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 村長の屋敷に着くと、庭で宴の準備は進められていた。


 木製の椅子と机がいくつも並べられており、一番中心にある上等な椅子に、メルフが座っていた。長椅子にはすでに何名かが腰かけ、お喋りに花を咲かせている。


 リリーは村人たちに混じって、料理を並べる手伝いをしていた。(彼に捕まってはいなかったのだ!)ライ麦のパンやポタージュスープ、塩漬けした豚肉などを机に並べていく。エレナも杖を椅子に置き、木の器を配って歩いた。



 そのうちに孤児院の子供たちも、牧師に連れられやって来た。


「エレナねえちゃん! ぶじだったんだね!」


 小さい子たちがエレナの周りにぞろぞろと集まってくる。



「あなたたちも! 無事で良かった!」



 エレナは両手を広げ、皆をぎゅうっと抱き締めた。



「ぼくら、アストラ兄ちゃんが知らせてくれたおかげで、すぐにげられたんだ」


「にいちゃん、どこいったのかなー?」


「おねえたん、みてない?」



 子供たちがにこにこしながら、無邪気にエレナへ尋ねてくる。


 まさか自分を探し回っているとは言いづらい彼女は、いやー知らないよーと、斜め上に目をそらした。横に居たリリーは苦笑いだ。



「あいつもそのうち、うまそうな匂いに釣られて来るだろうよ。先に始めようぜ」



 エレナたちを見ていた、いかつい職人の親方が、麦酒を片手に促す。早く飲みたくてうずうずしているようだ。



 アストラを除く村人たちが席に着いたところで、村長はメルフに改めて礼の言葉を述べ、宴が始まった。皆、互いの無事を喜び、飲食を楽しんでいる。


 エレナはメルフから少し離れた場所に、リリーと座った。側に行って話をしたかったが、彼の席近くは村長・牧師・職人など、村の中でも力のある大人たちに早々と陣取られていたため、不可能であった。



「長い間、旅をしていますが、ここに村があるとは知りませんでした」


 スープに口をつけてから、メルフは笑顔で話し始める。エレナはパンを食べながら、注意深く聞き耳をたてた。


「そうでしょう。ここルピスは三年前に開いた村ですので、比較的新しいのですよ」


 村長が答える。


「では、他の国との交流も、まだないのですか?」


「はい。ごくまれに行商人が迷いこんで来るぐらいでしょうか。なにせこんな森の中にありますからね。知っている者の方が少ないと思います」


 メルフはなるほど、とうなずいてから、更に質問を重ねた。


「一つお聞きしたいのですが、例えば今日のように魔物が出た場合、戦える人はこの村にどれくらいおられるのですか?」



 村長は少し困惑した顔をして黙っている。どうしてそんなことを聞いてくるのだろうと、エレナは不思議に思った。



「剣と武術の出来る者が、俺を含めて十名ほど居る。今日はあんたに助けられたが、もしまた奴らが襲ってきたら全員で返り討ちにするつもりだ!」



 村長の代わりに、酒で調子の良くなった親方が強気に言った。



「それは頼もしいですね。では魔法を使える人はどのくらいおられるのですか?」



 にぎやかだった村人たちが、不意に静まり返る。メルフの問いかけに、和やかな空気がさっと変わった。

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