
俺がスペルを刻み終わったのが11時頃だからもう14時間も経ったことになる。
それから、色々と試しては居るのだが結局の所これではただの生きているオブシェだ。
一応、魔素から肉体を作り続けれるので空間の魔素が尽きなければ何一つものを食べなくても活動する事が出来る筈だ。
しかし、このまま一切動かない状態だといずれ魂の活動が停止して死ぬ。
こうなってしまえば前みたいに転生するなんて事も無いだろう。
そんなのは俺が彼女を殺したみたいになるので嫌だ。
多分、このままの状態じゃ持って数日だろう………
「ふぁぁ………とりあえず今日は寝るか。
明日また、様子をみよう………」
俺は彼女を布団に居れて、明かりを消した。
◆ ◆ ◆
「あの、起きて下さい!」
「うぉお!な、なんだ!?」
俺は体を揺さぶられて目を覚ました。
時計を見ると今の時間は6時過ぎだ。
「なんだよ……うる………ッ!?」
「あの………ここは何処ですか?」
俺の目を覚ましたのは長く綺麗な白髪の少女だった。
ウルルじゃ無い。
こいつは俺が頑張ってスペルを刻み込んだあの少女だ。
「お、おおおおお? ……う、動いてる」
「う、動きますよ!?
い、生きてんですから!」
「え、えーと………と、とりあえず自己紹介をしよう!
っと、その前に如月一って知ってる?」
「きさらぎはじめ?なんですかそれ?」
「じゃあ、前世の記憶があったりする?」
「そんなの有るわけないじゃないですか!私は人間ですよ?」
「あはは、元、だけどね」
困った……普通に転生した場合は前世の記憶が無いのか?
いや、良く考えれば当たり前の事かもしれない。
地球上に前世の記憶を持っている奴なんて居なかった。
ここ、でも恐らくそういう事なんだろう。
そして、彼女の発言から民話等ではそういった化け物の類が伝えられているのだろう。
俺は、文字を習得してから今まで大図書館に収められている本、つまり、学術書とか魔術書とかそういった本しか読んだことがない。
逆に言えばそういった本に乗っている知識は全て獲得しているつもりだ。
そこに転生に関する記述が無かったことから推測するべきだったのだ。
自分という例外を知っているが故に見落とした罠だ。
「とりあえず、自己紹介をしよう。
僕はルシェ、ルシェリエス=リッデ=アルクケーデ。
趣味は魔導学を少々ってね。」
「アルクケーデ、お、王族の方ですか!?」
「あはは、一応ね?
これでも僕は公爵家の次男なんだ」
「え、えと、えと……私はククル、家名は………ありません」
「了解、ククル……で、本題だけど、どこまで覚えてる?」
「何処まで、ですか?」
「とりあえず、君が奴隷になった経緯から話して貰えると有難いな言いづらい事ならそこは言わなくても良いよ」
「えと………薬草取りにいってたらいきなり捕まって、暴れたら腕と足切られて、殴られて、それで、奴隷として売られて………気が付いたらここに」
山賊のたぐいか?
まぁ、良く居るからな………
「君の故郷の場所は?」
「東カルテア大陸からお母さんと一緒に来てたんです、
でも………お母さん………死んじゃって…………」
ああ、なんかめちゃくちゃ重そうなストーリーだな。
前世のでもテロリストに殺されて、
こちらの世界では山賊か……お前も大概だな。
「とりあえず、君の事は分かった。
何か僕に聞きたい事はあるかい?」
「えーと、どうして私に手と足があるんでしょうか?
それと、どうして王族の方のお部屋に私なんかが?」
「順番に話すね、とりあえず僕は君が奴隷として売られてるから買ったんだ。その後、僕は君の怪我を治した。そして、君は僕の奴隷だから僕の部屋に居てもおかしくない」
「えーと………ど、どうやって治したんですか?
確か、腕を生やすような回復魔術なんて魔族の魔術師か賢者って呼ばれるような人達にしか使えないってどこかで聞いた事があります」
「あはは、確かにその通りでそんな魔術は人間に行使出来る限界を超えてるね。
流石の僕も君の怪我を治すのには苦労したんだよ?
ついておいで」
そう言うと俺はククルを姿見鏡の前に立たせた。
鏡には以前と変わり果てたククルの姿がある。
真っ白い髪、真っ白い肌、そして、赤く、紅く綺麗な瞳。
何時見ても完璧な完成度だ。
「え、これが………私?」
鏡をペタペタと触りながらククルはそう言った。
戸惑いながら鏡を触る彼女の姿はとても可愛らしい。
「どう? 生まれ変わった気分は」
「ルシェリエス様は……きゅ、吸血鬼なんですか!?」
「いや、どうしてそうなったし」
吸血鬼?
俺が?
一体なんでそんなことになったんだ?
「え、えーと………だってだって!?
私、吸血鬼になっちゃってますよ!?」
「OK、Ok、クルルには確かに不死身の身体を与えたけど別に吸血鬼にした訳じゃないんだ」
「え、えーと……でも目が赤いし、髪も真っ白です!」
「………それはアルビノって言うんだ。吸血鬼じゃないな」
「そ、そうなんですか?
でも……こう………ガオーっガブって感じしません?」
「しないな………だけど吸血鬼みたい、いやそれ以上に回復能力はえげつないぞ。
ちょっと、これで指切ってみろ」
俺はそう言うと、腰に付けているポーチから護身用に常備しているナイフを取り出した。
気休め程度だが魔力を付与してあるので、無意識のうちに展開している魔力障壁は突破できる筈だ。
「えーと……本当にやるんですか?」
「大丈夫、お前の身体の痛覚は殆ど切ってる」
「そ、それなら……や、やっぱり怖いです」
「えい!」
俺は予備に持っているナイフでククルの小指を切り落とした。
まぁ、このまま焦らされても面倒臭いので早いに越したことは無い。
「痛った……くない?」
「ほい、お前の小指だ。
付けたら繋がるし放っておいても10秒ありゃ生えてくる」
「あ、本当です!もう生えて来ました………
この小指どうすれば良いんですか?」
「要らないなら俺が素材にするから渡せ」
「はい、どうぞ。
そう言えばですけど素になると俺って言うんですね!」
「あ………その姿で話されるとなんかやりづらいんだよなぁ」
俺は貰った小指を試験管の中に入れて保存する。
多分需要はないだろうが人間の体は魔素が馴染みやすいのでちょっとした小道具くらいなら作れるかもしれない。
「もしかして、この姿、
思い出の人とかそんな感じなんですか?」
「あはは、お前の姿なんだけどな」
「ふぇ? どういう意味ですか?」
「いや、なんでもないよ」
そう言って目を背ける為に、さりげなく時計を見ると時刻は7時を指していた。
そろそろ、朝食の時間だ。
「お腹空いてない? もうすぐ朝ごはんなんだ」
「い、頂いても良いんですか!?」
「家は朝食は召使いも全員一緒に食べるって言うルールになってるんだ。
おいで、案内するよ」
そう言うと俺は食堂へ歩き始めた。
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