君と共に生きる二回目
2話目です。
目を開けると、そこにはどこまでも続く白い部屋と光る球体があった。
辺り一面真っ白で、目がおかしくなりそうな程だ。
いや、元からおかしかったか?
「こんばんは、お目覚めかな?」
「!?」
ボケーッと当たりを見回していると目の前の球体から声が聞こえてきて一瞬で思考のモヤが吹き飛んだ。
そう言えば俺はビルから飛び降りて死んだ筈だ。
「ははっ、ほんとにあるんだな………死後の世界」
「まだ死後の世界では無いよ、まぁ君達人間に取っては死後と呼んでも良いかもしれないね?」
「死後の世界じゃない? 確かに俺は死んだ筈だと思うんだが……」
あれだけの高さがあったんだ。
死んでない方がおかしい。
「肉体の機能が停止し、肉体から魂が失われる事を死と呼ぶならそれは確かに死だろうね。
だけどボク達に取ってそんなものは死を意味しない。
肉体なんて所詮は替えのきくものでしかないのさ」
なるほど………つまりコイツは言わゆる精神生命体って奴か?
それとももしかして神様か?
「なぁ、あんたは一体なんなんだ?」
考えても拉致があかないと思った俺は即座に疑問を問いかけた。
「ボクは……まぁ君達で言うところの公務員的な存在かな?
この、試験的な源質世界の管理と運営を任されているんだ」
「……源質世界? 公務員?……誰から任されたんだ?」
「まぁ、疑問に思うのは最もだね。源質世界って言うのは簡単に言うと魂が存在する世界の事さ。公務員ってのはそだね………神に使える奉仕種族って分かる?」
奉仕種族………どっかのTRPGで出てきた気がするな。
「神によって神に使えるために産み出された種族的な奴か?」
「その言い方だとアレだけどだいたい間違ってないよ」
「つまり、この世界は神によって創られた世界な訳だな。
一体なんの為に創られたんだよ?」
「ボクも良く分かんないんだよねぇ………ある決まったルールで人間の魂を引き寄せるくらいしか分からないんだ。んでここは転生する次の世界を選ばせる場なんだよ」
「転生する次の世界を………選べる?」
もしかして………またアイツに会える可能性があるのか?
とりあえず乗るしか無いか………
「そ、だいたい1000種くらいの宇宙の中から1つの宇宙を選んで貰う事になるね。色んな世界があるから何年掛けて選んで貰ってもいいよ」
「あまの……天野 遥が転生した世界。もしくは転生する予定の世界に転生させてくれ」
「ふぇ? ちょっとまってね、何処の誰? 出来るだけ詳しく教えて」
「俺が居た宇宙の俺が居た星の俺が住んでいた街で俺が死ぬちょうど48時間前に死んだ俺と同い年の真っ白い人間の少女、これで分かるか?」
「ちょっとまってね………転生先調べるから…………」
そう言うと光の球は黙り込んだ。
1時間、いやもっと長い時が過ぎただろうか?
光の球が口を開いた。
「出たよ、転生先は1988-は-アルカンシェのアルマの所だね。
管轄内だから何とかなるけど……転生はオススメしないよ?」
「オススメしない? どういう事だ?」
「えーとね、この世界源質距離が物凄く近い宇宙でね重力が少ないから物凄く星が大きいんだ」
「………見つけれる可能性が少ない、そういう事か?」
「それだけなら良いんだけどね……ドラゴンがわんさかしてる星だから彼女人間じゃないかも?」
ドラゴンの姿のアイツを想像して少し頬が緩んだ。
きっとアイツはドラゴンの姿でも白いママなんだろうな。
「それでもいいから頼む……」
「あと、もう1つデメリットが存在するよ、君が転生出来るのは今から地球の時間で数えて、大体2万年後になるんだ。多分その子も同じくらいだと思うけど当然誤差は生じるんだ。つまり何かこっちでトラブルが会ったら君は100年くらい後に生まれて君が転生した時に彼女はもう死んでるかもしれない」
「……つまり手違いが起こらなければ同じくらいに転生出来るという事か?」
「あはは……確かにそうだけどね。あと、君は人間に近い生物としてしか転生出来ないっていうルールが存在する。それでも行くのかい?」
その程度のデメリットはデメリットに足りえない。
むしろ人間に近い生物というのはメリットしかないだろう。
「大丈夫だが今度はちゃんとした体で生まれたいって要望は付けとくか」
「その点は大丈夫だよ、流石のボクもそんなミスはしないはずだよ」
「よし、じゃあ頼む」
「えーとね、その前に素質値を大まかで良いから決めて貰う必要性があるんだ。一応、魔力が満ち溢れてる世界だからそっちの才能に極振りするのをオススメしとくよ。チートって程でもないけどささやかなプレゼントって感じだね」
「その魔力って奴があれば、アイツを探せるのか?」
「そういう訳じゃないんだけど、手助けにはなると思う。
本当にその人なのか判別することは出来るようになるね」
どんな姿のどんな生物に転生してるかなんてさっぱり分からないんだ。
必須と言えるスキルだろう。
「なるほど……ならそれで頼む」
「はいはい、承りました〜それでは良い来世をお送り下さい」
光の球がそう言うと、俺の視界と意識に強烈なモヤがかかり始めた。
待ってろ、もう少しだ…………
もう………少しで………………
お、ま………え……………
を……
「あの方は、何を考えて居るのか?
こんな事をボクにやらせて何を成そうとしているんだ?」
光の球、ラルファコは独りで呟いた。
いつもあの方から来る依頼はおかしなものばかりだが今回の依頼はいつにも増して奇妙な依頼だった。
地球の人間を数億人程度、アルカンシェに転生するように因果を結べなんて言うふざけた依頼だ。
「この世界………作ったけど結局意味無かったなぁ………」
恐らく手の平の上だったのだろう。
何故か、アルマに転生する少女とそれを追いかけるかの様に死んだ人間。
アルマは人間なんて存在しない、ドラゴンの恒星系だ。
基本的に分不相応な魂が肉体に宿る事は無い。
それはつまり、このアルカンシェに人間が誕生する事を意味していた。
依頼のブッキングが発生したのだろうか?
それとも…………
「クスクスクスっ、ちょっと面白そうになって来たなぁ」
ラルファコは嗤いながら白い世界から飛び出した。
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