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【いしのまほうつかい】~豆粒ファイアしか出せない少女、最強の大賢者となる~   作者: 架け橋 なな
第五章 紐解かれる真実

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重なる背中

 荒れ地に緊張が高まる。エレナは横からユーティスの様子をうかがった。彼は青ざめており、平静さを失っているようだ。アストラは剣をいつでも抜ける態勢に入っている。



 この人、一体何者なの? 



 エレナは言い知れぬ恐怖を覚えながら、闇色のローブの男に注目した。ウーディニアは見下した声で、ユーティスに尋ねる。



「何だその顔は? まさかあ(・)の(・)時(・)、我を倒せたと思っていたのか?」


「くっ……!」


「貴様はどうあっても我を消せんのだ。もう解っているのだろう?」


「そんなことはない! 私はお前をここで倒す!」


「いつまでそのような口が叩けるだろうな?」



 余裕たっぷりに言って、ウーディニアは岩から飛び降り、ユーティスの目をじっと覗き込んだ。


 赤々とした瞳に底無しの悪意を感じ、エレナはこめかみに冷や汗をかいた。だが男から視線は外せない。わずかな油断もしてはならないと、本能が激しく知らせていたのだ。



「エレナさん! アストラさん! 今すぐ逃げてください! 奴は危険です!!」


「え!? どうしてですか!?」


「あいつ、敵なんだろ!? みんなでやっつけようぜ!」


「いけません! 早くここから離れるのです!!」



 ユーティスは鬼気迫る表情で叫ぶが、エレナとアストラは微動だにしない。相手がどんな強者だろうが、仲間を残して逃げるなど、正義感の強い彼らに出来るはずがなかった。



 ウーディニアは二人を一瞥し、不気味に笑う。



「くくく。そいつらが貴様の仲間か。女から報告は受けているぞ」


「女だって?」


「ああ。以前、貴様と遭遇した時に言っていた。しかし、まだ一緒に行動していたとはな」


「もしや……ティシフォネか?」


「ほう。察しがいいな。その通りだ」



 ウーディニアは目を細め、愉しそうに問い続ける。



「それにしても、ずいぶんその者たちに入れ込んでいるようだな。彼らは知っているのか? 貴様の本性を」


「……お前には関係のないことだ!」


「いい顔をしている。これも仲間が出来たからか。例えばこの者たちの命を奪ったら、貴様はどうなるのだろうな?」



 本気か冗談か分からぬ軽い口振りで、ウーディニアは聞いた。ユーティスの綺麗な顔が瞬く間に怒りで歪む。



「そんなこと、絶対にさせるものか!」



 ユーティスは杖を素早く振り上げ、呪文を唱える。



 次の瞬間、エレナとアストラは、透明の巨大な箱の中に閉じ込められた。



「おい! 何だよ、これは!?」


「ユーティスさん、何をするんですか!?」


「お二人とも、しばらくそこに居てください! すぐに戻ります!」


「待ってください! ユーティスさん!」



 エレナは必死に呼び止めるが、彼はウーディニアに向かって突進していった。ユーティスを追いかけようにも、壁が邪魔してその空間から出られない。エレナは魔法を使い、アストラは剣を振るうが、あまりに強固でそれを破れなかった。



「ちくしょう! びくともしねぇ!! どうすりゃいいんだ!!」



 アストラは怒鳴り、剣を持ったまま壁を殴った。酷く焦っているのがその様相から見てとれる。エレナは心臓が嫌な音を立てるのを感じていた。




『必ず追いつく』




 ふいに頭へ響いたのは、四年前に聞いた声だった。ユーティスの後ろ姿に、亡くなった父の背中が重なる。震えと胸騒ぎが止まらない。次々に湧いてくる恐れと不安が、いつしか脳内を埋め尽くしていた。



 エレナは杖を落とし、両の拳で壁を力一杯、叩いた。何度も何度も、血が滲むほどに。



 嫌。だめ。行かないで。お願い。お願い──



「戻ってきて!! ユーティスさん!!」

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