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【いしのまほうつかい】~豆粒ファイアしか出せない魔法使いですが、大賢者目指します~   作者: 架け橋 なな
第六章 絶望の果て

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一縷の望み

 エレナとアストラは、ノース城一階にある賢者の執務室へと向かう。


 見張りの兵士に面会の許可を求めると、すぐに取り次いでもらえた。彼らがユーティスの仲間であると、城内では認知されているからだろう。



「お会いになるそうです! 中へどうぞ!」



 兵士はきびきびした動きでドアを開け、二人は部屋に入った。


 足を踏み入れてすぐ、艶のある立派な長机が目に留まる。机には鷹の紋章の描かれた封筒と書類、それに闇魔法に関する本が何冊も積まれていた。



 もしかしたら賢者様も、呪いを解く方法を、もう一度調べ直してくれてたのかな? 



 エレナはそんなことを考えながら、奥に進む。



 ルカーヌは上質な黒の安楽椅子に腰かけ、疲労感を滲ませながらエレナたちを見上げた。



「そなたたち、何用でここへ来た? 先ほどの話の続きか?」


「はい。私たち、賢者様に教えて欲しいことがあります」


 エレナが神妙な面持ちで尋ねた。


「【ランドルグ】というのは、どこにありますか?」



 ルカーヌは驚きの表情で質問を返した。


「ご令嬢。何故その名を知っている?」


「ユーティスさんのメモに書かれていました。そこに呪いを解く魔法があるかもしれないって」


「なんと。あやつはそんなことまで調べ上げておったのか。それが解れば世界的大発見であるが……。最果ての地【ランドルグ】は危険な場所だ。この国の中でも、一部の者にしか知られておらぬ」


「私たち、そこに行きたいんです。力を貸してもらえませんか?」


「無茶を言うでない。あそこは別名、死の大地とも呼ばれておる氷山地帯だ。動植物の住めぬ極寒の地であり、吹雪や雪崩、落雷など、あらゆる天災にも遭遇しやすい。無事に帰って来られる保証はないぞ」


「分かってます。それでも、行きたいんです」


「例えそれが無駄足になったとしてもか?」


「はい。何もやらないで後悔するくらいなら、思い切りやって後悔する方が、ずっといいんです」



 確実に助けられるなんて、甘い考えは持っていない。だがほんの一縷(いちる)でも望みがあるなら、それに賭けてみたいのだ。



 何としてでも、ユーティスを救いたい。エレナは強固な眼差しを向け続けた。ルカーヌの紫の瞳は揺らぎ、やがて苦しげに彼女を見据える。



「そなたらに同行してやりたいが、それがしは立場上、王国を離れられぬ。しかしそこに向かうための準備はこちらで整えるとしよう」


「ありがとうございます、賢者様!」


「喜ぶのは早い。問題はまだある。ランドルグはここよりはるか北西に位置し、到着まで二週間はかかるのだ。往復で四週間。回復魔法を毎日施したとしても、それまであやつの身体が呪いの進行に耐えられるとは、とうてい思えぬ」


「それが、移動時間を短縮する方法があるんです」


「何? それはまことか?」



 ルカーヌが身を乗り出したので、アストラは持ってきた紙を差し出して見せた。



「ユーティスの書いたメモには、【転送】の魔法陣の描き方が載ってたんだ。あんたなら使いこなせるんじゃねぇか?」


「【転送】だと? 初めて聞く魔法だな。どれ。見せてみよ」



 ルカーヌは立ち上がってユーティスの書いたメモを受け取り、熟読する。



「これは、妖精族の作り出した魔法か! このような素晴らしい技術があるとはな。──うむ。これならそれがしにも可能である。早速、試してみるとしよう」


「私にも詳しいやり方を伝授してください! こっちに戻ってくる時に使います!」



 話がまとまり、エレナとアストラは馬車へ荷物と武器を取りに行った。その後、アストラは出発のための準備をしに行き、エレナはルカーヌと、城に隣接する魔法訓練場へ移動した。



 魔法訓練場は灰色の石畳が広がっており、的がいくつも天井からぶら下がっていた。そこに居る緑の外套を着た魔法使いたちは、小さな魔法書と杖を手に、呪文の練習をしている。


 ルカーヌは壁に立てかけられている長い木の杖を手にした。絡まり合う枝の先に、赤い宝玉がくるまれており、鈍く光を反射している。彼は真剣な声を部屋に響かせた。



「この魔法陣を成功させるには、移動したい場所を思い浮かべながら、地面にしかと図形を写さねばならぬ。土になら簡単に描けるが、それ以外の場合、杖の先端に魔力を集め、刻みこむようにして描く必要がある」


 ルカーヌはメモを見ながら、魔法陣の描き方を丁寧にエレナに教えた。



「分かりました! やってみます!」



 エレナが集中して魔法陣を書く練習をしていると、横で見守る彼が、ふと粗末な杖に目をやった。



「ご令嬢。そなた珍しい品を持っているな。どこでその杖を手に入れた?」


「これは魔法使いだった父の形見なんです。だから、どこでと言われても分かりません」


「それはこの辺りにしか生息せぬ、宿魂樹(ヤドリノキ)で作られた物。使い手の心に応じ、強度を増す不思議な材木なのだが。まさか、そなたの父の名は、ニーケというのではないか?」


「私の父を知ってるんですか!?」



 エレナはびっくりして大声で問いかける。周りからじろじろ見られ、彼女は気まずくて身をすくめた。


 ルカーヌは遠い目をして深くうなずいた。



「うむ。二十年ほど前。そなたの父ニーケは、それがしの元で修業しておった。まさかその娘とこうして出会えるとは。世間とは意外に狭いものであるな」


「父から見習い時代の話は聞いてました。お師匠様は尊敬すべき魔法使いであったと。常に自分を磨き、どんな時も正義を貫くお方だったと」


「えらく高く評価されておったのだな。もっと悪い印象を持たれていると思っていたが」


「あ。毎日、怒鳴られてたとも言ってましたよ。いつか追い抜いて、仕返ししてやろうと企んでたって」


「ふっ。あやつらしいな」



 いつも難しい顔のルカーヌが、初めて目元を緩めた。エレナは嬉しくなり、笑って言った。



「また、帰ってきたら、ゆっくりお話聞かせてください。あとユーティスさんとの昔話も」


「……忙しくなければな」

作者、元気になりました!気長にお待ちくださった皆さん、本当にありがとうございます!(*´ω`*)これからも【いしまほ】をよろしくお願いします!(о´∀`о)

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