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仲間

 旅の準備も整い、三人は門の近くまでやって来た。ユーティスは門番に出国料を払い、手続きを済ませる。


 そこにポロンや魔法使いたちも、ぞろぞろと歩いてきた。



「エレナちゃんたち、もう行っちゃうんだねー。寂しいよー!」


 可愛い顔したピートは、泣きそうに言った。


「メソメソするんじゃないわよ! 永遠の別れでもあるまいし!」


 その横でブレンダは、びしっと彼を一喝した。



「えへへ! みんな見送りに来てくれてありがとう!」


 魔法使いたちへ、エレナが照れ臭そうに言うと、ベックは


「いいなぁ、アストラは。こんな可愛い子と旅出来るなんて」と、こっそりつぶやいた。


「また会おうね、エレナ、アストラ! ポロン先生に鍛えてもらって、今度会う時はもっと強くなってるから! 覚悟しててよ?」


 眼鏡の奥の瞳をウインクさせ、パティは微笑んだ。うん! 楽しみにしてるね! とエレナも笑った。



 共に技術を磨き合った十名の仲間たちは、エレナたちに温かい言葉をかけていった。



 一通り別れの挨拶が済んでから。



 ポロンはおもむろにエレナに近づいてきた。


「さてと。アンタに渡しておきたい物があるんだ」


 そう言うと、彼女は持っていた小袋を、ずいとエレナに差し出した。



「これは?」


「アタシの発明品さ。旅の役に立つかもと思って、持ってきたんだ。使っておくれ」


 中を覗き込むと、発明品の一つ一つに布がくるまれ、説明書がきちんと貼り付けられていた。さすが几帳面だ。



「ありがとうございます、ポロン先生。本当にお世話になりました!」


 エレナは感謝の気持ちを込めて、ぺこっと礼をする。


「こちらこそ。アンタたちのおかげで助かったよ。ありがとね」


 ポロンは柔和な笑みを浮かべてから、ユーティスを見た。



「で、博識の魔法使い。次の目的地はどこなんだい?」


「遺跡を経由した後、イスト王国に向かいます」


「そうかい。あそこの女王もくせ者だ。油断するんじゃないよ」


「分かりました。ポロン先生もお元気で」


「ああ。ありがとね。それと、アストラ! アンタにも餞別(せんべつ)があるんだ! ちょっとこっちへおいで!」


 ポロンは大声でアストラを呼び、手招きした。


「何だよ、先生」


「剣を貸してごらん」



 アストラは言われるままに、背負っていた長剣を渡す。ポロンはそれを地面に置き、刃の部分に魔鉱石を置いた。



融合(フュージョン)!」


 人差し指を剣にかざし、ポロンが唱えると、指先から光が生まれ、魔鉱石に注がれた。


 すると石が溶け、みるみるうちに刃と同化していった。



「うわ! すっげぇー!」


 アストラが感嘆の声を漏らす。皆もその技にしばし見とれていた。


 きらりと光を反射する剣。良く見ると、刃の部分が少し青白い色をしていた。



「キアルスと戦った時、アンタの剣、切れ味があまり良くなかっただろう? 強化魔法の入った魔鉱石をコーティングしておいたから、これである程度、固い物でも切れるようになるよ」


「まじかよ! そりゃあ助かるぜ! ありがとな、先生!」


 ほくほくと嬉しそうに彼は剣を背負い直した。



「あとね、エレナ。アンタに一つ言い忘れたんだけど」


「何ですか?」


「前に、闇の初級魔法を教えただろう?」


「ああ。黒い霧で目隠しする魔法ですよね?」


「そうだ。でも、やっぱりあれは使っちゃだめだよ」


「え? どうしてですか?」


「アンタは感情によって魔法の威力が変わる。もし万が一、上級クラスの闇魔法が発動してしまったら大変だからね。絶対、使うんじゃないよ!」


 ポロンはエレナの肩に両手を置き、強く念を押した。


「はい、分かりました」



 闇魔法かぁ。


 教えてもらった時、すごく簡単に出来たんだけど、何がそんなにまずいのかな? 


 エレナは不思議に思いながら、頬をかいた。



「さあ。そろそろ行きましょう」


 ユーティスが声をかけ、一番先に門をくぐる。エレナとアストラもそれに続いた。



「気を付けて行くんだよー!」


「またねーーー!」


 ポロンは右手を大きく振って言った。他の魔法使いたちも笑顔で手を上げていた。



 三人は皆に別れを告げ、広い平原を東へと進んでいく。



 イスト王国。一体どんな所だろう。



 新たな王国に想いを馳せ、エレナは大きく息を吸い込んだ。少女は杖を握り、胸元に当てる。



 私の想いが力になる。だったら私は、どんなことがあっても、絶対に絶対に、諦めない。



 自らに宿る力の正体を知り、彼女は心に固く誓いを立てた。



 憧れの大賢者や幼なじみ。


 頼れる仲間たちと、歩き出す旅。


 彼女は大いなる夢への第一歩を、ここに踏み出したのであった。



 だが。エレナたちはまだ気付いてはいない。



 出発してすぐ。


 王国の城壁から、黒い小さな鳥が、不吉な赤い目をして彼女らを追ったことを。


 美しき女王の統べるイスト王国にて、すでに恐ろしい計画が実行に移されていたということを──。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第3章、読了(>_<) エレナちゃんの力が知れたし、大賢者の正体も分かったりとホクホク顔です。やったね、アストラ!! 剣の強化してもらって♪ ドンドン魔物なり、固いものなり切って行こう!!…
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