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深まる謎

 ちなみに二つ名は『治癒の魔法使い』だよ! とにこにこしながら教えてくれた。



 この可愛いらしいおばあちゃんが、反逆者なの?



 思い描いていた人物像からかけ離れすぎていて、エレナは混乱した。その結果、


「じゃあ、あなたが王子様を暗殺したんですか?」


 と、かなり直球で質問してしまった。(王子はまだ生きているので、その聞き方は間違っているのだが)


 するとポロンは顔を赤くし、細い眉をつり上げて言った。



「そんなことするもんかい! 馬鹿言っちゃいけないよ! あれはキアルスが先に襲ってきたんだ!」


「え!? 王子様が!?」


「そうさ! わざわざ呪文を使えない場所にアタシを呼び出してね! あのひよっこ、魔法抜きならアタシに勝てると思ったんだろうけど、そうはいかないよ! 


 剣を向けてきたから、護身用の眠り薬を頭にぶちまけてやったのさ! きっと間抜けな寝顔を兵士たちに見られただろうよ! ざまあないね!」



 彼女は怒濤(どとう)の早さで言い切った後、清々したといわんばかりの顔になった。



 エレナはポロンの用意周到さに素直に感心する。


 だがこの老女、なかなかに激しい気性のようだ。今後は出来る限り怒らせない方が身のためである。



「じゃあ王子様は気を失っただけだったんですね。でもどうして先生に攻撃してきたんですか?」


「アタシがね、『何があっても計画には参加しない』と言ったからさ」


「何の計画ですか?」


「それは……部外者のアンタに言うことじゃないよ」


 ポロンは急に熱が冷めたように、口をつぐんだ。



「確かに部外者ですけど、気になります。先生が襲われた、その理由が」


 私、教えてもらえるまで、ここを動きません、とエレナは座り込んだ。


 彼女が一人前の魔法使いとなるには、この件をきちんと解決しなければならないのだ。絶対に引き下がれない。



 強くひたむきな眼差しを向けてくる彼女に、ポロンは諦めたのか、ようやく重い口を開けた。



「キアルスの奴は、イスト王国を倒すつもりなんだよ」


「イスト王国?」



 初めて聞いた名に、エレナは首を傾けた。


 それを察したのか、ポロンは丁寧に説明を始める。


「この大陸にはね、【ヴェスタ】・【イスト】・【ノース】の三つの国があるんだ。イスト王国は極東にある国で、昔からここといがみ合ってる。


 魔王討伐後は、三国の間に条約が結ばれて、仲良くしようって話になったんだけどね。どうやら腹の内は違ったらしい。


 キアルスはイスト王国を魔法の力で攻め落とそうとしているのさ。


 だからアタシに偉そうに命令してきたってわけ。『我が国のために、イスト王国を破壊しろ』って」


「そうだったんですか」



 エレナは胸がぎゅっと苦しくなった。



 どうして戦争なんてするんだろう。


 魔王が居なくなって、やっと平和になったのに。


 どうして傷付け合うようなことをするんだろう。



 国家の上に立つ者の気持ちは、小さな幸せを望む彼女には、とうてい理解出来ない。ただ、争いに伴う悲劇を思うと辛くなった。



「本当にね、冗談じゃないよ! 魔法っていうのは戦争の道具じゃない。守るための力なんだ。そんなことも分からない大馬鹿野郎は、魔力を持つ資格すらないんだよ!」



 いきさつを話し終わってから、ポロンは一人、憤慨していた。


 口調とは裏腹の悲痛な声。


 彼女は教師として、魔法を扱う者として、正しい道を貫こうとしているのだ。例え権力者を敵に回したとしても。



 エレナはそんなポロンの人柄にとても共感を覚えた。



「でも、先生が犯人じゃないなら、暗殺は誰がやったんですかね?」


「うーん。分からないけど、アタシが逃げた後、キアルスを殺そうとした奴が居るんだろうね。あの子は性格上、色んな人間に恨まれてるだろうから。まあ調べようにも、こっちは兵士に追い回されてて、身動きが取れないんだけどね」


「私、犯人を捕まえるの、協力します。そして、先生の無実を証明します」


 エレナは真剣な表情で言った。この人を応援したい、と心から思ったからだ。ポロンは眉根を寄せ、少し困惑したように尋ねる。



「いいのかい? 言っとくけど相当苦労するよ?」


「はい。その代わり、先生に大事なお願いがあるんです」

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