表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/159

尋問

──「うーん……」



 エレナが目を開けると、視界に薄暗い床が見えた。先ほどと同じ部屋だ。


 ぼんやりとした頭で、自分が倒れていることを理解する。


 どのくらいの間、気絶していたのだろう。固い場所に寝転がっていたせいで、身体のあちこちが痛かった。



 そうだ! 私、ここから逃げなきゃ!



 はっと気が付いて身体を起こそうとするが、動けない。手足を縄で縛られているのだ。


 エレナは壁まで這っていき、やっとのことで上半身を起こした。視界が悪く、彼女を捕らえた者の姿は見えない。



 どうにかして縄を解かなければ、と自分を奮い立たせ、役に立ちそうな物がないか辺りを見回した。



 そういえば部屋の真ん中にナイフが置いてあったはず。あれを使えば何とかなるかも。



 はっきりしてきた記憶を頼りに、彼女は身を乗り出して台の上を確認した。


 しかし気を失う前とは違い、台には大きな骸骨が一つだけ置かれている。その上にろうそくが立てられており、恐ろしい雰囲気を醸し出していた。



「起きたか、娘よ」


「ひゃあっ!」


 エレナは尻が浮くほど床から飛び上がった。


 骸骨から地を這うような声がしたのだ。その両目も青く光り出している。


 震える少女に構わず、骸骨は話を続けた。



「質問に正直に答えろ。お前は何故ここに来た」


「は、はい。魔法使いの先生を探しに来ました」


 深呼吸をして必死に鼓動を落ち着かせてから言った。恐怖で声がうわずる。



「お前はヴェスタ王国の関係者か?」


「いえ、違います」


「では何故、家に入ってきた?」


「ドアが開いていたので、誰か居るのかなと思って」


「中で隠し部屋を見つけただろう。あれは本棚を触らなければ、見つけられないはずだ。お前はあそこで何をしていた」


「えっと……たまたま触ってしまって」


 魔法書を勝手に触ったことを責められると思ったエレナは、ついごまかしてしまった。



「嘘をつくな!」


 すくみ上がるような怒鳴り声が響き、骸骨の目が真っ赤に光った。


「きゃー! ごめんなさい! 実は魔法書が読みたくて、触ってしまいました! あんなに素敵な本、初めて見たんで! 本当にごめんなさい!!」



 涙目で謝ると、不穏な沈黙の時間が流れた。



「……ふむ。嘘はついてなさそうだね」


 可愛らしい女の声がして、骸骨の目が光を失う。


 その後で突然部屋が明るくなった。天井にぶら下がる魔鉱石が、白い光を放っている。


 眩しさに一瞬目を閉じてから、エレナはそっと部屋の様子をうかがった。


 そこに姿勢良く立っていたのは、背が低くぽっちゃりとした愛嬌のある老女だった。


 先の垂れた黒紫の三角帽の下から、ぴょんと跳ねた薄茶色のくせっ毛が見えている。細眉は斜めに緩く上がっており、瞳はオレンジ色をしていた。銀色の五芒星の首飾りが、帽子と同じ色のチュニックにとても映えていた。



「あなたは?」


「アタシのことより、まず自分から名乗りな」


 ろうそくを吹き消し、骸骨を棚に片付けながら、老女はびしっと言った。気の強そうな人物である。



「私はエレナといいます。ルピスという村からこの町に来ました」


「なるほど、旅人かい。薄々そんな気はしてたけどね。──ああ、悪いけど眠ってる間にアンタの荷物を調べさせてもらったよ。勝手に入ってきたし、泥棒かと思ったんでね」


 女は少女の縄をほどき、部屋の隅に置かれた袋を指差した。



「ごめんなさい。私、ここに住んでる先生を探してたんです。ある人に紹介してもらって」


「何だい! それならそうと早く言ってくれればいいのに!」


 言おうにも気絶させられていたのだが、という反論はあえて飲み込んだ。



「ところで、先生がどこに行ったか知りませんか?」


「何言ってるんだい。目の前に居るじゃないか!」


「へ?」


 まさか、とエレナは思った。老女は腰に手を当て、自信満々に名乗った。



「アタシの名は、ポロン。ヴェスタ王国最高位の大魔法使いさ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
架け橋 ななの他作品

モフモフと美形の出る異世界恋愛
*毒舌氷王子はあったかいのがお好き!*
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ