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反対する幼なじみ

「行ったかな」


 しばらく経って、エレナはそっと牛小屋から顔を出し、周囲の様子をうかがった。アストラの姿は見当たらない。どうやら上手くまいたようである。


 胸を撫で下ろしたエレナは、再び村長の屋敷を目指し、坂道を下り始めた。アストラに発見されないよう、建物の影にこそこそと隠れながら、ちょっとずつ進んでいく。こう言っては失礼かもしれないが、かなり挙動不審だ。もし誰かがその姿を見たら、確実に盗人と間違えられていただろう。


 歩きながら、彼に言われたことが頭をぐるぐると回っている。



 どうしてアストラは、いつもいつも私のやることに口出しするんだろう。ちょっとくらい応援してくれたっていいのに。



 エレナは怒りを通り越して、少し悲しくなっていた。彼に弟子入りのことを話したのは、心のどこかで、頑張れと言ってくれるんじゃないかと期待したからだ。普段、憎まれ口を叩くものの、エレナにとってアストラの存在は家族。そして苦しい日々を共に生き抜いた、数少ない仲間であったから。



──アストラはエレナと同じ孤児院で育った。幼い頃に両親を病気で失くし、身寄りのなかった彼は、教会の牧師に引き取られ今に至る。現在、孤児院に住んでいる子らの中で、彼が一番の古株と言っていいだろう。


 口も悪く荒っぽいが、意外と面倒見が良く、小さい子たちには人気がある。だが、何故かエレナに対してだけは別なのだ。やけにちょっかいを出してきたり、突っかかってきたりする。


 長い付き合いだが、アストラがエレナの意見を後押ししたことなど、ただの一度もない。昔、魔王を倒すために剣を習いたいと言った時も、魔法使いになりたいと言った時も、なぜかいつも反対されてばかりだ。



 アストラの真の思いなど分かるはずもなく、エレナは順調に目的地へと近付いていった。村人たちが酒を持ち、嬉しそうに一定の方向へ流れていくのが見える。おおよそ宴の知らせを受け、その開催場所へ向かっているのだろう。



 リリーはもう、村長さんのうちに着いたかな。アストラに捕まってなきゃいいけど。メルフさんもまだそこにいるはず。どうすれば説得できるか、今のうちに考えなきゃ。



 エレナは白いローブの男の、美しく優しい笑顔を思い浮かべる。


 謎に満ちた人物、メルフ。明らかに上級の魔法使いでありながら、弟子をとらずにいる彼。一人で旅をする目的は何なのか。一体どこから来て、どんな仕事をしているのか。


 実際はアストラの言うように、分からないことだらけだ。けれどエレナは気にしない。なぜなら直感したのだ。この出会いは運命で、神様が与えてくれた一生に一度のチャンスだ、と。だから簡単に諦めるわけにはいかない。目指すは伝説の大賢者。なりふり構ってなどいられないのだ。


 もし、どうしても弟子にしてもらえないのなら、最終手段を使うしかない。


 エレナは真剣な眼差しをして、固い地面を強く踏みしめたのだった。

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